信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

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2章 オダ郡を一つにまとめる

37話 マルケス商会vsグラン商会

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 民のために真っ当な商売をしている商会の中にマルケス商会という商屋がある。

 主に子供の奴隷を買い取り、身なりを整え、読み書きを教え、社会で働けるようにしてきた柔和な笑みを浮かべるお爺さんが当主を務めている。

 そのお爺さんの名前をセーバス・マルケスという。

「養父上、ただいま戻りました」

「親父、帰ったぜ」

 「ルカにレオ、無事で何よりじゃ。して、グラン商会に攫われた子供たちは?」

「はい養父上。此度は、野盗に見せかけて奪うことで、成功しました」

「そうか。良かった。皆、無事なのじゃな?」

「衰弱している者も居ますが命に別状はありません」

「にしてもよ。領主が変わったって言うのに、アイツらのやる事は変わらねぇんだな」

「此度もロルフ様によって、多くの奴隷兵が徴兵された。その隙を付いて、子供を攫ったのじゃろう」

「親父がそこまでして、オダ郡に尽くす意味はねぇだろ。そもそも新しい領主が解決する事だろ」

「サブロー様は、まだ8歳じゃ。それにあのような圧政を敷いたロルフ様であろうとサブロー様にとっては、大事な父君じゃ。悲しみで手の回らぬところもあろう」

「ザマァみろ。俺たちの苦しみを知れってんだ!」

「そういうことを言うものではないぞレオよ」

「親父まで兄者と同じ事を。全く、ほんと似たもの親子だぜ」

「アハハ。養父上に似ているなんて最高の褒め言葉だよ。ありがとうレオ」

「ルカと似ているか。それは良い。レオと違い良い子に育ったという事じゃ」

「ケッ。ヘイヘイ。俺は悪い子だぜ。でもよ。簡単に恨みを消すことなんてできねぇよ」

「レオよ。恨みを消す必要は、ないのじゃ。痛みを受けたのならその痛みを他の者に与えぬように守ってやれば良い。お前には、ルカと違いみんなを守れる力があるのじゃからな。その力の使い方さえ間違えなければ良い」

「わかってる親父。安心してくれ。新しい領主を殺したりはしねぇからよ」

「そこは心配しておらん。なんやかんや、レオも真っ直ぐで良い子じゃからな」

「何だよそれ!」

「アハハ」

「此度も子供達が無事で良かった。ミリーよ。温かい食事と安全な寝床の準備じゃ」

「かしこまりました大旦那様。レオ坊ちゃんにルカ坊ちゃんもお帰りなさいませ」

「坊ちゃんなんてやめてくださいミリーさん」

「おぅ。帰ったぜミリー」

「そういうわけには参りません。大旦那様の御子息なのですから私にとっても大事な坊ちゃんですよ」

「養子ですから。そんなに気を遣わないでもらえると」

「だから兄者は、細かいことをぐちぐちと。ミリーがそうしたいんだからそうさせてやれば良いんだぜ」

「レオ坊ちゃんの言う通りですよルカ坊ちゃん」

「うわぁ~やめてください」

「ルカは、ほんとミリーに弱いのぉ」

「養父上まで茶化さないでくださいよ~」

 ほのぼのとしたマルケス商会と違い子供を奪われたグラン商会では、当主を務めるマーズ・グランが殺気立っていた。

「テメェら。それでおめおめとガキ共を奪われて戻ってきたってのか?仕事を舐めてんのか?何処が戦に長けた傭兵なんだ?野盗如きにガキ共を奪われるような奴らがよ」

「失敗はしたが護衛はした。相手が強かっただけのことだ。依頼料は満額もらう」

「ふざけんじゃねぇよ!テメェらみたいな雑魚に払う金はねぇんだよ」

「そう言うのなら貴殿が護衛に付けば良かっただけのこと。それとも何か我々に死んでも荷物を守れと?」

「当然だろう。それが仕事なんだからよ。それとも何か?荷物がガキだったから情でも湧いて逃したのか?おいおい。こりゃあ契約違反だよなぁ。逆に違約金を払ってもらおうか?」

「成程、貴殿と仕事をするなと言っていた傭兵組合の先輩の言葉は正しかったようだ。今回の依頼料は要らないが違約金を払うつもりはない。金輪際、貴殿に協力する傭兵は現れないとだけ申しておこう。我らだって人なのでな。荷物の中身がまさか子供だったこともそうだが。貴殿は、秘密主義すぎる。いつか足元を掬われるであろう」

「雑魚の癖に捨て台詞だけは一丁前だな。とっとと帰って、ママのおっぱいでも吸ってろ雑魚が」

「その方が貴殿と話すよりよっぽど有意義だな」

 帰っていく傭兵。

「クソ。忌々しい。ガキを奪ったのが何処の誰かはわかってんだ。セーバスの野郎。俺様の邪魔ばかりしやがって、ロルフの野郎が死んでなければ、このことを報告して、潰せたものを。跡を継いだサブローとかいうガキは、どうして俺様に連絡してこない。舐めてんのか。イライラするぜ」

 マーズのイライラが数ヶ月続いたある日のこと、扉をノックする音が聞こえる。

「ウルセェぞ!俺様は、機嫌が悪いんだ!後にしやがれ」

「はっ失礼しました。ですが、そのこういう御触れが出ておりまして」

「何度も言わせんじゃねぇよ!死にてぇのか!」

「ヒィッ。では、ここに置いておきます。しっ失礼しましたー」

「どいつもこいつも俺様をイラつかせやがる。御触れってまさか!?ようやくかよクソガキが。まぁ、金に困ってるのは、わかってる。なんたって、タルカ郡と揉めてるらしいからなぁ。せいぜい、恩を売って、俺様が良いように利用してやろう」

 扉の前に置かれた御触れを見て、イライラが最高潮に達するマーズ。

「どいつもこいつも舐めやがって、何が広く商人を求めているだ?オメェみたいなガキが頼るのは俺様だろうが!これは、赴いて、はっきりと立場をわからせてやらないと行けねぇな」

 そして、赴いたマーズは、サブローの詐欺まがいな策略に騙され、全財産を没収され、没落し、全てを失い放り出されたマーズは、もう一度返り咲くために、レーニン・ガロリングと手を結ぶのである。
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