UNLUCKY?

おりのめぐむ

文字の大きさ
32 / 49

不穏な短期留学紀行 4 ~日本語の罰~

しおりを挟む
「高山、アーロン博士の助手ってどういうことよ?」

 夕食後、部屋に戻るなり高山に一気に捲くし立てる。
 はっきり言って高山の帰宅直後から問い詰めたかったんだから。
 今まで平静を装いつつ、我慢してたっつーの!
 私の中ではすっごく疑念がいっぱい。
 訊いてない事項がたくさん出てきて整理してもおかしな点ばかりある。

「誤魔化しても無駄だから。テイラーに訊いてるから!」

「あっ? バレちゃった?」

 高山は悪びれた様子もなく、笑っていた。
 なんなのよ、コイツ!! 私が知らなければどうなってたことか。
 そもそもここに来た時から変だとは思ったわよ。
 テイラーの態度といい、あのジジイといい、嫌な感じ。
 その根本となる原因を突き止めなきゃ気がすまない。
 まだまだ英会話には頼りない私だけど曖昧にはしておけなかった。
 学校から家に戻ると辞書とノート片手にあれからテイラーに訊きまくった。
 細かいことは読解力が足りなかったかもしれないけど大まかなことは理解できた。
 つまり今回、高山は研究の手伝いをするためにオーストラリアに来たってコト。
 しかも元々からアーロン博士の助手だったとか。
 3年前からオーストラリアで調査のためにやってきて研究を手伝ったらしい。
 詳しい内容は専門過ぎて分からなかったけどね。
 その頃からテイラーの家でお世話になってたみたいで親交を深めたとか。
 ところが何を思ったのか高山は突然去年の9月、日本に戻ってしまったらしい。
 調査も途中だし、研究も中途半端の最中で博士の反対を押し切って。
 その理由について訊こうとしたけど瞬時にムッとした様子で鋭い形相で睨んで口を噤む。
 気になったけど訊き出せないから仕方が無い。
 で、研究もいよいよ大詰めで発表も近くなってきた。
 高山の手伝いが必要になり、呼び寄せることになってた。
 ・・・ここまでがテイラーから訊きだせた事。
 ということは高山が来るのは決定してたって訳。
 要するに決まってたってことは私は巻き込まれてるってことじゃんか!
 別に留学先がどこでも構わないけど何で初回がオーストラリア? って思った。
 イギリス系だから正統派な英語を学ぶには近いものはあるだろうけど、だったら本場イギリスの方が早いし?
 それにアメリカを飛び越えてオーストラリアなんて随分とマニアックだなって。

「・・・何で留学先がここなんだろうって」

 それもこれもコイツがらみじゃないかってピンとくる。
 今までの推測からいくとほぼ確実に的中してると思う。

「ま、そういうことだから」

 何かを察した高山は着替えを持って部屋から出ようとする。
 焦った私は留めようと声を掛ける。つい、日本語で。

「ちょ、ちょっと待て! 何の研究だか知らないけどさ、留学先がオーストラリアって高山が原因なんでしょーが!!」

「さすがミク、頭がいいなぁ」

 しれっとした態度でにっこり。予想通りで腹が立つ!!

「何で私が高山の理由に巻き込まれなきゃならないのよ!!」

「そりゃあ、ミク一人って訳にはいかないだろ? ましてや海外なんてさ」

「…意味分かんない。高山には関係ないじゃん、私が一人でどこに行こうと」

「…分からない?」

 高山は近づいてきて私を突然ぎゅっと抱きしめる。

「オレはミクの特別講師だろ? だから引率するのは当然じゃないか」

 いきなり何しやがるんだ、このヤロー!
 引き離しながら高山を睨む。

「・・・だからって私の留学先を高山に合わせる必要ないでしょーが!!」

「別にオレが合わせた訳じゃない。あくまで理事長が決定したことだからお忘れなく。・・・あと日本語で捲くし立てた罰!」

 チュッと軽い音を立てて私の唇を奪うと高山は素早く部屋を出て行く。
 お~の~れ~!! またしても簡単にキスされてしまった!
 高山だって使ってたくせに!! くっそ~!!
 このパターン、ほんの少し習慣づいた感じもあってちょっぴりヤバイ。
 そんな風に始まった留学生活にとんでもないことが起こるなんて思いもしなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

処理中です...