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第三部
神祠の破壊
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翌日―――
向井に付き合って、
トリアも一緒に団地へ向かった。
「トリアさんは一緒に来なくてもいいんですよ」
「私も少し気になるからさ」
トリアはそういうと団地の入り口に入った。
団地は少ないながらも緑があり、
買い物、交通の不便さを除けば、
住む環境としては落ち着きがあっていい。
二人が穢れを感じる場所を辿っていると、
そこに赤姫が佇んでいた。
「あれ? 赤姫」
トリアが声をかけた。
「ここで何してるの? 」
赤姫は怒りの顔で振り向いた。
「前にも言ったであろう。
ここは私の領域じゃ」
向井は気の流れを感じて、
赤姫の足元を見た。
「この場所に穢れが吸い込まれていたんですね。
ここが神祠のあった場所ですか? 」
向井が赤姫に顔を向けると、
「いい男はほんに眼福じゃ」
赤姫が向井に触れようとするのを、
トリアが止めた。
「触れるな!!
向井君も気安く赤姫に近づくんじゃないの!
生気を吸い取られるよ」
「えっ? えっ? 」
あわててそばを離れた。
「何を驚くことがある。お前は死人だろう。
生気を取られたところで死にはせぬ」
「あ………そうでした。俺、死人でした」
「あのね~そういう問題じゃないの。
特例は半死人なの。
生気を抜かれると疲れて動けなくなるし、
浦島太郎みたいになるよ」
「赤姫のそばにいると、
おじいさんになってしまうんですか? 」
向井が驚いていると、
「私を化け物のようにいうな。私は神ぞ」
赤姫は怒るというよりあきれ顔で二人を見た。
「お前はよくここが祠だと分かったな」
赤姫は感心する様子で向井に言った。
「この土地はどこも綺麗に浄化されているので、
穢れがあるのに感じられないんです。
で、負の流れを追っていたら、
そこに吸い込まれていったので」
「ふん………冥王もいい特例を手に入れたもんだ。
ここは過去に虐殺が行われた場所だ」
赤姫は気に食わないという顔をした。
「私の神祠を破壊しておきながら、
不浄をこの土地にばらまきおった。
私の領土じゃ。
守らねばならん。
だから穢れを取り除いてやっているのよ」
「だったらついでに、
少しだけでも願いを聞き入れてやれば、
十七年後にこんな問題も起こらなかった。
おかげで無意味な血が流れた」
トリアの言葉に、
「その様な不埒者の願いを、
何故叶えねばならん。
十七年鎮めていたのは他の神じゃ。
私ではない。
あいつらは人間に甘すぎる」
「中央の穢れなんだから、
他の土地の地域神ではおさえきれないでしょう。
天邪鬼の赤姫のせいで、
不浄が繰り返されているんだよ」
「よく言うわ。
穢れのせいで私は神でありながら、
年を取り続ける。
冥王に伝えておけ。
いい加減、神頼みなどあきらめろとな」
「そうそう。神は祟るからね~」
「何を言うか!! 神ほど心の広いもんはおらんぞ」
トリアの言葉に赤姫は睨むと、
向井の視線を追った。
「お前は先程から何を見ておる」
向井は、
祠のあったとされる場所に供えられている、
折詰を見ていた。
「このお弁当は? 」
「あぁこれか。これは黒谷が私に持ってきたものじゃ」
「黒谷君が? 」
向井とトリアが同時に声を上げた。
「あいつはほんに不思議な男じゃの。
私の祠が分かっているのか、
いきなりここにきて折詰を供えていきおった」
「へえ~彼、料理ができるんだ」
驚くトリアに、
「調理師の資格があるそうですよ」
向井が説明した。
「赤姫は中身見た? 見せてよ」
「もうとっくに食べてしもうたわ」
「えっ? 食い意地のはった神だね」
トリアの言葉に怒るでもなく、
赤姫は笑いながら話し始めた。
「うまかったぞ。あいつは弁当屋を開くそうだな。
私に許可を取りに来た」
「許可? 」
向井が聞き返すと、
「赤姫折詰弁当やらを作りたいらしい」
「で、許可されたんですか? 」
「あぁ、弁当をもらったのでな。
私の名を使うのなら、
私に相応しい弁当にしろと言ってやった」
そんな話をしていると、当の黒谷がやってきた。
向井に付き合って、
トリアも一緒に団地へ向かった。
「トリアさんは一緒に来なくてもいいんですよ」
「私も少し気になるからさ」
トリアはそういうと団地の入り口に入った。
団地は少ないながらも緑があり、
買い物、交通の不便さを除けば、
住む環境としては落ち着きがあっていい。
二人が穢れを感じる場所を辿っていると、
そこに赤姫が佇んでいた。
「あれ? 赤姫」
トリアが声をかけた。
「ここで何してるの? 」
赤姫は怒りの顔で振り向いた。
「前にも言ったであろう。
ここは私の領域じゃ」
向井は気の流れを感じて、
赤姫の足元を見た。
「この場所に穢れが吸い込まれていたんですね。
ここが神祠のあった場所ですか? 」
向井が赤姫に顔を向けると、
「いい男はほんに眼福じゃ」
赤姫が向井に触れようとするのを、
トリアが止めた。
「触れるな!!
向井君も気安く赤姫に近づくんじゃないの!
生気を吸い取られるよ」
「えっ? えっ? 」
あわててそばを離れた。
「何を驚くことがある。お前は死人だろう。
生気を取られたところで死にはせぬ」
「あ………そうでした。俺、死人でした」
「あのね~そういう問題じゃないの。
特例は半死人なの。
生気を抜かれると疲れて動けなくなるし、
浦島太郎みたいになるよ」
「赤姫のそばにいると、
おじいさんになってしまうんですか? 」
向井が驚いていると、
「私を化け物のようにいうな。私は神ぞ」
赤姫は怒るというよりあきれ顔で二人を見た。
「お前はよくここが祠だと分かったな」
赤姫は感心する様子で向井に言った。
「この土地はどこも綺麗に浄化されているので、
穢れがあるのに感じられないんです。
で、負の流れを追っていたら、
そこに吸い込まれていったので」
「ふん………冥王もいい特例を手に入れたもんだ。
ここは過去に虐殺が行われた場所だ」
赤姫は気に食わないという顔をした。
「私の神祠を破壊しておきながら、
不浄をこの土地にばらまきおった。
私の領土じゃ。
守らねばならん。
だから穢れを取り除いてやっているのよ」
「だったらついでに、
少しだけでも願いを聞き入れてやれば、
十七年後にこんな問題も起こらなかった。
おかげで無意味な血が流れた」
トリアの言葉に、
「その様な不埒者の願いを、
何故叶えねばならん。
十七年鎮めていたのは他の神じゃ。
私ではない。
あいつらは人間に甘すぎる」
「中央の穢れなんだから、
他の土地の地域神ではおさえきれないでしょう。
天邪鬼の赤姫のせいで、
不浄が繰り返されているんだよ」
「よく言うわ。
穢れのせいで私は神でありながら、
年を取り続ける。
冥王に伝えておけ。
いい加減、神頼みなどあきらめろとな」
「そうそう。神は祟るからね~」
「何を言うか!! 神ほど心の広いもんはおらんぞ」
トリアの言葉に赤姫は睨むと、
向井の視線を追った。
「お前は先程から何を見ておる」
向井は、
祠のあったとされる場所に供えられている、
折詰を見ていた。
「このお弁当は? 」
「あぁこれか。これは黒谷が私に持ってきたものじゃ」
「黒谷君が? 」
向井とトリアが同時に声を上げた。
「あいつはほんに不思議な男じゃの。
私の祠が分かっているのか、
いきなりここにきて折詰を供えていきおった」
「へえ~彼、料理ができるんだ」
驚くトリアに、
「調理師の資格があるそうですよ」
向井が説明した。
「赤姫は中身見た? 見せてよ」
「もうとっくに食べてしもうたわ」
「えっ? 食い意地のはった神だね」
トリアの言葉に怒るでもなく、
赤姫は笑いながら話し始めた。
「うまかったぞ。あいつは弁当屋を開くそうだな。
私に許可を取りに来た」
「許可? 」
向井が聞き返すと、
「赤姫折詰弁当やらを作りたいらしい」
「で、許可されたんですか? 」
「あぁ、弁当をもらったのでな。
私の名を使うのなら、
私に相応しい弁当にしろと言ってやった」
そんな話をしていると、当の黒谷がやってきた。
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