咽び泣き

惰眠

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1章

3話

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 今日は、面談の日。
 入学してからの困りごとや、自分の目標について担任と話し合わないといけない。

 一日の授業が終わる。

 高校生として始まりの授業はどれも中学の復習を兼ねたもので、私としては助かった。
 どの先生も、寝ている生徒を起こさない。
 特に意欲的に授業を受ける人にはしっかりと対応する。
 そんな先生ファーストではない授業に少しの好感を抱く。

 ここでなら少しは私のことを理解してくれそうだ。

 私は、授業を比較的真面目に受ける。

 目の前で先生の動かすチョーク。
 教科書の文字。
 先生の口や目線。

 欠かさず、ノートに板書を取る。

 なるべく見返せるように、丁寧な字でノートを作った。

 たまにざわつく教室のお陰で、ただでさえ聞こえない先生の声がかき消される時がある。
 そんなときは、不便だと思った。

 真面目に授業に取り組み、わからない所は自分で調べた。
 先生が忙しそうだったから。


 教室の掃除を現在の同じ班のメンバーと共に、終える。

 担任の田中先生のチェックが入る。
 許可が下りることでメンバーは解散する。

「安藤さん。」

 先生から呼ばれる。

「はい。」

 私は、いきなり名前を呼ばれるのが少し辛い。
 まだ、安心できていないのだろうか。
 少し、怯えた気持ちになる。

「面談なんだけど、この学校には面談室があるの知ってる?」

「はい、一応。」

 この学校には、面談室というものが設置されている。
 一人一人に向き合い、それぞれの個性を伸ばすというこの学校独自に発案されたものらしい。
 そこでは、生徒と教師が悩みを話し合う場としてや、部活での相談をする場としても利用される。
 面談室は、防音密室となるが、その扉の前には防犯カメラや利用者名簿の記入などが決められている。
 面談室の広さは、教室と同じ大きさのものと数人が入れる程度ものがあり、大きいものは一つ、狭いものはいくつか用意されてある。

「今日の面談はそこでするから、一緒に行こうか。」

「わかりました。」

 先生が案内するのに従って、私は後ろをついて行く。

「学校は慣れてきた?」

「少し…。」

 私は、自信なさげに答える。

「そう。学校が広くて迷わない?」

「迷いそうになりますが、何とか移動教室とか行けてます。」

「よかった、よかった。うちの学校は、結構広いからたまに教室間違えちゃう子もいるんだよね。もし、間違えちゃっても気にしなくていいから。そういうものだし。わからないことがあったら、近くの先生や先輩たちにいっぱい聞いてあげて。」

 この学校は、どの学校にも負けないくらい広くて大きい。
 教室もそれ相応に複数存在している。
 一番高い建物で、七階建てだ。
 それが、横にも広いとなると階段だけでは苦労する。
 そのために、エレベーターが最大で四つ付属している。
 体育館は三つ建てられており、グラウンドは二つ。
 教室棟とは別に部室棟があり、似た見た目をしているためにそこに迷いそうになったことが何度かある。

「ありがとうございます。頼ってみます。」

 私は、ぼそぼそとした声でそう答える。

「そういえば、聞くの遅くなったけど荷物も一緒に持ってこなくてよかった?」

「大丈夫です。部活をしてないので。」

 面談室は、部室棟と近い。
 そのため、部活にそのまま行く際は荷物をもって面談をした方が効率いいのだろう。

「そう、それならよかった。どう?部活。面白そうなのあった?」

「わからないです。」

「そうだよね。まだ入ったばかりだし、種類もいろいろあるから迷うよね。」

 彼女は、変わらず笑顔でそう話しかける。

「そうですね。」

 私は相変わらず、無愛想な顔つきだろう。
 足元を見続けている。

「よかったらだけど、どの部活も見学大歓迎だから気軽に行ってみてね。もし、一人で行くのが難しかったら、私たち先生を頼ってもいいからね。」

「ありがとうございます。」

「もちろん、部活は強制じゃないから。入りたくなかったらそれでもいいんだけど、せっかくの高校生だからね。勉強も大事だけど、学校生活を楽しめる何かの一つに部活も考えてみてくれると嬉しいかな。」

「考えてみます。」

 先生の優しさは伝わるが、何か素直に受け取ることのできない私がいた。


 目の前の先生の歩みが、止まる。

「ついたよ。ここが面談室。」

 見上げると、面談室2という札が掲げられていた。

「ここに名前を書いてくれるかな?」

「わかりました。」

 面談室の扉の前に置かれた名簿に名前を書く。

「面倒だけど、決まりだからごめんね。」

「大丈夫ですよ。」

「じゃあ、入ろうか。どうぞ。」

 先生は、先に扉を開け、私が入るのを待ってくれる。

「ありがとうございます。」

 私は申し訳なさそうに入る。

 ガチャンと少し大きめな音を立てて、その重たそうな扉は締まる。

「私が奥の方に座るから、そっちに座ってね。」

 私は、扉の近くの席に案内され、座る。

「これから面談を始めるんだけど、答えづらいことがあったら、答えなくてもいいし、一応記録はするけど、嫌だったらいつでも言ってね。」

「わかりました。」

「あと、時間って大丈夫?」

 左手の腕時計を確認する。
 特に予定もないはずだ。

「大丈夫です。」

「もし、用事がなくても終わりたい時があったら、気軽に言ってくれていいからね。」

「ありがとうございます。」

 先生の丁寧な気配りの言葉が終わり、いよいよ面談が始まった。
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