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不穏な短期留学紀行 3 ~太陽は知っている~
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「ここがミクの留学先でテイラーの通う大学でもある場所」
文句も言えず荷物を片付けた後、お茶を頂き、一休み。
高山のヤツ、手ぶらに近いからおかしいと思ったら自分の荷物は先に送り込んでたらしい。
おかげで手伝うと言い張るし、触られたくないから大変だった。
それからすぐに学校の案内だとテイラーの運転で再び外出。
閑静な住宅街にひっそりと佇んで建てられている広大なキャンバス。
施設設備も整っていて有名な教授も所属している名門大学。
その大学に付属された語学学校とかで地域では評判らしい。
「ミクに紹介したい人がいる」
大まかに校内を回った後、突然高山は一番奥に位置する建物へと入っていく。
・・・っていうか、勝手に入っていいの?
「ワタシはここで待ってるわ」
玄関らしい入り口でテイラーはそう言うと軽く手を振る。
私は高山の姿を追いながら見知らぬ建物内を進む。
明らかに教室でないことが判る室内で一定間隔に区切られたドアにはネームプレート。
一体、ここは何? ただならぬ緊迫感を醸し出している場所っぽい。
やがて突き当たりにぶつかると高山はそこのドアをノックする。
どうぞと小さく返事があり、開けて中に入る姿を目で追っていると感嘆の声が上がっていた。
閉まりかかるドアに慌てて身体を滑り込ませるとそこは雑然とした場所。
天井近くまである棚にはびっしりと本が詰まっていて床にも本が無造作に積み上げられている。
部屋の中央には机らしきものがあり、その上にも本やら書類の山で溢れかえっていた。
そんな状態の空間で高山と白衣姿で白髪交じりの男性が抱き合っている。
高山の背中越しから見える顔がすぐに私の存在に気づく。
「・・・キミが、ミク?」
年老いた男性は高山から離れると上から下までと鋭い視線で投げかける。
「ミク、紹介するよ。アーロン博士だ」
チクチクと突き刺さる視線の中、ご挨拶がてら握手する。
「初めまして。クラモチミクです。どうぞよろしく」
・・・テイラーの時と同じくすっごく見られてるんだけど?
「ところでミク、オーストラリアの感想は?」
来たばっかでほとんど見てないし、初対面なのにも関わらず挨拶もなしかい!
青い瞳をした気難しそうな顔つきのジジイにムッとしながらも私は時計を見て答える。
「まだここへ来て3時間ほどしか経ってませんが太陽の位置が北側にあるのを確信しました。私の住む日本は北半球に位置しているので南側が当たり前ですが、オーストラリアは南半球。これは赤道から考えて・・・」
流暢とは言えないであろう英語を続けているとクスクスと高山が笑い出す。
ふん、どうせへたくそって言いたいんでしょうが!
私の時計は機能が多彩で簡易方位磁石が付いてるため、位置を確認するのに便利。
女にしちゃゴツイ形状かもしれないけど、お気に入りなんだから。
「・・・博士、これがミクです」
ジジイはぐっと無一文に口を噤み、なるほどと小さく呟いた。
「さすがだよ、ミクは」
高山は私に小さく耳打ちすると先にテイラーと帰るように言った。
はあ? 訳がわからないっつーの!
気分を害したままテイラーの元に戻ると顔を見るなりカズは? と訊かれる。
「アーロン博士と談話中。夕食までには戻ると伝言です」
「そう、研究発表が近いものね」
「・・・研究発表?」
その言葉に首をかしげるとテイラーは驚いた顔。
「ミク、研究のコト、聞いてないの?」
何のことやらさっぱり。研究って何なのよ?
「それじゃあ、どうしてわざわざオーストラリアまで付いてきたのよ?」
その発言、おかしいぞ。付いてきたのは高山の方だっつーの!
「私の留学先がオーストラリアだったからです! 付いてきたわけじゃありません!」
冗談じゃない、みんな高山のことを知ってるからって私をおまけとしてみなしてるみたいだ。
付属としてジロジロと観察してたんだろうけど、メインは私なんだから!
「ということはミクが留学先をカズに合わせたのね」
はぁ? あくまで高山にリードを与えたいらしい。つーか、何で合わせたようになるのよ?!
「テイラーの言ってる意味が分からない。研究って何?」
語調が荒くなってるなと思いつつ、高山の正体を知ることとなるのはこの後だった。
文句も言えず荷物を片付けた後、お茶を頂き、一休み。
高山のヤツ、手ぶらに近いからおかしいと思ったら自分の荷物は先に送り込んでたらしい。
おかげで手伝うと言い張るし、触られたくないから大変だった。
それからすぐに学校の案内だとテイラーの運転で再び外出。
閑静な住宅街にひっそりと佇んで建てられている広大なキャンバス。
施設設備も整っていて有名な教授も所属している名門大学。
その大学に付属された語学学校とかで地域では評判らしい。
「ミクに紹介したい人がいる」
大まかに校内を回った後、突然高山は一番奥に位置する建物へと入っていく。
・・・っていうか、勝手に入っていいの?
「ワタシはここで待ってるわ」
玄関らしい入り口でテイラーはそう言うと軽く手を振る。
私は高山の姿を追いながら見知らぬ建物内を進む。
明らかに教室でないことが判る室内で一定間隔に区切られたドアにはネームプレート。
一体、ここは何? ただならぬ緊迫感を醸し出している場所っぽい。
やがて突き当たりにぶつかると高山はそこのドアをノックする。
どうぞと小さく返事があり、開けて中に入る姿を目で追っていると感嘆の声が上がっていた。
閉まりかかるドアに慌てて身体を滑り込ませるとそこは雑然とした場所。
天井近くまである棚にはびっしりと本が詰まっていて床にも本が無造作に積み上げられている。
部屋の中央には机らしきものがあり、その上にも本やら書類の山で溢れかえっていた。
そんな状態の空間で高山と白衣姿で白髪交じりの男性が抱き合っている。
高山の背中越しから見える顔がすぐに私の存在に気づく。
「・・・キミが、ミク?」
年老いた男性は高山から離れると上から下までと鋭い視線で投げかける。
「ミク、紹介するよ。アーロン博士だ」
チクチクと突き刺さる視線の中、ご挨拶がてら握手する。
「初めまして。クラモチミクです。どうぞよろしく」
・・・テイラーの時と同じくすっごく見られてるんだけど?
「ところでミク、オーストラリアの感想は?」
来たばっかでほとんど見てないし、初対面なのにも関わらず挨拶もなしかい!
青い瞳をした気難しそうな顔つきのジジイにムッとしながらも私は時計を見て答える。
「まだここへ来て3時間ほどしか経ってませんが太陽の位置が北側にあるのを確信しました。私の住む日本は北半球に位置しているので南側が当たり前ですが、オーストラリアは南半球。これは赤道から考えて・・・」
流暢とは言えないであろう英語を続けているとクスクスと高山が笑い出す。
ふん、どうせへたくそって言いたいんでしょうが!
私の時計は機能が多彩で簡易方位磁石が付いてるため、位置を確認するのに便利。
女にしちゃゴツイ形状かもしれないけど、お気に入りなんだから。
「・・・博士、これがミクです」
ジジイはぐっと無一文に口を噤み、なるほどと小さく呟いた。
「さすがだよ、ミクは」
高山は私に小さく耳打ちすると先にテイラーと帰るように言った。
はあ? 訳がわからないっつーの!
気分を害したままテイラーの元に戻ると顔を見るなりカズは? と訊かれる。
「アーロン博士と談話中。夕食までには戻ると伝言です」
「そう、研究発表が近いものね」
「・・・研究発表?」
その言葉に首をかしげるとテイラーは驚いた顔。
「ミク、研究のコト、聞いてないの?」
何のことやらさっぱり。研究って何なのよ?
「それじゃあ、どうしてわざわざオーストラリアまで付いてきたのよ?」
その発言、おかしいぞ。付いてきたのは高山の方だっつーの!
「私の留学先がオーストラリアだったからです! 付いてきたわけじゃありません!」
冗談じゃない、みんな高山のことを知ってるからって私をおまけとしてみなしてるみたいだ。
付属としてジロジロと観察してたんだろうけど、メインは私なんだから!
「ということはミクが留学先をカズに合わせたのね」
はぁ? あくまで高山にリードを与えたいらしい。つーか、何で合わせたようになるのよ?!
「テイラーの言ってる意味が分からない。研究って何?」
語調が荒くなってるなと思いつつ、高山の正体を知ることとなるのはこの後だった。
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