狼の憂鬱

うしお

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還ってきた愛しき人

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オリバーは、優しく髪を撫でられている感触で、目を覚ました。
枕から、濃すぎるほどのクラウスの匂いがして、胸いっぱいに吸い込むと尻穴がきゅんきゅんと疼いた。
ばさりばさりと自然に尻尾がゆれ、すっかり日課になってしまった尻穴いじりをしようと手が動く。

「ん……っ、くらぅう……っ」

「どうした、オリバー?」

くにくにと尻穴をもみながら、すんすんと匂いを嗅ぐと体は素直にほどけていく。
ひくひくとひくつきはじめた尻穴に、陰茎からこぼれた先走りを塗り込めようとしたところで、オリバーはようやくそれに気が付いた。

「クラウスっ?!」

がばっと一気に起き上がれば、優しく微笑むクラウスが、びっくりしているオリバーのことを見つめていた。
長い夢の果てに見た、あの若くて美しいクラウスがそこにいた。

「おはよう、オリバー。この寝坊助め。まだ寝ぼけているのか?」

ぴんっと立った耳の間を、わしわしと撫でる懐かしい手の感触に、オリバーの目からは涙がこぼれた。
あれは、夢ではなかったのだ、と。
クラウスは、本当にオリバーのところへ戻ってきてくれたのだ。
触ったら消えてしまうのではないかと、震えながら手をのばすオリバーを、クラウスは引き寄せて抱き締めた。

「クラウっ、クラウっ、おかえりっ、おかえりぃいいっ」

「ただいま、オリバー」

オリバーは少しだけ小さなクラウスをぎゅうぎゅうと抱き締めて、胸いっぱいに匂いを吸い込んだ。
それは間違いなくクラウスの匂いで、ぶんぶんとゆれるオリバーの尻尾は、あまりの嬉しさに止められそうにない。

「オリバー、そんなに尻尾を振っていたら、千切れてしまうぞ?」

「どんなに振ったって、オレの尻尾が千切れるわけないっ」

「そうか、それならいい。こんなに可愛いオリバーの尻尾がなくなったら、もったいないからな」

「……クラウスが、好きなら、触ってもいいよ」

「ふふ、いつもなら、尻尾を触られるとすごく嫌がるのにどうしたんだ?」

「……か、かえってきた、おいわいだから、いい」

「そうか。それなら、せっかくだから触らせてもらおうか」

ぺしょりと耳を倒しながら、尻尾を差し出すオリバーにクラウスは微笑みながら手をのばす。
耳の付け根をかしかしと撫でられ、しがみついたクラウスの腕の中で、オリバーの口からは、ほうっと熱い吐息がこぼれ落ちた。

「しっぽ、さわらないの……?」

「尻尾の前に、優しいオリバーを褒めておかないと、な? ありがとう、オリバー。私の帰還を望んでくれて」

「……んっ、もう、きえちゃ、だめだよ……?」

「ああ、もう二度と、オリバーをひとりにはしない。あんな風に泣かせるなんて、一度で十分だ」

「……なら、いい」

「ありがとう、オリバー」

クラウスに触られているだけで、オリバーの体は熱く潤んでいくようだった。
頭を撫でていた手が、尻尾へと移動する。
ふさふさの尻尾は、オリバーにとって自慢でもあり、隠しておきたい弱点でもある。
それでも、クラウスのためなら、差し出すことをためらったりはしない。
変に我慢して、二度と会えなくなる方が、何倍も何十倍もこわいことだから。

「あっ、あ、あぅうっ、くら、くらうぅ……っ」

とはいえ、ただでさえ敏感な尻尾は、その根元を触られると腰がゆらめいて止まらなくなる。
もちろん、すぐ近くにある尻穴も、同じくらい疼きはじめた。
また疼きはじめた尻穴に、オリバーの意識は引きずられていく。
クラウスの大きな陰茎がしまわれているそこに、おずおずと触れようとしたオリバーの手がすくいあげられる。

「ああ、オリバー。さすがに、そろそろ食事をとろうか。もう丸二日、キミは何も口にしていないから、心配だよ」

「まる、ふつか……? え、あれ、ここって」

見渡せば、そこは鬱蒼とした森の中で、石の塊には幾重にも布が重ねられていた。
まるで、普通のベッドのようで、驚くしかない。
いつの間に、こんなものを用意したのだろうか?

「『北の祭壇』だよ。もっとも、もう二度とこれは発動はしないだろうから、元『北の祭壇』と呼ぶべきだろうけどね。あの儀式の日から、もうずいぶんと経っているんだよ。魂を繋いでいるとはいえ、さすがにいつまでも私の精気だけでは肉体が衰えてしまうから、キミにはしっかりと食事もしてもらわないとな」

「……せいきって、何だ?」

「そう、だな、あれは生命の欠片、といえばいいだろうか。生き物が生きるために必要な力のことだ」

「いのちのかけらっ!? クラウスっ、そんな大事なもの、オレにくれるなんて、大丈夫なのかよッ」

「問題ない。こうすれば、すぐに補充できるからな」

思わず胸ぐらを掴んでいたオリバーの手を、クラウスは優しく引き剥がして口付ける。
ぽかんと口を開けたオリバーを引き寄せ、そのまま唇を塞ぐと、ねっとりと舌を絡めはじめた。

「くら、う……ん……っ、ふ……ぅ、んんっ、ぁ……っ」

すぐに瞳を閉じたオリバーは、ふるふるとまつげを震わせながら、与えられる口付けにすっかり夢中になっていく。
オリバーの指が、すがるようにクラウスの指に絡められ、優しく握られる。
だが、優しく責め立てるクラウスの舌は、その指ほどに優しくはない。
けれど、それが甘く蕩けた吐息さえ食べられてしまうような、貪られるような口付けであっても、オリバーはうっとりしながらクラウスに身を委ねるだけだ。

「ああ、オリバーは美味しすぎていけないな。ついつい食べ過ぎてしまいそうになる」

「……ぁ、くぁ、……ぅ、もっ、と……ぉ」

ゆらゆらとゆるく尻尾を振りながら尻を振るオリバーは、無意識にクラウスの雄を煽り立ててくる。

「悪い子だな、オリバーは」

「ごめん、なさいっ、で、でも、くらう、ちゃんとごはんもたべるから、おりばーのおまんこに、くらうのちんこ、たべさせて……っ、おまんこ、むずむずするのぉ、ちんこでいっぱいにされたいよぉ」

クラウスとの口付けで、すっかり尻穴が疼きはじめてしまったオリバーは、もじもじと内股を擦り合わせながらクラウスに陰茎をねだることしかできなかった。
何故なら、両手を塞がれたままのオリバーが自由にできるのは、その唇だけだったからだ。

「……わかった。しっかり、ごはんも食べるんだぞ?」

少しだけ何かを考えていたクラウスが頷いてくれたことに、オリバーはすっかり浮かれていた。
自分が、クラウスに何をねだってしまったのか、わからないほどに。
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