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思いがけない依頼
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スイートバイオレットという可愛らしい小さな紫色の花。その花の汁を寝ている相手のまぶたに垂らし、目を覚ますのを待つ。目を開けたその人は、最初に見た人物を恋慕うようになる。まるで媚薬とも似た効果を持つこの呪いは、義母から教えてもらったものだった。
***
「げほっ、うぇっ」
薬草の置かれた棚の目の前に屈んで、口からいくつもの花弁を吐き出す。今日もいつも通り薬屋の仕事をしながら、のんびりとした時間を過ごす予定だった。けれど、先程訪ねてきたお客様の存在によって、平凡な日常が一瞬で乱されてしまった。
苦しさに眉を寄せながら花を口から出し切る。スイートバイオレットが床に散らばるさまを見ていると、悲しさが心を満たしていく気がした。
花患いになったのは十二歳のとき。衝撃的で強い恋心を感じることで発症し、口から花を吐きだすという特徴を持つ奇病だ。時間が経つと心臓まで侵されて花のように枯れて亡くなってしまう。花を吐いたのはこれで二回目のことだ。患った日から九年が経っている。今までは症状も落ち着いていたから油断していた。
花を拾い上げて紐で括ると、風通しのいい場所に吊るしておく。こうやってドライフラワーにして瓶に詰めておくのは、趣味のようなものだ。そうすれば、この辛さも想いも枯れて消えることなんてないと思えるから。
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「げほっ、うぇっ」
薬草の置かれた棚の目の前に屈んで、口からいくつもの花弁を吐き出す。今日もいつも通り薬屋の仕事をしながら、のんびりとした時間を過ごす予定だった。けれど、先程訪ねてきたお客様の存在によって、平凡な日常が一瞬で乱されてしまった。
苦しさに眉を寄せながら花を口から出し切る。スイートバイオレットが床に散らばるさまを見ていると、悲しさが心を満たしていく気がした。
花患いになったのは十二歳のとき。衝撃的で強い恋心を感じることで発症し、口から花を吐きだすという特徴を持つ奇病だ。時間が経つと心臓まで侵されて花のように枯れて亡くなってしまう。花を吐いたのはこれで二回目のことだ。患った日から九年が経っている。今までは症状も落ち着いていたから油断していた。
花を拾い上げて紐で括ると、風通しのいい場所に吊るしておく。こうやってドライフラワーにして瓶に詰めておくのは、趣味のようなものだ。そうすれば、この辛さも想いも枯れて消えることなんてないと思えるから。
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