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14、夢幻セックス

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「……っ、オヤジ、オヤジってば」

ゆさゆさと体を揺さぶられている感覚で、目を覚ました。
なんだが、全身がだるくてたまらない。
まるで、何か激しい運動でもしたあとのように。

「…………ぁ、なん、だ……?」

「なんだ、じゃないよ。オヤジ、もう昼なんだけど。まだ起きないのか?」

目の前には、息子のちょっとあきれた顔があった。
だらしなく開いていた口を閉じ、よだれを手の甲で拭いながら、ゆっくりと体を起こせば、何故かそこは仏間だった。
そして、どういうわけだか、俺は客用の布団で寝ていた。

「オヤジ、昨日ペース早かっただろ。あのまま飲みすぎたんだよ。飲んでる最中にいきなり寝るから、酒の瓶は倒れて布団はびしょびしょになったし、オヤジも酒まみれになって大変だったんだから。おれがオヤジを着替えさせて、こっちの部屋に運び込んだんだからな」

昨日は、隣の部屋で息子と飲んでいたはずなのに、と首を傾げると、息子が昨日の俺の失態を教えてくれた。
聞くところによれば、やけに早いペースで酒を飲み続けていた俺は、飲んでいる最中に突然眠ってしまったらしい。
その際、しっかり敷いておいた布団に倒れ込んだらしいのだが、テーブルの上にあった酒瓶をいくつも道連れにしたらしく、俺の服と敷いておいた布団がその犠牲になったそうだ。
息子は、大慌てで酒まみれになった俺を抱き起こして着替えさせ、仏間に敷いた客用の布団に寝かせ直してくれたのだという。
風邪を引いたらどうするんだとお小言までいただいてしまった。
どうやら俺は、そんなことにも気付かずのんきに昼まで眠りこけていたようだ。
ちなみに、憐れな被害者となった布団は、すでにクリーニング業者を手配して預けてあるとのことで、綺麗になったらちゃんと家まで持ってきてくれるのだとか。
世の中、ずいぶんと便利になったものだ。

「おぅ、そいつは何から何まで任せちまって悪かったな。まさか、酒の席でお前に迷惑をかける日がくるとはなぁ……やっぱり、歳には勝てねぇってことか」

「まっ、まあ、おれは業者に頼んだだけだからさ。別にたいしたことしてないから、オヤジは気にしなくていいよ。それより、昨日は体を蒸しタオルで拭くだけは拭いたんだけど、まだお酒くさいと思うからさ、シャワーでも浴びてさっぱりしてきなよ。昼ごはんは、おれが適当に作っとくから」

「そうか。本当に、何から何までやらせて悪いな。お前も、家に休みに来てるってのによ」

「別に、そんなたいしたことはしてないし。オヤジも休みなのに、色々してくれてるだろ。そこはお互い様なんだから、気にしなくていいよ」

「……こんないい息子に、迷惑かけちまうとはなぁ」

「気にしすぎだよ。それよりほら、早くお風呂行ってきなよ。ちゃんと沸かしてあるから、しっかりつかってきていいからさ」

「おう、そんじゃあ、お言葉に甘えて、ちょっくら風呂に行ってくるわ」

「ゆっくりどうぞ」

正月も三が日を過ぎれば、すぐにいつもの日常が戻ってくる。
息子は昼メシを食ってる時に、明日から仕事だから夕方には帰ると言った。
土日の関係で、いつもよりはのんびり出来ていたようだが、まさか最後の最後にこんなことになってしまって申し訳ないと思う。

「オヤジ、悪いけど、洗濯物は自分で取り込んでくれよ」

さて、そろそろ新幹線の時間だからと帰り支度をしはじめた息子は、妻のようにあれこれと口うるさくいいはじめた。
なんだか、鼻の奥がつんとしてしまう。
立派に育ってくれた自慢の息子だ。

「わぁってるよ。それより、せっかく帰ってきたのに、最後にとんでもねぇ迷惑かけちまって悪いなぁ」

「そんなもう終わったことなんだから、気にしなくていいんだって。おれも、オヤジのおかげですっきりさせてもらったし、いい正月休みだったよ」

ちょっと照れくさそうに笑う息子の顔を見て、ああ、少しは役に立てたのだと思った。
赤く泣き腫らしたような目元は、やはり少し痛々しく見えたが、どこか吹っ切れたような笑顔に陰りは見えなかった。

「そうか。まあ、いつでも帰ってこい。ここは、お前の家なんだから」

「うん、ありがとう。また、お盆休みにでも帰ってくるよ。お土産は、お酒にしておくけど、今度は飲みすぎないようにしてくれよ」

「わかってる。もう、迷惑はかけねぇ。ちゃんと気を付けるよ」

からかうような息子に、むすっとして言い返せば、からからと笑う。
やっぱり、こいつは笑ってる方が何倍も男前だな。

「ほら、駅まで送るぞ。荷物は、後ろに乗せろよ」

「……迷惑をかけてるのは、おれの方、なんだけどね」

大きなスーツケースを持つ息子に声をかけて、車のキーを手に外へ出た。
だから、俺は、息子が何か小さく呟いたのには気づかなかった。

なんだか、すぐに別れるのが惜しくて、駅のホームまでついていって見送った。
照れくさそうに手を振る息子が乗った新幹線は、みるみるスピードをあげ、すぐに見えなくなる。

「……行っちまったな」

ざわめきの中に、ぽつんと俺の呟きだけが響いた気がした。

その日、一人になった俺は夢を見た。
淫らに股を開き、娼婦のように俺を誘う、息子の夢を。
現実には有り得ない、頭のおかしな夢だ。
だが、夢の中の俺は、ケダモノのようにチンポを滾らせ、それを見ていた。
いますぐにでも襲いかかりそうな目で。


そして、夢の中の息子に指一本触れることも出来ないまま、俺は目覚めた。

「……どうなって、るんだ。こんなの、有り得ない、だろ」

俺のチンポは、朝勃ちするだけでなく、パンツの中にたっぷりと射精していた。
何十年ぶりの夢精だった。

その日から、俺は悪魔にでも憑かれたように、毎晩淫らな夢を見続けた。
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