UNLUCKY?

おりのめぐむ

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不要な愛の言葉 3 ~思わぬ妨害~

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「未来の両親に事情を説明しておかないとな」

 教師と生徒の垣根を乗り越えて気持ちが通じ合ってしまった私と高山。
 始業式で大それた事をやりやがったから吹聴される前に公にする必要がある。
 この状況を知ってしまえばチチさんとハハさんはどんな顔をするだろう。
 けど、聖職者関係に弱いから意外にあっさりしてたりするかも?
 ま、報告といっても今までと同じように過ごしていくから特別変わるってことは何も無いし。
 勉強さえ出来てれば気に留められることなんてないかもしれないけどさ。

「まあ、先生。いつも未来がお世話になっております」

 実家を訪ねれば満面な笑みを浮かべたハハさんが嬉しそうにお出迎え。

「すいません、お忙しいところをお邪魔しまして。実は大事なお話がありまして・・・」

 爽やかな印象の高山が腰を低くしてハハさんにご挨拶。

「まあ、改まってなんですの? 主人も待ってますわ。どうぞ」

 久々となるリビングルームへと案内され、変わってない二人を見て呆然とする。
 何のお話だろうかって瞳をキラキラと輝かせるチチさんとハハさん。
 私がらみのお話だけど期待しているのものとは絶対に違うから!
 微妙な空気感の中、机を隔てて両親と私と高山が向き合う。
 ひと息つこうと湯飲みに口を付けたら高山がいきなり切り出した。

「未来さんと結婚を前提にお付き合いさせていただくため、報告と了承を得に伺いました」

「ブッ」

 け、結婚って! いきなり飛躍した発言に私はビックリ。飲みかけたお茶を吐き出してしまった。
 どこでどう転んだらそういう話になるんだ? 思いが通じ合ったばかりだっつーのに。
 器官に入ってむせてる最中、両親は声を荒げた。

「け、けけけ、結婚ですと? み、未来が?!」

「これは一体、どういうことですか?!」

 ニコニコ笑顔の表情が一変、顔を真っ赤にして興奮した様子。
 高山の発言にも信じられないけど予想外だった両親の反応。

「未来はまだ高校生ですのよ! 何をおっしゃってるんですか?!」

「仮にも教育者ですよね? あなたは!!」

 ドスの効いた両親の怒り声に驚愕。私のために怒るチチさん、ハハさんの姿、初めて見た。
 普段見せなかった雰囲気に圧倒され、じんわりと胸が熱くなる。
 ・・・こんな私でもやっぱり普通の娘だと思ってくれてたんだ。
 へんな隔たりが合った親子関係が消失されるのね、今。

「未来が家を出たと思ったら徳栄の教師と結婚だとは」 

「将来はただのお嫁さんだなんて認められません!」

 ・・・っておい、どこまで私のこと考えてんだよ?
 結局はやっぱり世間体じゃないか~~!! こいつら~~、私のじんわりを返しやがれ!
 どこまでも変わってないバカ両親にガクリとうな垂れた時、玄関のチャイムが鳴り響いてきた。
 興奮覚めやまぬハハさんが渋々向かう中、口論は続く。

「大体ね、未来は日本に踏みとどまるような娘じゃないんですよ? それが結婚だなんて、冗談じゃない。あなただっておっしゃってましたよね? 未来は世界で活躍する娘だって・・・」

 色々愚痴愚痴言うチチさん、結局は私を自慢にしたいらしい。
 誇りに思ってくれるのは嬉しいけど、論点、間違ってますから!
 つーか、高山も高山で結婚発言だとは何考えてやがるんだ。
 訪ねる前、やけに慎重な面持ちだと思ったらそういうことを企んでたのか。
 保健室での会話をふと思い出し、分析してみる。
 ・・・もしかして、あれ、プロポーズを兼ねてた、とか?!
 そうだったら、ちょっと待て! 私はそこまで考えてなかったぞ。
 反論しようと高山に向き直った時、ハハさんが血相を変えて戻ってきた。

「どうも、お邪魔いたします」

 ハハさんの後から低い声でチチさんより歳上風の中年男性が姿を現した。
 見覚えのあるその人物は確か学園の入学案内パンプレットに載っていた、理事長?

「初めまして。ワタクシ、高山和寿の叔父で未来さんの通ってる徳栄学園の理事をやっております徳川栄次郎と申します」

「り、理事長?!」

 思いもよらない登場人物に両親は驚きを隠せず、動揺しまくってる。

「この度は甥が迷惑をお掛けしたそうでそのお詫びに参りました。元々和寿は教師をやってるような器では無いお調子者で・・・。全く、長く海外にいると突拍子も無いことをやらかすようでして申し訳ありませんでした」

「か、海外?!」

 両親がピクリと反応した。すっかり地球規模の話に弱くなってるご様子。
 高山と理事長の内輪受けの会話で目を白黒させる二人。
 本能的にただならぬ空気を感じ取ったチチさんとハハさんはいきなり低姿勢。

「未来、ありがたくお付き合いさせていただきなさい」

「二人で世界をまたに掛けた活躍が出来るなんて幸せ者ね」

 姿勢を正し、媚を売るように高山に笑顔を向けてやがる。
 ・・・オイ、さっきと言ってることが違うじゃね~か!! このカメレオン夫婦が!
 呆れ気味にため息をつくとその様子を見守っていた理事長と目が合う。

「君が未来くんだね? 会えて光栄だよ」

 握手を交わし、二言三言話した後、話の弾んでる3人を置いてそっと玄関へ移動。

「君の力になれることがあるならいつでも協力させていただくよ」

 そして高山をよろしくと頭を下げ、懐の大きな男は去っていった。

「・・・それで先生、卒業までは婚約という形でよろしいですか?」

 いつの間にか3人で盛り上がってる様子の聞こえてきたチチさんの言葉。
 ってか、結婚する展開に話が進んでるのか、私と高山は?!
 ふざけるな~! 勝手に決めるな、このバカヤローども!!
 心の叫びは空しくも蚊帳の外でまとめているようだった。バカトリオめが!
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