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その気遣いは斜め上
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「なんで……? なんで、そんなにしてまで我慢する必要があるんだよ。俺はもっとお前といちゃいちゃしたいし、セックスだってしたいのに……!」
「オレだって! ……オレだってなぁ、お前ともっといちゃいちゃしてーし、セックスもしてーよ」
俺の頭の中は、疑問でいっぱいだ。
ぎゅうぎゅう抱きついていた体が離れて、俺の顔を見つめるアイツの目は真剣だ。
嘘をついているようには見えないし、本当にいつも必死に我慢してるんだってことが伝わってくる。
「じゃあ……!」
「でもよ、お前、仕事で出世したんだろ。小さいけどプロジェクトのリーダーになったって言ってたよな。部下もできたし、これからはちゃんとしなきゃって。だから、オレは、お前のジャマにならないように、だな」
「え、それじゃ、全部、俺のため、だったのか……?」
「そうだよ。お前のためにできることが、セックスしたいのを我慢するだけなんて、ほんっと情けない話なんだけどさ。……まだ学生のオレには、それくらいのことしかしてやれないからな」
大学を卒業してすぐに就職した俺と違って、コイツはやりたいことのために大学院へと進んだ。
しかも、途中で一年間の留学を挟んだから、休学したこともあって、まだ身分的には学生のままなのだ。
まさかそれをこんな風に気にしているとは思わなくて、思わず目が丸くなる。
え、俺の彼氏、めちゃくちゃ可愛くない?
「そんなことない。いつだって、俺はお前のおかげで救われてるよ」
今度は、うつむいてしまったアイツの体を俺が強く抱きしめる番だ。
職場でどんなに嫌なことがあっても、家に帰ればアイツに会えると思えば、俺はいつだって頑張ってこれた。
挫けそうになった時も、コイツに情けない顔は見せられない、と意地を張り通して切り抜けることができたし、頑張ればボーナスでうまいものを食べさせてあげられる、と思えば、僻地への出張だって耐えられた。
コイツと付き合えたことは、俺の人生にとってプラスなことばかりで、マイナスになったことなんてひとつもない。
むしろ、コイツに出会えたあの日から、俺の人生はバラ色に輝いている。
俺が就職して、大学から少し遠いところに引っ越さないといけなくなった時も、嫌な顔ひとつせず、一緒に物件を回ってくれることに感謝した。
俺が通勤しやすい駅なのはもちろん、男がふたりで暮らしても、あまり目立たないような立地のマンションを選び、一緒に引っ越してくれた。
そもそも、同棲を解除するって方法もあったはずなのに、コイツはそれを候補に入れることさえしないでくれたのだ。
いつだって、コイツは俺のために自分のことを我慢してしまう人間だったのに、俺はいつからそれを忘れていたのか。
「いつもありがとう。愛してるよ、泰生」
「オレも、一道を愛してる。……でも、キスはダメだから」
うつむいたままのつむじにキスをして、そのまま唇にもと思ったが、両手でばしっとガードされてしまった。
「……なんで、ダメなの。そういえば、最近キスもあまりしないよね」
口を塞いでいる手をどけ、アイツの顔をじとっと見つめたら、目に見えるくらいわかりやすく狼狽えた。
そういえば、こうやって真っ正面からコイツの顔を見ること自体、久しぶりな気がしてくる。
「そ、そりゃ、キスをしたら、や、やりたくなるからに決まってるだろ! お前の顔を間近で見たら、絶対我慢できなくなるってわかってるからやらないんだよ!」
「……なにそれ、初耳なんだけど」
見つめたところから、花が咲くみたいにアイツが赤く色付いていく。
顔どころか、耳や首まで真っ赤になって、俺の手から必死に逃げようとしているコイツが可愛くて仕方がない。
「オレだって! ……オレだってなぁ、お前ともっといちゃいちゃしてーし、セックスもしてーよ」
俺の頭の中は、疑問でいっぱいだ。
ぎゅうぎゅう抱きついていた体が離れて、俺の顔を見つめるアイツの目は真剣だ。
嘘をついているようには見えないし、本当にいつも必死に我慢してるんだってことが伝わってくる。
「じゃあ……!」
「でもよ、お前、仕事で出世したんだろ。小さいけどプロジェクトのリーダーになったって言ってたよな。部下もできたし、これからはちゃんとしなきゃって。だから、オレは、お前のジャマにならないように、だな」
「え、それじゃ、全部、俺のため、だったのか……?」
「そうだよ。お前のためにできることが、セックスしたいのを我慢するだけなんて、ほんっと情けない話なんだけどさ。……まだ学生のオレには、それくらいのことしかしてやれないからな」
大学を卒業してすぐに就職した俺と違って、コイツはやりたいことのために大学院へと進んだ。
しかも、途中で一年間の留学を挟んだから、休学したこともあって、まだ身分的には学生のままなのだ。
まさかそれをこんな風に気にしているとは思わなくて、思わず目が丸くなる。
え、俺の彼氏、めちゃくちゃ可愛くない?
「そんなことない。いつだって、俺はお前のおかげで救われてるよ」
今度は、うつむいてしまったアイツの体を俺が強く抱きしめる番だ。
職場でどんなに嫌なことがあっても、家に帰ればアイツに会えると思えば、俺はいつだって頑張ってこれた。
挫けそうになった時も、コイツに情けない顔は見せられない、と意地を張り通して切り抜けることができたし、頑張ればボーナスでうまいものを食べさせてあげられる、と思えば、僻地への出張だって耐えられた。
コイツと付き合えたことは、俺の人生にとってプラスなことばかりで、マイナスになったことなんてひとつもない。
むしろ、コイツに出会えたあの日から、俺の人生はバラ色に輝いている。
俺が就職して、大学から少し遠いところに引っ越さないといけなくなった時も、嫌な顔ひとつせず、一緒に物件を回ってくれることに感謝した。
俺が通勤しやすい駅なのはもちろん、男がふたりで暮らしても、あまり目立たないような立地のマンションを選び、一緒に引っ越してくれた。
そもそも、同棲を解除するって方法もあったはずなのに、コイツはそれを候補に入れることさえしないでくれたのだ。
いつだって、コイツは俺のために自分のことを我慢してしまう人間だったのに、俺はいつからそれを忘れていたのか。
「いつもありがとう。愛してるよ、泰生」
「オレも、一道を愛してる。……でも、キスはダメだから」
うつむいたままのつむじにキスをして、そのまま唇にもと思ったが、両手でばしっとガードされてしまった。
「……なんで、ダメなの。そういえば、最近キスもあまりしないよね」
口を塞いでいる手をどけ、アイツの顔をじとっと見つめたら、目に見えるくらいわかりやすく狼狽えた。
そういえば、こうやって真っ正面からコイツの顔を見ること自体、久しぶりな気がしてくる。
「そ、そりゃ、キスをしたら、や、やりたくなるからに決まってるだろ! お前の顔を間近で見たら、絶対我慢できなくなるってわかってるからやらないんだよ!」
「……なにそれ、初耳なんだけど」
見つめたところから、花が咲くみたいにアイツが赤く色付いていく。
顔どころか、耳や首まで真っ赤になって、俺の手から必死に逃げようとしているコイツが可愛くて仕方がない。
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