3 / 3
佐吉と観音像3
しおりを挟む
はっと、藤助は佐吉のお金は遊ぶだけに使っていたのではないのかもしれないと思いました。
そして、ぐるりと見回すと、そこには作りかけの大小さまざまな像がありました。
藤助は木くずの中に、木づちとノミを見つけました。
「これは佐吉の……これを彫るために……」
トミは像の中に、ふたつ妙に気になる像を見つけました。
「おとうちゃん……これ……」
トミは両手に取って藤助に見せました。
そのふたつの像は藤助とトミの優しく笑っている顔が彫られた像でした。
明かりに照らされた木彫りの像は、手にとって見ているだけで、あたたかい気持ちになってきます。
「あいつに……こんな優しい顔の像が作れたのか……」
藤助は佐吉が作ってくれた自分の像を持ちながら、何かの力に引っ張られるようにお堂の観音像の元へと行き、正座して見上げました。
観音菩薩はこの世の一切の苦しみから救ってくださる慈悲深いおかたです。
佐吉の観音像は、その御姿を、やわらかい優しさで、いっぱいに表しておりました。
「ああ……これは……」
藤助は言葉を失うほど感動していました。
そのお顔を見ているだけで、藤助は自然と涙を流していました。
春光坊は言いました。
「お前にとって、どのような息子であったかは知らぬ。だがわしから言えることは、このような慈愛に満ちた像は、心が汚れていては彫れぬものなのじゃ。このお優しい観音像と同じくらい、心が澄みきっていなくては、この像は決して彫れぬものなのじゃ。お主の手にある像を見るがいい。誰よりも親思いで、真剣にお前のことを考えていたのが、その像でよくわかるではないか」
藤助はもう一度、自分の像を見ました。
佐吉の彫った像は、優しくいつまでも藤助へと笑いかけておりました。
藤助はわんわん泣きながら謝りました。
「すまねえ!佐吉!すまねえ!おめえのことなにひとつわかってやれなかった悪い親だ!佐吉!すまねえ!」
すると春光坊は言います。
「それは違う。もう一度御覧なさい。あの観音菩薩の慈愛に満ちたお顔を。佐吉殿はなにひとつ恨んではいない。すべてを許しておるのだ」
藤助もトミも「佐吉」と呼びながら、観音像のおみ足をさすりながらいつまでも泣いていました。
後日、たくさんの村の人々や、隣村のものまでもが、佐吉の観音像を見にやってきました。
そのお顔を見て、泣きながら手をすり合わせるものも少なくはありませんでした。
藤助とトミは畑仕事を終えて、お堂にいつも行っておりました。
そこには誰が呼んだわけでもなく、村のものが集まってきます。
そこで話されるのは、いつも佐吉のことでした。
「佐吉どんはのぉ……毎晩病気のわしのところに来てのぉ……一生懸命看病してくれたものじゃった……」
「佐吉は、少しでも悩んだ顔をしていると、じっと側に座って話を聞いてくれたんじゃ。何も言わずに、ただ真剣に話を聞いてくれた。あんな優しいやつは初めてじゃった」
「佐吉はみんなを楽しませようと酒を飲んでも、ひたすらはしゃいでいた。いざという時は自分のことを省みず、友達のために尽くしてくれたんだ。みんな佐吉のために酒をふるまったものだ」
藤助とトミは、みんなの佐吉話を聞いて、つくづくほこらしげな息子だったのだと思うと同時に、毎日観音菩薩を拝みにきていました。
そして観音様を拝みに来る人へと言っていました。
「この世には、自分の気がつかない大事なものがたくさんあるものじゃ。みんな、あんな観音様のようにおだやかに笑い合えたらええのぉ」
そして、ぐるりと見回すと、そこには作りかけの大小さまざまな像がありました。
藤助は木くずの中に、木づちとノミを見つけました。
「これは佐吉の……これを彫るために……」
トミは像の中に、ふたつ妙に気になる像を見つけました。
「おとうちゃん……これ……」
トミは両手に取って藤助に見せました。
そのふたつの像は藤助とトミの優しく笑っている顔が彫られた像でした。
明かりに照らされた木彫りの像は、手にとって見ているだけで、あたたかい気持ちになってきます。
「あいつに……こんな優しい顔の像が作れたのか……」
藤助は佐吉が作ってくれた自分の像を持ちながら、何かの力に引っ張られるようにお堂の観音像の元へと行き、正座して見上げました。
観音菩薩はこの世の一切の苦しみから救ってくださる慈悲深いおかたです。
佐吉の観音像は、その御姿を、やわらかい優しさで、いっぱいに表しておりました。
「ああ……これは……」
藤助は言葉を失うほど感動していました。
そのお顔を見ているだけで、藤助は自然と涙を流していました。
春光坊は言いました。
「お前にとって、どのような息子であったかは知らぬ。だがわしから言えることは、このような慈愛に満ちた像は、心が汚れていては彫れぬものなのじゃ。このお優しい観音像と同じくらい、心が澄みきっていなくては、この像は決して彫れぬものなのじゃ。お主の手にある像を見るがいい。誰よりも親思いで、真剣にお前のことを考えていたのが、その像でよくわかるではないか」
藤助はもう一度、自分の像を見ました。
佐吉の彫った像は、優しくいつまでも藤助へと笑いかけておりました。
藤助はわんわん泣きながら謝りました。
「すまねえ!佐吉!すまねえ!おめえのことなにひとつわかってやれなかった悪い親だ!佐吉!すまねえ!」
すると春光坊は言います。
「それは違う。もう一度御覧なさい。あの観音菩薩の慈愛に満ちたお顔を。佐吉殿はなにひとつ恨んではいない。すべてを許しておるのだ」
藤助もトミも「佐吉」と呼びながら、観音像のおみ足をさすりながらいつまでも泣いていました。
後日、たくさんの村の人々や、隣村のものまでもが、佐吉の観音像を見にやってきました。
そのお顔を見て、泣きながら手をすり合わせるものも少なくはありませんでした。
藤助とトミは畑仕事を終えて、お堂にいつも行っておりました。
そこには誰が呼んだわけでもなく、村のものが集まってきます。
そこで話されるのは、いつも佐吉のことでした。
「佐吉どんはのぉ……毎晩病気のわしのところに来てのぉ……一生懸命看病してくれたものじゃった……」
「佐吉は、少しでも悩んだ顔をしていると、じっと側に座って話を聞いてくれたんじゃ。何も言わずに、ただ真剣に話を聞いてくれた。あんな優しいやつは初めてじゃった」
「佐吉はみんなを楽しませようと酒を飲んでも、ひたすらはしゃいでいた。いざという時は自分のことを省みず、友達のために尽くしてくれたんだ。みんな佐吉のために酒をふるまったものだ」
藤助とトミは、みんなの佐吉話を聞いて、つくづくほこらしげな息子だったのだと思うと同時に、毎日観音菩薩を拝みにきていました。
そして観音様を拝みに来る人へと言っていました。
「この世には、自分の気がつかない大事なものがたくさんあるものじゃ。みんな、あんな観音様のようにおだやかに笑い合えたらええのぉ」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
稀代の悪女は死してなお
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
魔女は小鳥を慈しむ
石河 翠
児童書・童話
母親に「あなたのことが大好きだよ」と言ってもらいたい少女は、森の魔女を訪ねます。
本当の気持ちを知るために、魔法をかけて欲しいと願ったからです。
当たり前の普通の幸せが欲しかったのなら、魔法なんて使うべきではなかったのに。
こちらの作品は、小説家になろうとエブリスタにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる