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帰還
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デューク様から帰還の手紙が届いたのは、出発してから一年半に差し掛かる頃だった。
ラミレス男爵家との縁も切れ、伯爵家内も随分と様変わりした。
古かった食堂のテーブルや器具も一新し、庭師を雇って庭の手入れも行うようにした。嫁いで来た日のことを思い出してしまう。
帰還の日、僕は屋敷の入り口に向かって駆けていた。
馬のいななきが耳に届く。騎士団の馬車が屋敷の前へと止まるのが見えた。
その馬車からデューク様が降りてくるのが見えて、思わず目尻が熱くなった。
「デューク様!」
はやく声を聞きたくて名前を叫ぶと、こちらに気がついた彼も駆け寄ってきてくれた。それから思い切り抱きしめられる。
デューク様の香りが僕の全身を包み込んでくれる。満たされた心が喜びに震えていた。とても長い期間にも思えた。デューク様たちの無事を毎日願いながら祈りを捧げていた。
だから無事に帰ってきてくれて本当に嬉しい。
「はぁ……まじで会いたかった」
吐き出すように伝えられた言葉に涙が溢れてきそうだった。伯爵家で一人ぼっちのときは寂しかったけれど、彼も同じ気持ちだったと知れて嬉しかったんだ。
「僕もです」
本当に本当に会いたかった。
こうやって抱きしめあっていると心がちゃんと通じ合っていることが実感できる。デューク様の隣に立つために努力してきた。
こうやって再会すると、さらに努力し続けていきたいと思う。
「家のこと任せきりだったよな。大変だっただろう」
「確かにまだ不慣れな部分も多くて悩むこともありました。でもデューク様も頑張っているから僕もできることを頑張りたいと思えましたし、頑張れたと思います」
「そっか。アルビーはすごいな」
わしゃわしゃと髪を撫でられて笑みがこぼれた。
体を離すと、手を取られて心臓が跳ねる。そのまま屋敷中へ入ると、真っ直ぐに部屋へと向かう。
「華やかになったな。まじで別の場所に来たみたいだ」
屋敷の中を確認しながら廊下を進んでいく。感心するようなため息をこぼしたデューク様の顔を覗き見た。
「どうでしょうか?」
「気に入った。アルビーに任せてよかったよ」
「っ、えへへ、嬉しいです」
その言葉をもらえただけで頑張ったことすべてが報われた気がした。
繋いでいる手が温かい。ずっとこの熱を感じていたいと思う。心が彼のすべてを求めている気がした。
部屋につくとデューク様が先にソファーに腰掛けた。それから彼の膝の上に座るように促された。高揚感と羞恥心が胸に広がっていく。ドキドキと高鳴る心音を感じながらデューク様の膝に座る。
「顔真っ赤」
「だって……恥ずかしくて……それに久しぶりに会えたから……」
熱が高まっていく。自分から香りが溢れてきていることがわかった。
大好きが心から滲み出で、デューク様に沢山伝わってほしい。そうしたらきっと再会できたことを僕がどれだけ喜んでいるのかをもっともっと伝えられるから。
「俺も心臓飛び出そう。わかる?」
胸元に引き寄せられて、頬が当たる。僕が覚えているよりも早くなっている鼓動に胸がキュンと締め付けられた。
可愛くて格好良くて、僕の愛おしい旦那様。彼に出会えてこうやって一緒に過ごす時間が本当に幸福なことだって思えるんだ。
「本当だ……。デューク様の鼓動が伝わってきます。ふふっ、こうしているとデューク様をすごく近くに感じられます」
「ふっ、可愛すぎ。まだ仕事があって傍にはいられないけど、また夜に来るからそれまで待っててくれるか?」
「はい。ドキドキしながら待ってます」
顔を上げるとデューク様が頬を撫でてくれた。くすぐったいような気持ちになる。
デューク様と過ごす夜が楽しみだけどほんの少し緊張してしまう。きっと心臓の音はデューク様に聞こえている。それが僕達の思いを高めてくれている気がした。
ラミレス男爵家との縁も切れ、伯爵家内も随分と様変わりした。
古かった食堂のテーブルや器具も一新し、庭師を雇って庭の手入れも行うようにした。嫁いで来た日のことを思い出してしまう。
帰還の日、僕は屋敷の入り口に向かって駆けていた。
馬のいななきが耳に届く。騎士団の馬車が屋敷の前へと止まるのが見えた。
その馬車からデューク様が降りてくるのが見えて、思わず目尻が熱くなった。
「デューク様!」
はやく声を聞きたくて名前を叫ぶと、こちらに気がついた彼も駆け寄ってきてくれた。それから思い切り抱きしめられる。
デューク様の香りが僕の全身を包み込んでくれる。満たされた心が喜びに震えていた。とても長い期間にも思えた。デューク様たちの無事を毎日願いながら祈りを捧げていた。
だから無事に帰ってきてくれて本当に嬉しい。
「はぁ……まじで会いたかった」
吐き出すように伝えられた言葉に涙が溢れてきそうだった。伯爵家で一人ぼっちのときは寂しかったけれど、彼も同じ気持ちだったと知れて嬉しかったんだ。
「僕もです」
本当に本当に会いたかった。
こうやって抱きしめあっていると心がちゃんと通じ合っていることが実感できる。デューク様の隣に立つために努力してきた。
こうやって再会すると、さらに努力し続けていきたいと思う。
「家のこと任せきりだったよな。大変だっただろう」
「確かにまだ不慣れな部分も多くて悩むこともありました。でもデューク様も頑張っているから僕もできることを頑張りたいと思えましたし、頑張れたと思います」
「そっか。アルビーはすごいな」
わしゃわしゃと髪を撫でられて笑みがこぼれた。
体を離すと、手を取られて心臓が跳ねる。そのまま屋敷中へ入ると、真っ直ぐに部屋へと向かう。
「華やかになったな。まじで別の場所に来たみたいだ」
屋敷の中を確認しながら廊下を進んでいく。感心するようなため息をこぼしたデューク様の顔を覗き見た。
「どうでしょうか?」
「気に入った。アルビーに任せてよかったよ」
「っ、えへへ、嬉しいです」
その言葉をもらえただけで頑張ったことすべてが報われた気がした。
繋いでいる手が温かい。ずっとこの熱を感じていたいと思う。心が彼のすべてを求めている気がした。
部屋につくとデューク様が先にソファーに腰掛けた。それから彼の膝の上に座るように促された。高揚感と羞恥心が胸に広がっていく。ドキドキと高鳴る心音を感じながらデューク様の膝に座る。
「顔真っ赤」
「だって……恥ずかしくて……それに久しぶりに会えたから……」
熱が高まっていく。自分から香りが溢れてきていることがわかった。
大好きが心から滲み出で、デューク様に沢山伝わってほしい。そうしたらきっと再会できたことを僕がどれだけ喜んでいるのかをもっともっと伝えられるから。
「俺も心臓飛び出そう。わかる?」
胸元に引き寄せられて、頬が当たる。僕が覚えているよりも早くなっている鼓動に胸がキュンと締め付けられた。
可愛くて格好良くて、僕の愛おしい旦那様。彼に出会えてこうやって一緒に過ごす時間が本当に幸福なことだって思えるんだ。
「本当だ……。デューク様の鼓動が伝わってきます。ふふっ、こうしているとデューク様をすごく近くに感じられます」
「ふっ、可愛すぎ。まだ仕事があって傍にはいられないけど、また夜に来るからそれまで待っててくれるか?」
「はい。ドキドキしながら待ってます」
顔を上げるとデューク様が頬を撫でてくれた。くすぐったいような気持ちになる。
デューク様と過ごす夜が楽しみだけどほんの少し緊張してしまう。きっと心臓の音はデューク様に聞こえている。それが僕達の思いを高めてくれている気がした。
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