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「……黒の騎士服!?」
男性は歩いていた足を止めおばさんの方を向き確認をしていた。
「おばさん、この子のお父さんは騎士服を着ていたのですか?」
「ああっ、そうだよ仕事の途中とかでカイトちゃんと一緒に湧き水の水を飲みに来ていたんだよ、私がカイトちゃんを見ているから水を汲んでお出でと言ったんだけどね……また女の子達に声を掛けられ動けないのかも知れないね…」
「……とにかく探して見ます」
「頼んだよ」
コップ売りのおばさんは俺達に手を振り俺と男性は湧き水が流れる場所に歩いていた。
俺はこの人が騎士服に驚いている姿を見てやっぱりこの人も騎士何だと思った。お酒を飲んでいたと言っていたから騎士の仕事が休みで彼女と別れたと言うこともあり飲んでいたのかもと思い男性の顔を見上げて見ていた。
「……気分悪くない?」
「…え?ああ、大丈夫だよ早くお父さんを探そうか、ついでにお兄ちゃん達も探そう喉が渇いたからね……カイトも早く水が飲みたいのにお父さんは何しているんだろうね」
「うん…」
戻って来ないという事は、水汲み場が多いのか、女性から声を掛けられ遅いのか、知り合いの女性に会っていたとか……あいつの事で絡んでくる事は女が多い為ため息が出ない事は無いな…
水汲み場の近くまで来ると人は多く男性の連れ2人の姿も見え男性は2人の側へ駆け寄っていた。
「おーい、2人とも何してんだよ」
「おう、アドルフ気分は良いのか?……お前おばさんの側にいた坊やを何で連れて来ているんだ?」
「ハハハ似合っているぞ子持ち」
「…からかうなよ、まだ少し気分悪いけど動いていた方が気が紛れるんだ…おばさんからこの子のお父さんを探して欲しいと言われたんだこの場所に来て居ると思うんだ。それより水は汲んだのか?お前達もこの子のお父さんと変わらないぞ」
「悪い、水を汲んで戻ろうとしたらさ…」
連れの男性が頭を手でガシガシとかき始めもう1人の男性と顔を見合わせていた。
「どうした?」
「岩場の奥を見て見ろよ…」
俺を抱っこしている男性名前はアドルフさんと連れの男性が言っていた。そのアドルフさんと俺は岩場の奥を見ていた。
岩場の奥には貴婦人と思う女性とユリウスが抱き締めている場面に遭遇してしまった。
「…なぁ、あれ隊長だよな……」
「俺達何度も見ていたがやっぱユリウス隊長だと思ったんだ」
「……」
「……」
俺を抱っこしているアドルフさんは2人に分からない様に小声で俺に聞いていた
「……カイト…もしかして隊長の……」
俺は首をコクンと頷き返事をしていた。
アドルフさん3人ともユリウスの事を知っていた為同じ城で働く騎士達だと分かった。
「…お父さんと一緒にいる人はカイトのお母さんなの…?」
「……知らない人…」
俺はこのまま嘘でも「一緒にいる人はお母さんだよ」と言えばこのまま何も無く解決出来たのに…俺は勝手に声を出していた。
「なぁ…どうする?隊長が抱き締めている女性はユリーナ様では無いよな……この事総隊長に報告しないといけないのか…?」
「でも俺達仕事休みだから……抱き着いているだけで報告するのは早いかも知れないぞ……様子を見てみないとそれに隊長は勤務中だからな、身内かもしれないし……」
アドルフさんの連れの騎士達は上に報告した方が良いのか悩んでいるようだった。
「……父様の近くまで行って貰っても良いですか」
「えっ、ああ分かった……」
アドルフさんは俺を抱っこしたままユリウスと女性の側に行って貰うお願いをした。
「え?あ、おいアドルフ何処に行くんだ?」
「まさか隊長の所へか?ば、止めろ何でその子も連れて行くんだよ」
「……隊長の子供さん何だ…」
「「!!」」
俺はアドルフさんに抱っこして貰ったままユリウスの所へ向かった…俺が側に居ることに気付くか…それとも気付かないままなのか、俺は2人の会話が気になっていた事もあった。

「…ルィーズ、ルィーズ…会いたかったよルィーズ…」
「……ユリウス様…」
2人は岩場の奥で再開を喜び合いお互い抱き締めていた
ルィーズ夫人はユリウスとの事を諦める覚悟でいた。そして時々通っていた散歩道の森の巣に行きたいと思い湧き水が流れ落ちる場所に向かいそして水飲み場でユリウスと再開しルィーズ夫人の心は揺らぎそしてユリウスが抱き着いて来たのだった。
「どうしてあの時私を置いて去って行ってしまったんだ…私の話しも聞いて欲しかったんだよ」
「……申し訳御座いませんユリウス様…あの時はユリウス様がわたくしではなくシルビア様を選ばれたのだと思い…側にいる事が辛かったのです…」
ルィーズ夫人は自分を抱き締めているユリウスの服をギュッと握り締めていた。
「済まなかった君を不安にさせてしまって…シルビアとの結婚の申し込みをしたのは君の為でもあったんだ」
「わたくしの為ですか?」
「私がシルビアと結婚をすれば君を妻に迎える事が出来ると思った事何だ…城で君と一緒に住みたいと思い私はシルビアとの結婚の約束をしたんだ…君とは体だけの関係では無いとあの時君に伝えたかった事だったんだよ」
「……ユリウス様…」
ルィーズ夫人の目から涙が流れ落ちそれを手で拭い取っていた。
「…だが、少し問題があるんだ…シルビアが私達を受け入れてくれるのかが分からないんだ…王様の話しだと他の女を城にシルビアが受け入れてくれるのかが難しいと言われたんだ」
はぁ…とユリウスはため息を吐きその姿を見ていたルィーズ夫人はクスッと笑い掛けていた
「ふふっ、シルビア様なら多分難しいと思いますわ」
「おい、おい、私達の事何だよ真剣に考えて暮れよ」
「わたくしは別にお城で生活をしなくても宜しいですわユリウス様と一緒に住める事が出来ればそれで良いのです…お城で住んだとしてもシルビア様と上手くやって行く自信が御座いません」
「……ユリーナも同じ事を言っていた……だから私と別れる事を決めたのだと…」
ユリウスはルィーズ夫人の抱き締めていた体を離し辛い顔で話しを続けていた。
「…ユリウス様は奥様の事をまだお慕いされておりますのね」
「……済まないルィーズ…私もまだユリーナと子供達の事は諦め切れないんだ…もし君さえ良ければユリーナと子供達と一緒に住める事が出来たらと思って居るんだ」
「…簡単に何でも申されます所は悪い癖で御座いますよユリウス様」
クスッとルィーズ夫人は笑いユリウスは困り顔を見せていた。
「…奥様方との生活の事は考えておきます…ですがシルビア様はどうされるのですか?」
「……暫くはこのまま城での生活は続けたいと思ってはいるが、もしこのままシルビアとの生活が無理だと思った時は婚約発表がある前に婚約破棄を伝える積もりだ」
「……もし婚約破棄をなさいますとユリウス様の御住まいがありませんわ……奥様との事も分かりませんのに…」
「その時は住める所を探せば良い事で、ルィーズの屋敷で雇って貰う事も良いかも知れないな」
「御住まいが無い方は御断りですわ」
「酷いな~っ」
お互い笑いながら一緒に住む事を語り合っていた。
「ユリウス様わたくしそろそろ戻ります森の巣の入り口にセバスチャンを待たせておりますのよ」
「分かった私が送って行くよ、あっ、そうだ…言い忘れる所だった来週からは王様の護衛を任されて会う機会が無いかも知れないんだ時々で良い、いつもの貴婦人達の集まりの場で顔だけでも見せてくれたら嬉しいな」
「あら、顔だけ見せるだけですか?」
「うっ、意地悪しないでくれ…シルビアが何処で見ているのか分からないんだ」
「あら、いつわたくしが意地悪しましたの?」
クスクスとお互い寄り添い口付けを交わしユリウスはルィーズ夫人の腰に手をやり一緒に歩き湧き水の場を後にした。
その様子を少し離れて見ていた俺とアドルフさんは2人が去った後の足元にコップが2つ落ちていた事に気が付いた。
「……僕を降ろして暮れますか…」
「……え、あ…ああ……」
アドルフさんは俺を降ろすと俺は落ちている2つのコップを拾い上げた……普通のコップが1つともう1つは小さな子供用のコップを手に持った。











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