37 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる
37話 マルケス商会vsグラン商会
しおりを挟む
民のために真っ当な商売をしている商会の中にマルケス商会という商屋がある。
主に子供の奴隷を買い取り、身なりを整え、読み書きを教え、社会で働けるようにしてきた柔和な笑みを浮かべるお爺さんが当主を務めている。
そのお爺さんの名前をセーバス・マルケスという。
「養父上、ただいま戻りました」
「親父、帰ったぜ」
「ルカにレオ、無事で何よりじゃ。して、グラン商会に攫われた子供たちは?」
「はい養父上。此度は、野盗に見せかけて奪うことで、成功しました」
「そうか。良かった。皆、無事なのじゃな?」
「衰弱している者も居ますが命に別状はありません」
「にしてもよ。領主が変わったって言うのに、アイツらのやる事は変わらねぇんだな」
「此度もロルフ様によって、多くの奴隷兵が徴兵された。その隙を付いて、子供を攫ったのじゃろう」
「親父がそこまでして、オダ郡に尽くす意味はねぇだろ。そもそも新しい領主が解決する事だろ」
「サブロー様は、まだ8歳じゃ。それにあのような圧政を敷いたロルフ様であろうとサブロー様にとっては、大事な父君じゃ。悲しみで手の回らぬところもあろう」
「ザマァみろ。俺たちの苦しみを知れってんだ!」
「そういうことを言うものではないぞレオよ」
「親父まで兄者と同じ事を。全く、ほんと似たもの親子だぜ」
「アハハ。養父上に似ているなんて最高の褒め言葉だよ。ありがとうレオ」
「ルカと似ているか。それは良い。レオと違い良い子に育ったという事じゃ」
「ケッ。ヘイヘイ。俺は悪い子だぜ。でもよ。簡単に恨みを消すことなんてできねぇよ」
「レオよ。恨みを消す必要は、ないのじゃ。痛みを受けたのならその痛みを他の者に与えぬように守ってやれば良い。お前には、ルカと違いみんなを守れる力があるのじゃからな。その力の使い方さえ間違えなければ良い」
「わかってる親父。安心してくれ。新しい領主を殺したりはしねぇからよ」
「そこは心配しておらん。なんやかんや、レオも真っ直ぐで良い子じゃからな」
「何だよそれ!」
「アハハ」
「此度も子供達が無事で良かった。ミリーよ。温かい食事と安全な寝床の準備じゃ」
「かしこまりました大旦那様。レオ坊ちゃんにルカ坊ちゃんもお帰りなさいませ」
「坊ちゃんなんてやめてくださいミリーさん」
「おぅ。帰ったぜミリー」
「そういうわけには参りません。大旦那様の御子息なのですから私にとっても大事な坊ちゃんですよ」
「養子ですから。そんなに気を遣わないでもらえると」
「だから兄者は、細かいことをぐちぐちと。ミリーがそうしたいんだからそうさせてやれば良いんだぜ」
「レオ坊ちゃんの言う通りですよルカ坊ちゃん」
「うわぁ~やめてください」
「ルカは、ほんとミリーに弱いのぉ」
「養父上まで茶化さないでくださいよ~」
ほのぼのとしたマルケス商会と違い子供を奪われたグラン商会では、当主を務めるマーズ・グランが殺気立っていた。
「テメェら。それでおめおめとガキ共を奪われて戻ってきたってのか?仕事を舐めてんのか?何処が戦に長けた傭兵なんだ?野盗如きにガキ共を奪われるような奴らがよ」
「失敗はしたが護衛はした。相手が強かっただけのことだ。依頼料は満額もらう」
「ふざけんじゃねぇよ!テメェらみたいな雑魚に払う金はねぇんだよ」
「そう言うのなら貴殿が護衛に付けば良かっただけのこと。それとも何か我々に死んでも荷物を守れと?」
「当然だろう。それが仕事なんだからよ。それとも何か?荷物がガキだったから情でも湧いて逃したのか?おいおい。こりゃあ契約違反だよなぁ。逆に違約金を払ってもらおうか?」
「成程、貴殿と仕事をするなと言っていた傭兵組合の先輩の言葉は正しかったようだ。今回の依頼料は要らないが違約金を払うつもりはない。金輪際、貴殿に協力する傭兵は現れないとだけ申しておこう。我らだって人なのでな。荷物の中身がまさか子供だったこともそうだが。貴殿は、秘密主義すぎる。いつか足元を掬われるであろう」
「雑魚の癖に捨て台詞だけは一丁前だな。とっとと帰って、ママのおっぱいでも吸ってろ雑魚が」
「その方が貴殿と話すよりよっぽど有意義だな」
帰っていく傭兵。
「クソ。忌々しい。ガキを奪ったのが何処の誰かはわかってんだ。セーバスの野郎。俺様の邪魔ばかりしやがって、ロルフの野郎が死んでなければ、このことを報告して、潰せたものを。跡を継いだサブローとかいうガキは、どうして俺様に連絡してこない。舐めてんのか。イライラするぜ」
マーズのイライラが数ヶ月続いたある日のこと、扉をノックする音が聞こえる。
「ウルセェぞ!俺様は、機嫌が悪いんだ!後にしやがれ」
「はっ失礼しました。ですが、そのこういう御触れが出ておりまして」
「何度も言わせんじゃねぇよ!死にてぇのか!」
「ヒィッ。では、ここに置いておきます。しっ失礼しましたー」
「どいつもこいつも俺様をイラつかせやがる。御触れってまさか!?ようやくかよクソガキが。まぁ、金に困ってるのは、わかってる。なんたって、タルカ郡と揉めてるらしいからなぁ。せいぜい、恩を売って、俺様が良いように利用してやろう」
扉の前に置かれた御触れを見て、イライラが最高潮に達するマーズ。
「どいつもこいつも舐めやがって、何が広く商人を求めているだ?オメェみたいなガキが頼るのは俺様だろうが!これは、赴いて、はっきりと立場をわからせてやらないと行けねぇな」
そして、赴いたマーズは、サブローの詐欺まがいな策略に騙され、全財産を没収され、没落し、全てを失い放り出されたマーズは、もう一度返り咲くために、レーニン・ガロリングと手を結ぶのである。
主に子供の奴隷を買い取り、身なりを整え、読み書きを教え、社会で働けるようにしてきた柔和な笑みを浮かべるお爺さんが当主を務めている。
そのお爺さんの名前をセーバス・マルケスという。
「養父上、ただいま戻りました」
「親父、帰ったぜ」
「ルカにレオ、無事で何よりじゃ。して、グラン商会に攫われた子供たちは?」
「はい養父上。此度は、野盗に見せかけて奪うことで、成功しました」
「そうか。良かった。皆、無事なのじゃな?」
「衰弱している者も居ますが命に別状はありません」
「にしてもよ。領主が変わったって言うのに、アイツらのやる事は変わらねぇんだな」
「此度もロルフ様によって、多くの奴隷兵が徴兵された。その隙を付いて、子供を攫ったのじゃろう」
「親父がそこまでして、オダ郡に尽くす意味はねぇだろ。そもそも新しい領主が解決する事だろ」
「サブロー様は、まだ8歳じゃ。それにあのような圧政を敷いたロルフ様であろうとサブロー様にとっては、大事な父君じゃ。悲しみで手の回らぬところもあろう」
「ザマァみろ。俺たちの苦しみを知れってんだ!」
「そういうことを言うものではないぞレオよ」
「親父まで兄者と同じ事を。全く、ほんと似たもの親子だぜ」
「アハハ。養父上に似ているなんて最高の褒め言葉だよ。ありがとうレオ」
「ルカと似ているか。それは良い。レオと違い良い子に育ったという事じゃ」
「ケッ。ヘイヘイ。俺は悪い子だぜ。でもよ。簡単に恨みを消すことなんてできねぇよ」
「レオよ。恨みを消す必要は、ないのじゃ。痛みを受けたのならその痛みを他の者に与えぬように守ってやれば良い。お前には、ルカと違いみんなを守れる力があるのじゃからな。その力の使い方さえ間違えなければ良い」
「わかってる親父。安心してくれ。新しい領主を殺したりはしねぇからよ」
「そこは心配しておらん。なんやかんや、レオも真っ直ぐで良い子じゃからな」
「何だよそれ!」
「アハハ」
「此度も子供達が無事で良かった。ミリーよ。温かい食事と安全な寝床の準備じゃ」
「かしこまりました大旦那様。レオ坊ちゃんにルカ坊ちゃんもお帰りなさいませ」
「坊ちゃんなんてやめてくださいミリーさん」
「おぅ。帰ったぜミリー」
「そういうわけには参りません。大旦那様の御子息なのですから私にとっても大事な坊ちゃんですよ」
「養子ですから。そんなに気を遣わないでもらえると」
「だから兄者は、細かいことをぐちぐちと。ミリーがそうしたいんだからそうさせてやれば良いんだぜ」
「レオ坊ちゃんの言う通りですよルカ坊ちゃん」
「うわぁ~やめてください」
「ルカは、ほんとミリーに弱いのぉ」
「養父上まで茶化さないでくださいよ~」
ほのぼのとしたマルケス商会と違い子供を奪われたグラン商会では、当主を務めるマーズ・グランが殺気立っていた。
「テメェら。それでおめおめとガキ共を奪われて戻ってきたってのか?仕事を舐めてんのか?何処が戦に長けた傭兵なんだ?野盗如きにガキ共を奪われるような奴らがよ」
「失敗はしたが護衛はした。相手が強かっただけのことだ。依頼料は満額もらう」
「ふざけんじゃねぇよ!テメェらみたいな雑魚に払う金はねぇんだよ」
「そう言うのなら貴殿が護衛に付けば良かっただけのこと。それとも何か我々に死んでも荷物を守れと?」
「当然だろう。それが仕事なんだからよ。それとも何か?荷物がガキだったから情でも湧いて逃したのか?おいおい。こりゃあ契約違反だよなぁ。逆に違約金を払ってもらおうか?」
「成程、貴殿と仕事をするなと言っていた傭兵組合の先輩の言葉は正しかったようだ。今回の依頼料は要らないが違約金を払うつもりはない。金輪際、貴殿に協力する傭兵は現れないとだけ申しておこう。我らだって人なのでな。荷物の中身がまさか子供だったこともそうだが。貴殿は、秘密主義すぎる。いつか足元を掬われるであろう」
「雑魚の癖に捨て台詞だけは一丁前だな。とっとと帰って、ママのおっぱいでも吸ってろ雑魚が」
「その方が貴殿と話すよりよっぽど有意義だな」
帰っていく傭兵。
「クソ。忌々しい。ガキを奪ったのが何処の誰かはわかってんだ。セーバスの野郎。俺様の邪魔ばかりしやがって、ロルフの野郎が死んでなければ、このことを報告して、潰せたものを。跡を継いだサブローとかいうガキは、どうして俺様に連絡してこない。舐めてんのか。イライラするぜ」
マーズのイライラが数ヶ月続いたある日のこと、扉をノックする音が聞こえる。
「ウルセェぞ!俺様は、機嫌が悪いんだ!後にしやがれ」
「はっ失礼しました。ですが、そのこういう御触れが出ておりまして」
「何度も言わせんじゃねぇよ!死にてぇのか!」
「ヒィッ。では、ここに置いておきます。しっ失礼しましたー」
「どいつもこいつも俺様をイラつかせやがる。御触れってまさか!?ようやくかよクソガキが。まぁ、金に困ってるのは、わかってる。なんたって、タルカ郡と揉めてるらしいからなぁ。せいぜい、恩を売って、俺様が良いように利用してやろう」
扉の前に置かれた御触れを見て、イライラが最高潮に達するマーズ。
「どいつもこいつも舐めやがって、何が広く商人を求めているだ?オメェみたいなガキが頼るのは俺様だろうが!これは、赴いて、はっきりと立場をわからせてやらないと行けねぇな」
そして、赴いたマーズは、サブローの詐欺まがいな策略に騙され、全財産を没収され、没落し、全てを失い放り出されたマーズは、もう一度返り咲くために、レーニン・ガロリングと手を結ぶのである。
1
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる