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第三部

古参の死神トリア

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向井は気になっている黒谷の団地の一件を調べる為、

トリアに話を聞くことにした。

冥王に尋ねたところで、

恐らくはぐらかされてしまうだろうから、

トリアなら何かを知っているかもしれない。

今日はどこにいるのか姿が見えない。

向井は死神課へ行った。

「どうかしましたか? 」

セイが書類整理から顔を上げた。

「トリアさんが今どこにいるか知ってますか? 」

「トリア………ですか。ちょっと待ってくださいね」

セイが画面から調べると、

「今、下界ですね………特例が来た年は、

あなた達の痕跡を少しだけ消すために死神が動くんです」

「そうなんですか」

「でも、そろそろ戻ると………」

そういったところで、トリアが帰ってきた。

「あっ、ちょうどよかった。

向井さんが話があるみたいですよ」

「なに? 」

トリアは真剣な向井の顔つきに、

「お腹が空いたから、

お昼がてら食堂行く? 」

そういいながら歩き出した。


食堂には誰もいなかったので、

二人はオムライスを食べながら、

静かに話し始めた。

「あの団地の事? 」

「はい。黒谷君も言っていたんですけど、

あの土地には何かあるんでしょうか。

微かですが穢れのにおいを感じます。

ただ、悪霊がいるわけでもないですし、

一見何の問題もないようにみえます」

「…………」

トリアは何も言わずに食事を続けた。


【形跡消去はされていても、

やはり犯人にとって記憶は鮮明なのかもしれない。

あの時、健次郎は向井君の顔を認識できていた。

シールド効果も微妙という事か】


トリアは向井を見た。

「十七年前というと安達君の生まれた年ですよね。

それから今まで禁止区域になっていたのに、

現在は取り外されています。

そこに健次郎が顔を見せるという事は、

何かありますよね。

特別室にいる大沢とも関係があるんですか? 」

「………う~ん、このこと冥王に聞いた? 」

「いえ、あの人ははぐらかすのが上手いので」

「なんで私に? 」

「それはここで一番古い死神だからです」

「私が年寄りだからってことか………」

トリアは食べていたスプーンで、

向井をさした。

「年寄りとは思いませんが、

まあそういうことになりますか」

「あははは。今年の特例はいい人材が多いなぁ~

まあ、詳しいことはいずれ冥王が話すと思うから、

軽くだけ教えてあげる」

トリアは笑うと向井に顔を近づけ話し始めた。

「十七年前にあった大災害で、

あの土地は穢れを多く請け負っているんだよね。

中央の土地で都心から少し奥にあって、

あの災害を鎮めるのにちょうどいい土地と言われてたの」

トリアはそういって再び食べ始めた。

「この前、赤姫に会ったでしょ。

あの土地は赤姫の領土の一つで、

昔は祠もあったらしいけど、

いつの間にか破壊されてて、

その事でも赤姫はご立腹という訳なのよ」

「安達君はそれに関係してるんですか? 」

「………鋭いね~冥王から何を聞いた? 」

「なにも。ただ、安達君の出自は俺達と少し違うと。

派遣課と保護課は行動を共にすることもあるので、

面倒を見てほしいと言われました」

「なるほど………詳細は話していないわけだ。

きっと、

今はあまり情報を与えたくないんじゃないかな。

向井君の判断力を見ているんだと思うよ。

特例の仕事は複雑だから、

これから少しずつだよ。

先は長いんだからさ」

トリアはそういうと微笑んだ。
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