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第五話 倉庫に来た理由
倉庫に来るのは、これで三度目だった。
一度目は翌日の物資確認のため。二度目は書類の整理のため。どちらも、衛兵を使えば済む用事だった。
ライゼルは自分でそれを分かっていた。
今日も理由はある。先週届いた薬草の在庫を確認する必要がある——という名目が。
扉を開けると、司が棚の整理をしていた。
「殿下」
司が顔を上げた。驚いた様子もなく、ただ目を向けた。
「薬草の在庫を確認しに来た」
「はい。こちらです」
司が棚の一画を示した。薬草の箱が整然と並んでいた。以前は雑然としていたと聞いていたが、今は種類ごとに分けられ、それぞれに手書きの札がついていた。
「……お前が整理したのか」
「どこに何があるか分からなかったので。許可が必要でしたか」
「いや」
ライゼルは棚を見た。記録の帳面も書き直されている。日付と数量が正確だった。
「他の仕事もこうしているのか」
「できる範囲では」
司は特に誇る様子もなく答えた。
しばらく沈黙があった。
「……やることがなくて、暇だったんです」
司が言った。ライゼルが顔を上げると、司は棚を見たまま続けた。
「他の召喚者は訓練場にいる。俺だけ倉庫にいる。暇で仕事を探してたら、整理するものがたくさんあって」
「不満か」
「別に。自分の魔法が何なのかも分からないんで、訓練場にいても仕方ない」
ライゼルは帳面を閉じた。
「お前の封印は、少しずつ解けている。調べているが、時間がかかる」
「分かってます」
「待てるか」
司が少し間を置いてから、ライゼルを見た。
「待てます。どうせ帰り方も分からないし」
「……そうか」
ライゼルは帳面を棚に戻した。
「この記録、続けろ。使えるものを使えないままにしておく方が、無駄だ」
司が少し目を細めた。
「それ、褒めてますか」
「記録の話だ」
「そうですか」
司は笑っていた。ライゼルは背を向けた。
倉庫を出ながら、次に来る理由を考えていた自分に、ライゼルは静かに気づいていた。
一度目は翌日の物資確認のため。二度目は書類の整理のため。どちらも、衛兵を使えば済む用事だった。
ライゼルは自分でそれを分かっていた。
今日も理由はある。先週届いた薬草の在庫を確認する必要がある——という名目が。
扉を開けると、司が棚の整理をしていた。
「殿下」
司が顔を上げた。驚いた様子もなく、ただ目を向けた。
「薬草の在庫を確認しに来た」
「はい。こちらです」
司が棚の一画を示した。薬草の箱が整然と並んでいた。以前は雑然としていたと聞いていたが、今は種類ごとに分けられ、それぞれに手書きの札がついていた。
「……お前が整理したのか」
「どこに何があるか分からなかったので。許可が必要でしたか」
「いや」
ライゼルは棚を見た。記録の帳面も書き直されている。日付と数量が正確だった。
「他の仕事もこうしているのか」
「できる範囲では」
司は特に誇る様子もなく答えた。
しばらく沈黙があった。
「……やることがなくて、暇だったんです」
司が言った。ライゼルが顔を上げると、司は棚を見たまま続けた。
「他の召喚者は訓練場にいる。俺だけ倉庫にいる。暇で仕事を探してたら、整理するものがたくさんあって」
「不満か」
「別に。自分の魔法が何なのかも分からないんで、訓練場にいても仕方ない」
ライゼルは帳面を閉じた。
「お前の封印は、少しずつ解けている。調べているが、時間がかかる」
「分かってます」
「待てるか」
司が少し間を置いてから、ライゼルを見た。
「待てます。どうせ帰り方も分からないし」
「……そうか」
ライゼルは帳面を棚に戻した。
「この記録、続けろ。使えるものを使えないままにしておく方が、無駄だ」
司が少し目を細めた。
「それ、褒めてますか」
「記録の話だ」
「そうですか」
司は笑っていた。ライゼルは背を向けた。
倉庫を出ながら、次に来る理由を考えていた自分に、ライゼルは静かに気づいていた。
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