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3章 群雄割拠

診療所での一幕

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 義賢が鍛冶屋から家に戻ると董白が倒れていた。
 義賢「董白、董白、一体何が」
 オデコに手を当てると熱い。
 義賢「熱い、董白死ぬな」
 董白「煩いわね。ちょっと熱が出た程度よ」
 義賢「意識はあるんだな。待ってろ。今病院に連れて行ってやる」
 董白「えっ、ちょっとちょっとちょっと」
 董白を背負い黝廉に跨ると、荊州の奥地に向けて、馬を駆けた。そして張角診療所に辿り着いたのである。
 義賢「張角殿、妻が」
 張角「これは劉丁殿、久しぶりですなぁ。ややっこれはまずい。すぐにそこに寝かせてくだされ」
 義賢が言われたところに董白を寝かせる。
 張角「張宝、ちょっと来てくれんか」
 張宝「兄上、かしこまりました」
 張角「劉丁殿は、少し出ていてくだされ」
 義賢は、追い出されてしまった。
 義賢「ひょっとして、そんなにまずいのか。董白、俺がもっと気にしていれば。董白死ぬな。死なないでくれ」
 壁隔てた向こうにいる董白の無事を祈る義賢。少しすると張宝が出てくる。
 義賢「張宝殿、董白は?」
 張宝「劉丁殿、よかったですね」
 義賢「何があんなに董白が熱で苦しんでるんだぞ」
 張宝「妊娠です。劉丁殿は、父親になられるんですよ」
 義賢「へっ?ええええ董白が妊娠!」
 張宝「えぇ、妊娠初期の症状ですね。それで少し体温が少し高くなっていただけです。心配いりません。それにしても、劉丁殿の慌てぶり、董白殿のことをとても大事にしておられるのですね」
 義賢「大事な妻なのだ。何かあったらどうしたらと不安であった」
 董白「義賢、だから大袈裟だって言ったのよ(こんなに大事に想ってくれてたなんて、嬉しい。それに義賢との子供だなんて、今から待ち遠しいな)」
 張梁が慌てた様子で張角を呼ぶ。
 張梁「兄貴、ちょっと来てくれ、酷い怪我をしてる奴がいるんだ」
 張角「なんだと!張曼成・馬元義、手を貸してやるのだ」
 張曼成・馬元義「おぅ」
 ???「張繍様、どうかどうか御無事で」
 張梁「酷い怪我なんだ。話すんじゃねぇ。大丈夫だ。お前がそんなになって守ったんだろう。生きてる生きてるから安心しろ」
 ???「そうか、グフッ」
 張角「これはまずい。すぐに止血と包帯じゃ」
 そこに1人の仙人のような見た目の老人が現れた。
 ???「ホッホッホ。そんなことでは助かりますまい。ワシに任せてもらえんかの?」
 張角「名も名乗らない奴に任せられませんな。どちら様ですかな?」
 ???「華佗カダと申す」
 張角「なんと!名医として名高い華佗殿だったとは!是非お願いいたします」
 華佗「では、張角よ。お前も医師の端くれなら。見学すると良いぞ」
 張角「なんと!華佗殿の絶技、間近で勉強させていただきますぞ」
 華佗は、素早く止血すると、外科手術を行った。その甲斐もあり、男性は一命を取り留めたのである。
 華佗「ホッホッホ。なんとか助けられたようじゃな」
 張角「華佗殿、是非、ワシを弟子にしてくれませぬか?もっと人を助けたいのです」
 華佗「ふむ。弟子は取らない主義であったが。ここは空気も良い。滞在している間で良ければ、教えてやるとしよう」
 張角「感謝致します先生」
 華佗「ホッホッホ」
 義賢は大事を取り、数日間程、董白の熱が下がるまで、張角診療所に滞在した。
 ???「うっうーん」
 張角「おぉ、気が付きましたかな?」
 ???「ここは、いや俺は生きてるのか?」
 張角「大丈夫じゃ。まだあの世ではないぞ」
 ???「そうか、ならこうしてはおられん。すぐに張繍様を探して御守りせねば」
 張角「待て、酷い怪我だったのだ。無理をすれば傷口が開くぞ」
 張繍?ひょっとして、この偉丈夫、まさか胡車児コシャジ殿か?だとしたら、宛城えんじょうが曹操の手に落ちたのか。何があったのか聞かなければ。
 義賢「もしかして、張繍殿の側近、胡車児殿ではないですか?」
 ???「!お前、曹操軍の者か。もうこんなところまで来ていたのだな。張繍様と鄒豊麗様は、どうした?もう殺したのか。だとしたら許さんぞ」
 義賢「曹操軍ではありません。安心してください。俺は、劉義賢、劉玄徳の弟です」
 ???「そうであったか。すまぬ。お前の言った通り、俺の名は胡車児だ」
 義賢「やはりそうでしたか。宛城に曹操軍が来たのですね」
 胡車児「あぁ。張済様は、張繍様と奥方である鄒豊麗様を逃し、城に留まり、最後まで、曹操に屈しなかった。立派な最後であった。俺も張繍様に拾ってもらった恩を返すべく裏手の門で仁王立ちして、曹操軍を食い止めたのだが。賈詡の奴め。許せん」
 賈詡が張繍を裏切った?史実では、共に張済の妻を使い曹操を罠に嵌めて、典韋と曹操の長男曹昂を討ちとったよな。そうかそうだよな張済が生きているのだ。奥方を曹操に差し出すような真似承認するわけない。成程、策を存分にふるえないと考えて、見切りをつけて曹操軍に寝返ったってことか。嫌らしい男である賈詡らしいといえるか。だが、良いことを聞いた張繍は、相当な槍の使い手と聞いている。それにこの世界では鄒豊麗という張済の奥方は、誰もが羨む美貌の持ち主だ。是非迎え入れて、兄上の側女に加わってもらいたい。
 義賢「胡車児殿、今は安静にしてください。傷が塞がったら、俺も共に張繍殿を助けるお手伝いをしましょう」
 胡車児「なんと!それは、有難い申し出。ならすぐにこんな怪我治さねばなりませんな」
 部屋を出て、外に出るとずっと握り拳を作り、耐えていた董白の怒りが爆発した。
 董白「張済と張繍は、董卓お爺様を死に追いやろうとしたのよ。どうして、そんな奴らに手を貸すのよ」
 義賢「身を守るため仕方なかったのだろう。あの時に、表立って、李傕や郭汜と対立していれば、牛捕や董旻と同じ運命を辿っていただろう。それぞれ立場がある。董白、お前の気持ちもわかる。だがな、俺は劉備軍の人間として、使える人材は1人でも集めなくてはならないんだ。どうかわかってくれ」
 董白「そんなこと言われても無理よ」
 そこに懐かしい2人が騒ぎを聞きつけ通りかかるのであった。
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