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佐吉と観音像2
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自分が人を楽しませることが大好きで、お酒を飲むのも自分が楽しむ以上に相手を楽しませたい気持ちでいっぱいだったのです。
佐吉がはしゃぐ姿を周りのものがよく見かけるので、佐吉は遊んでいるだけだと思われていました。
「おっとぉやおっかぁには、おらの気持ちなんてわからねぇだ」
佐吉は自分の気持ちをうまく伝えるのがへたでした。
気持ちの行き場のなくなった佐吉が立ち上がろうとすると、ごとりと木づちとノミが落ちました。
藤助がそれを拾い上げて言いました。
「佐吉。なんだこれは。こんなもの持ち歩いているのか。大工になりたいなら、きちんと弟子入りしたらどうだ。弟子入りもしねぇで、こんなもの持ち歩いたって宝の持ち腐れじゃ」
佐吉は藤助の持った木づちとノミを取り上げました。
「やめろ!おらの命よりも大事なものだ!触るな!」
トミは佐吉の言葉を聞いて泣き出し、言いました。
「佐吉。親に向かってそんな口のきき方はねぇべ。おめぇ、誰に育ててもらったと思ってるだ」
いつも言われるばかりで、何ひとつ藤助やトミに伝えることはできずにいた佐吉の心は壊れてしまいそうでした。
佐吉にはどうしてもやりたいことがありました。
佐吉はそのことをわかってもらおうとしましたが、いつも伝えようとすると、うまく言葉が出ずに「おらのことなんて、わかるわけねぇ」としか言えませんでした。
本当はちゃんと伝えたいのに、いつも怒らせるばかりで、話し合うこともできずに、どうしようもなくなって、佐吉は家を飛び出してしまいました。
藤助は心の中で思いました。
あんな息子ならいなかったほうがよかった、と。
トミは言ってもきかない佐吉に、どうしてわかってくれないのかと泣いたままでした。
その日から家族同士口数がめっきり減ってしまいました。
佐吉は逃げるようにして、夜頻繁に出歩くようになりました。
朝方に近所の村人が佐吉を見かけるたびに、悪口を言うようになりました。
村人たちは藤助やトミは一生懸命働くことを知っていたので、かばうように言い、佐吉だけを悪く言いました。
「本当にあんなろくでなしができて、藤助んとこはかわいそうだべ」
「奉公に出すにも、あんなんじゃあな……」
藤助たちばかりに同情の声がかけられ、佐吉は白い目で見られるようになりました。
もちろんその声は佐吉の耳にも入ってきています。
藤助たちは、もう佐吉のことは諦めようと思い始めていました。
息子だと言うことが恥さらしのように思うようになっていました。
佐吉はだんだんと、「おらなんていなくなったほうがみんなのためだべ」と思うようになりました。
悪口がどんどんひどくなってきたある日、佐吉は激しい雨の日、川へと身を投げて死んでしまいました。
佐吉の両親は心から悲しみました。
「ちゃんと仕事のできる息子にすれば、こんなことにはならなかった」
二人とも育て方を間違えたから、佐吉は死んだのだと思いました。
佐吉が死んでからしばらくして、雨のぬかるみもなくなったある朝、藤助の家の戸をドンドンと激しく叩く音がしました。
「佐吉!起きろ!春光殿がお見えじゃ!早くしろ!」
藤助は眠い目をこすりながら、戸を開けると、そこには村のものではない二人の若者とお坊さんが一人立っていました。
悲しみ残る藤助は神妙な顔でお坊さんを見ると、お坊さんは言いました。
「私は月光山の春光と申す僧です。ここに、あのありがたい観音像をお作りになられた佐吉殿がいるとお聞きしてまいったしだい。ぜひ、佐吉殿に会わせていただけませんか。お礼を申し上げたいのです」
月光山の春光坊と言えば、近隣では知らぬものがいないと言われる、偉いお坊さんです。
藤助は春光坊が何を言っているのかわかりませんでしたが、佐吉はもういないので、悲しみを抑えながら言いました。
「佐吉はこのまえ川へと身を投げて死んでしもうた……」
二人の若者もお坊さんも驚きました。
「うそだ!あんないいやつが、どうして死ななきゃいけないんだ!」
藤助は絶句している春光坊に聞きました。
「今日はどうしてここに……観音像を作ったって……」
春光坊は手をすり合わせ、悲しそうに目をつむって言いました。
「ああ……これは惜しいことをなされた……ついて来なされ」
藤助とトミが案内されたのは、村のお堂でした。
その中へと入ると、ふくよかで優しい顔をした立派な観音像が安置されておりました。
そのあまりの立派な姿に藤助もトミも言葉をなくします。
「この観音像は、この二人の友人が運んでくれたものです。佐吉殿は人知れず、この先の洞窟で少ない明かりで、この観音像をずっと彫っていたのです。こちらです」
春光坊は明かりを照らしながら、洞窟の奥へと入っていきます。
するとすぐに、木くずでいっぱいになった場所に突き当たりました。
明かりのためのロウソクが溶けたあともたくさんありました。
ロウソクはもちろんタダでは手に入りません。
佐吉がはしゃぐ姿を周りのものがよく見かけるので、佐吉は遊んでいるだけだと思われていました。
「おっとぉやおっかぁには、おらの気持ちなんてわからねぇだ」
佐吉は自分の気持ちをうまく伝えるのがへたでした。
気持ちの行き場のなくなった佐吉が立ち上がろうとすると、ごとりと木づちとノミが落ちました。
藤助がそれを拾い上げて言いました。
「佐吉。なんだこれは。こんなもの持ち歩いているのか。大工になりたいなら、きちんと弟子入りしたらどうだ。弟子入りもしねぇで、こんなもの持ち歩いたって宝の持ち腐れじゃ」
佐吉は藤助の持った木づちとノミを取り上げました。
「やめろ!おらの命よりも大事なものだ!触るな!」
トミは佐吉の言葉を聞いて泣き出し、言いました。
「佐吉。親に向かってそんな口のきき方はねぇべ。おめぇ、誰に育ててもらったと思ってるだ」
いつも言われるばかりで、何ひとつ藤助やトミに伝えることはできずにいた佐吉の心は壊れてしまいそうでした。
佐吉にはどうしてもやりたいことがありました。
佐吉はそのことをわかってもらおうとしましたが、いつも伝えようとすると、うまく言葉が出ずに「おらのことなんて、わかるわけねぇ」としか言えませんでした。
本当はちゃんと伝えたいのに、いつも怒らせるばかりで、話し合うこともできずに、どうしようもなくなって、佐吉は家を飛び出してしまいました。
藤助は心の中で思いました。
あんな息子ならいなかったほうがよかった、と。
トミは言ってもきかない佐吉に、どうしてわかってくれないのかと泣いたままでした。
その日から家族同士口数がめっきり減ってしまいました。
佐吉は逃げるようにして、夜頻繁に出歩くようになりました。
朝方に近所の村人が佐吉を見かけるたびに、悪口を言うようになりました。
村人たちは藤助やトミは一生懸命働くことを知っていたので、かばうように言い、佐吉だけを悪く言いました。
「本当にあんなろくでなしができて、藤助んとこはかわいそうだべ」
「奉公に出すにも、あんなんじゃあな……」
藤助たちばかりに同情の声がかけられ、佐吉は白い目で見られるようになりました。
もちろんその声は佐吉の耳にも入ってきています。
藤助たちは、もう佐吉のことは諦めようと思い始めていました。
息子だと言うことが恥さらしのように思うようになっていました。
佐吉はだんだんと、「おらなんていなくなったほうがみんなのためだべ」と思うようになりました。
悪口がどんどんひどくなってきたある日、佐吉は激しい雨の日、川へと身を投げて死んでしまいました。
佐吉の両親は心から悲しみました。
「ちゃんと仕事のできる息子にすれば、こんなことにはならなかった」
二人とも育て方を間違えたから、佐吉は死んだのだと思いました。
佐吉が死んでからしばらくして、雨のぬかるみもなくなったある朝、藤助の家の戸をドンドンと激しく叩く音がしました。
「佐吉!起きろ!春光殿がお見えじゃ!早くしろ!」
藤助は眠い目をこすりながら、戸を開けると、そこには村のものではない二人の若者とお坊さんが一人立っていました。
悲しみ残る藤助は神妙な顔でお坊さんを見ると、お坊さんは言いました。
「私は月光山の春光と申す僧です。ここに、あのありがたい観音像をお作りになられた佐吉殿がいるとお聞きしてまいったしだい。ぜひ、佐吉殿に会わせていただけませんか。お礼を申し上げたいのです」
月光山の春光坊と言えば、近隣では知らぬものがいないと言われる、偉いお坊さんです。
藤助は春光坊が何を言っているのかわかりませんでしたが、佐吉はもういないので、悲しみを抑えながら言いました。
「佐吉はこのまえ川へと身を投げて死んでしもうた……」
二人の若者もお坊さんも驚きました。
「うそだ!あんないいやつが、どうして死ななきゃいけないんだ!」
藤助は絶句している春光坊に聞きました。
「今日はどうしてここに……観音像を作ったって……」
春光坊は手をすり合わせ、悲しそうに目をつむって言いました。
「ああ……これは惜しいことをなされた……ついて来なされ」
藤助とトミが案内されたのは、村のお堂でした。
その中へと入ると、ふくよかで優しい顔をした立派な観音像が安置されておりました。
そのあまりの立派な姿に藤助もトミも言葉をなくします。
「この観音像は、この二人の友人が運んでくれたものです。佐吉殿は人知れず、この先の洞窟で少ない明かりで、この観音像をずっと彫っていたのです。こちらです」
春光坊は明かりを照らしながら、洞窟の奥へと入っていきます。
するとすぐに、木くずでいっぱいになった場所に突き当たりました。
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ロウソクはもちろんタダでは手に入りません。
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