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不穏な短期留学紀行 4 ~日本語の罰~
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「高山、アーロン博士の助手ってどういうことよ?」
夕食後、部屋に戻るなり高山に一気に捲くし立てる。
はっきり言って高山の帰宅直後から問い詰めたかったんだから。
今まで平静を装いつつ、我慢してたっつーの!
私の中ではすっごく疑念がいっぱい。
訊いてない事項がたくさん出てきて整理してもおかしな点ばかりある。
「誤魔化しても無駄だから。テイラーに訊いてるから!」
「あっ? バレちゃった?」
高山は悪びれた様子もなく、笑っていた。
なんなのよ、コイツ!! 私が知らなければどうなってたことか。
そもそもここに来た時から変だとは思ったわよ。
テイラーの態度といい、あのジジイといい、嫌な感じ。
その根本となる原因を突き止めなきゃ気がすまない。
まだまだ英会話には頼りない私だけど曖昧にはしておけなかった。
学校から家に戻ると辞書とノート片手にあれからテイラーに訊きまくった。
細かいことは読解力が足りなかったかもしれないけど大まかなことは理解できた。
つまり今回、高山は研究の手伝いをするためにオーストラリアに来たってコト。
しかも元々からアーロン博士の助手だったとか。
3年前からオーストラリアで調査のためにやってきて研究を手伝ったらしい。
詳しい内容は専門過ぎて分からなかったけどね。
その頃からテイラーの家でお世話になってたみたいで親交を深めたとか。
ところが何を思ったのか高山は突然去年の9月、日本に戻ってしまったらしい。
調査も途中だし、研究も中途半端の最中で博士の反対を押し切って。
その理由について訊こうとしたけど瞬時にムッとした様子で鋭い形相で睨んで口を噤む。
気になったけど訊き出せないから仕方が無い。
で、研究もいよいよ大詰めで発表も近くなってきた。
高山の手伝いが必要になり、呼び寄せることになってた。
・・・ここまでがテイラーから訊きだせた事。
ということは高山が来るのは決定してたって訳。
要するに決まってたってことは私は巻き込まれてるってことじゃんか!
別に留学先がどこでも構わないけど何で初回がオーストラリア? って思った。
イギリス系だから正統派な英語を学ぶには近いものはあるだろうけど、だったら本場イギリスの方が早いし?
それにアメリカを飛び越えてオーストラリアなんて随分とマニアックだなって。
「・・・何で留学先がここなんだろうって」
それもこれもコイツがらみじゃないかってピンとくる。
今までの推測からいくとほぼ確実に的中してると思う。
「ま、そういうことだから」
何かを察した高山は着替えを持って部屋から出ようとする。
焦った私は留めようと声を掛ける。つい、日本語で。
「ちょ、ちょっと待て! 何の研究だか知らないけどさ、留学先がオーストラリアって高山が原因なんでしょーが!!」
「さすがミク、頭がいいなぁ」
しれっとした態度でにっこり。予想通りで腹が立つ!!
「何で私が高山の理由に巻き込まれなきゃならないのよ!!」
「そりゃあ、ミク一人って訳にはいかないだろ? ましてや海外なんてさ」
「…意味分かんない。高山には関係ないじゃん、私が一人でどこに行こうと」
「…分からない?」
高山は近づいてきて私を突然ぎゅっと抱きしめる。
「オレはミクの特別講師だろ? だから引率するのは当然じゃないか」
いきなり何しやがるんだ、このヤロー!
引き離しながら高山を睨む。
「・・・だからって私の留学先を高山に合わせる必要ないでしょーが!!」
「別にオレが合わせた訳じゃない。あくまで理事長が決定したことだからお忘れなく。・・・あと日本語で捲くし立てた罰!」
チュッと軽い音を立てて私の唇を奪うと高山は素早く部屋を出て行く。
お~の~れ~!! またしても簡単にキスされてしまった!
高山だって使ってたくせに!! くっそ~!!
このパターン、ほんの少し習慣づいた感じもあってちょっぴりヤバイ。
そんな風に始まった留学生活にとんでもないことが起こるなんて思いもしなかった。
夕食後、部屋に戻るなり高山に一気に捲くし立てる。
はっきり言って高山の帰宅直後から問い詰めたかったんだから。
今まで平静を装いつつ、我慢してたっつーの!
私の中ではすっごく疑念がいっぱい。
訊いてない事項がたくさん出てきて整理してもおかしな点ばかりある。
「誤魔化しても無駄だから。テイラーに訊いてるから!」
「あっ? バレちゃった?」
高山は悪びれた様子もなく、笑っていた。
なんなのよ、コイツ!! 私が知らなければどうなってたことか。
そもそもここに来た時から変だとは思ったわよ。
テイラーの態度といい、あのジジイといい、嫌な感じ。
その根本となる原因を突き止めなきゃ気がすまない。
まだまだ英会話には頼りない私だけど曖昧にはしておけなかった。
学校から家に戻ると辞書とノート片手にあれからテイラーに訊きまくった。
細かいことは読解力が足りなかったかもしれないけど大まかなことは理解できた。
つまり今回、高山は研究の手伝いをするためにオーストラリアに来たってコト。
しかも元々からアーロン博士の助手だったとか。
3年前からオーストラリアで調査のためにやってきて研究を手伝ったらしい。
詳しい内容は専門過ぎて分からなかったけどね。
その頃からテイラーの家でお世話になってたみたいで親交を深めたとか。
ところが何を思ったのか高山は突然去年の9月、日本に戻ってしまったらしい。
調査も途中だし、研究も中途半端の最中で博士の反対を押し切って。
その理由について訊こうとしたけど瞬時にムッとした様子で鋭い形相で睨んで口を噤む。
気になったけど訊き出せないから仕方が無い。
で、研究もいよいよ大詰めで発表も近くなってきた。
高山の手伝いが必要になり、呼び寄せることになってた。
・・・ここまでがテイラーから訊きだせた事。
ということは高山が来るのは決定してたって訳。
要するに決まってたってことは私は巻き込まれてるってことじゃんか!
別に留学先がどこでも構わないけど何で初回がオーストラリア? って思った。
イギリス系だから正統派な英語を学ぶには近いものはあるだろうけど、だったら本場イギリスの方が早いし?
それにアメリカを飛び越えてオーストラリアなんて随分とマニアックだなって。
「・・・何で留学先がここなんだろうって」
それもこれもコイツがらみじゃないかってピンとくる。
今までの推測からいくとほぼ確実に的中してると思う。
「ま、そういうことだから」
何かを察した高山は着替えを持って部屋から出ようとする。
焦った私は留めようと声を掛ける。つい、日本語で。
「ちょ、ちょっと待て! 何の研究だか知らないけどさ、留学先がオーストラリアって高山が原因なんでしょーが!!」
「さすがミク、頭がいいなぁ」
しれっとした態度でにっこり。予想通りで腹が立つ!!
「何で私が高山の理由に巻き込まれなきゃならないのよ!!」
「そりゃあ、ミク一人って訳にはいかないだろ? ましてや海外なんてさ」
「…意味分かんない。高山には関係ないじゃん、私が一人でどこに行こうと」
「…分からない?」
高山は近づいてきて私を突然ぎゅっと抱きしめる。
「オレはミクの特別講師だろ? だから引率するのは当然じゃないか」
いきなり何しやがるんだ、このヤロー!
引き離しながら高山を睨む。
「・・・だからって私の留学先を高山に合わせる必要ないでしょーが!!」
「別にオレが合わせた訳じゃない。あくまで理事長が決定したことだからお忘れなく。・・・あと日本語で捲くし立てた罰!」
チュッと軽い音を立てて私の唇を奪うと高山は素早く部屋を出て行く。
お~の~れ~!! またしても簡単にキスされてしまった!
高山だって使ってたくせに!! くっそ~!!
このパターン、ほんの少し習慣づいた感じもあってちょっぴりヤバイ。
そんな風に始まった留学生活にとんでもないことが起こるなんて思いもしなかった。
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