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ウィル王子を食卓へ③

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「……なぁ、ジル様機嫌が悪いようだった気がするんだが……」
「ああっ、さっき扉が開いた時ジル様の声が聞こえたが……」
「今からジル様に食事の時間を知らせなくてはいけないが……」
三人の護衛騎士は今ジル王子が機嫌が悪い事を知り、食事の部屋へ行く時間を知らせる為一人の護衛仲間のルーセン・モロー騎士が扉の前に立ち深呼吸をすると扉にノックをした。
コンコン!
「ジル様、ルーセンです失礼致します……」
扉を開けたルーセン騎士はソファーに座りテーブルにある書類を眺め黙々と仕事をする姿にゴクン…と唾を飲んだ。
「……ジ、ジル様食事の時間で御座います」
「……」
ルーセン騎士は扉の前に立ち返事をしないジル王子をドキドキと手に汗をかきジル王子が動くのを待った。
ジル王子が機嫌が悪い時は、会話をしない方が良い事を護衛騎士三人組は知っている為、ジル王子から声を掛けてくるのを待っ事にしている。
バサッ!とテーブルの上にある書類に、手に持っていた何枚もの書類の紙を置き、眉間にシワを寄せ目を閉じているジル王子の姿をじっと見るルーセン騎士に、ジル王子が閉じていた瞼を開き座っていたソファーから腰を上げ、コッコッとゆっくり歩くジル王子はルーセン騎士に「行くぞ」と一言声を掛けジル王子は部屋を出た。
部屋を出たジル王子にブラン騎士が頭を下げ声を掛けていた。
「ジル様、わたくしは御用がありますので護衛から外れますが宜しいでしょうか」
「ああ…」
「失礼致します……」
ジル王子はブラン騎士に返事だけの声掛けで終わりスタスタと廊下を歩き出し、二人の護衛騎士がブラン騎士の肩に手を当て「後で会おう」と声を掛け、先を歩くジル王子の後を追い二人の護衛騎士はジル王子と一緒に食事の部屋へと向かった。
機嫌が良くないジル王子は、ブラン騎士が用がある事に問い掛ける事が無い為話しをする事が無かった。
「……ジル様から何も聞かれなくて良かったのか、ウィル王子を食卓へ迎え更に機嫌が悪く成った場合、俺はどうすれば良いのか……」
肩を落とすブラン騎士は、ジル王子の部屋の前に立ち離れて見えるシェル王子の護衛騎士ロベール騎士とエリック騎士が、部屋の前から離れる姿を待ち一人色々と考え部屋の前を護衛続けていた。

それぞれ食事の部屋へと向かう時、一人の女性がメイド達を連れて歩き、その前を歩く女性もメイド達を連れそして後ろから歩く女性が声を掛けていた。
「御早う御座いますサーラ様」
「あらっ、御早う御座いますジャンヌ様」
王様のお妃である王妃のサーラと第三ジャンヌ妃が同じ廊下を歩き食事の部屋へと向かっていた。
「サーラ様昨夜は王様が御見えに成りましたようですわね」
「あらっ、知って居ましたの?」
「ええっ、王様が直接御話しをしておりましたので…」
「ふふっ、では王様は貴女の所で腰を落ち着かれましたの?」
「いいえ、わたくし王様を追い出しまして王様と口論に成りましたの」
「まあ、どうしたのですジャンヌ様」
二人の妃達は廊下の真ん中で立ち止まり、ジャンヌ妃が王様と息子のカイザック王子との事をサーラ王妃に話しをしていた。
「まあ、そんな事が在りましたの?」
「ええっ、久しぶりに部屋に来られましたと思うとカイ王子とわたくしを勘違いで驚きましたわ」
「側室のロラ様とヤスミン様にともに出来ません事で何故わたくし達が王様のご機嫌を取る事に成りましょう」
二人の妃達が王様の会話をしている所を、後ろからメイド達を連れたエリーゼ妃が二人の妃達を見てブンブンと大きく手を振る姿に気付き、パタパタとドレスの両端を上げて廊下を走るエリーゼ妃に、後ろのメイド達は「エリーゼ様廊下は走る所では在りません」と注意を受け二人の妃達はクスクスと笑っていた。
「御早う御座います御二人とも何を御話ししていましたの?」
「うふふ、朝から元気が良いですわねエリーゼ様」
「余り廊下を走りますと本当に転びますわよエリーゼ」
「ふふふ、二人に御報告が在るのです」
「まぁ、何ですの?」
「何か良い事でも?」
サーラ王妃とジャンヌ妃が目の前で笑顔がたえないエリーゼ妃をじっと見ていた。
「実は昨夜王様が御見えに成り、わたくしの所で腰を落ち着かれましたのよ」
「「えっ!?」」
サーラ王妃とジャンヌ妃はエリーゼ妃の部屋で王様が寝泊まりをしたと聞き驚いていた。
「…そ、それは本当の事なの?エリーゼ」
「ええっ、本当よ。でも真夜中に部屋を出られたわ」
「そうなの……」
サーラ王妃とジャンヌ妃はお互い驚いた顔を見せ「ふふっ、」と笑顔を見せていた。
「良かったわね、エリーゼ」
「わたくし達が王様を拒みエリーゼ様の所で腰を落ち着かれる何て思いもしませんでしたわ……嫌では御座いませんか?最後に御自分の元へ来られました事に……」
「いいえ、一年も待ちましたから王様は、わたくしの元へ来る事をお忘れに成って居ないと分かりましただけでも充分ですわ」
笑顔を見せるエリーゼ妃に、サーラ王妃とジャンヌ妃は何も話す事は無いと、三人の妃達はメイドを連れ食事の部屋へと向かった。








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