この上なく愛

天宮叶

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通じ合う2

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「約束だ。俺の心を永遠に君に捧げる」

 存在を確かめ合うように何度も唇を合わせる。舌先が唇を突き、応えるように口を開けば中に肉厚な舌が潜り込んできた。上顎を撫でられて下半身が熱くなってしまう。こぼれる唾液が顎を伝う。薄く形のいい唇が舌先を吸い上げて、また絡み合う。ライアン様が唇を合わせたまま僕の上へと覆いかぶさってくる。普段は冷静さを感じる瞳には、色気と熱が含まれていた。

 シャツを捲られて肌が外気に晒される。平均よりも痩せている貧相な体を見られるのが恥ずかしい。

「雪のように白い肌だな。綺麗だ」

「恥ずかしいです……」

 頬が熱くなる。歯の浮くような甘い台詞を言われるのはくすぐったい。でも、そんな台詞ですらライアン様によく似合っている。鎖骨や首筋にキスの雨が降ってきて、ますますお腹の奥が熱くなってきた。

 チクリとした痛みが走ったかと思えば、肌に赤い花弁が咲く。それを見つめていると求められているのだと感じられて嬉しくなる。おずおずと頬に手を伸ばすと、眼を細めながら擦り寄ってくれる。可愛らしくて笑みがこぼれた。

「大好きです」

 ずっと隠していたはずなのに、今は自然に口に出せる。僕の心をそのまま全部渡せたらいいのに。そうしたら、もっと近づける気がする。

「可愛いな」

 大人の色気を放つ余裕のある笑みに心を打ちぬかれる。微かに立ち上がった乳首を食まれて甘い声が漏れた。突かれて立ち上がった先端を、コリコリと優しく刺激される。緩急を付けるように舐めしだかれて、自然と腰が揺れた。

「あ、んんっ」

「もっと声をきかせてくれ」

「ひゃっ」

 器用に下着ごとスラックスを脱がされてしまう。そのまま腰を滑っていった手が内太腿うちふとももを撫でてくる。焦らすように裏筋を指先でなぞられて、背筋に痺れるような快感が走った。

「あっ、触って」

「どこに触れてほしいか教えてくれ」

 意地悪な言葉にお腹の奥がきゅっとしてしまう。意地悪気なのに慈しみを含んだライアン様の表情は、普段では見れないものだ。そんな彼の一面を独り占めできることが嬉しい。

「ぼ、僕のペニスに触れてほしいです」

 恥ずかしさを我慢しながら、自ら擦りつけるように腰を動かす。そうしたら、目じりを赤く染めたライアン様が「いい子」って耳元で囁きながら、優しく手でペニスを包み込んでくれた。

 触れられただけでビクりと腰が跳ねる。掌で亀頭をくるくると刺激されて、先走りが垂れる。上下にゆっくりと扱かれると意識が飛びそうなほどの快感が脳を満たしてくれた。ライアン様に触れられる時間が長いほどに、胸のつかえが少しずつ解けていく。

「あん、あっ、気持ちいいっ、もっと触ってください」

「ベル、口を開けてごらん」

 言われた通りに口を開けると、もう一度舌が潜り込んできた。気持ちよくて泣いてしまいそう。こんな風に触れ合えることなんてないと思っていたのに。

 指先が亀頭を刺激してくる。その瞬間あっけなく白濁がライアン様の手を濡らした。ぐちゅぐちゅと水音が寝室を満たす。吐き出した欲望を潤滑油にして、太く長い指が後孔へと挿入されていく。圧迫感に思わず眉を寄せると、労わるように片手で背を撫でてくれる。そのおかげか少しだけ力が抜けて、圧迫感が少なくなった。

 キスを続けながら、指の形を体内で感じる。中の一点を指先が掠めると、快感が全身を襲って一際大きな嬌声が飛び出した。前立腺の存在は知っていたけれど、実際に刺激されると強すぎる快感に少しだけ怖くなる。思わずライアン様の胸元に縋りついた。

「痛いか?」

「……気持ち良すぎて、怖い、です」

 伝えた瞬間、ライアン様の下半身が固さを増した。続いて、指が快感を引き上げるように前立腺を何度も軽く刺激してくる。

「ひゃっ、あ、やぁ、ライアン、さまっ」

「乱れるベルは本当に可愛らしいな」

「あん、そこっ、ダメ! あっ、イッちゃう~~~~!」

 太腿を痙攣させながら二度目の欲を吐き出す。指を抜かれ蒸気した頬にキスをされると、余韻のせいかそれだけでまた軽く達してしまった。

 僕の上に馬乗りになったまま、ライアン様が服を脱ぐ。鍛え抜かれた身体は目に焼き付くほどに格好良くて、思わず喉が鳴ってしまう。腹筋は彫刻のように美しく割れていて、思わず触れようと手を伸ばした。

「ふっ、くすぐったいな」

 目じりに皺を寄せて笑うライアン様に見惚れてしまう。まるで生きる美術品のように美しい人だ。

「きつかったら言ってくれ」

 再び指が挿入される。今度は二本。解(ほぐ)されているおかげか、先程よりは少しだけ圧迫感は少ない。耳に届く水音が羞恥心を煽る。絶え間なく漏れる甘声はまるで自分のものではないみたいだ。

「んぁっ」

 指が増やされると、ふやけきった体内はますます快楽を拾い上げる。口から銀糸が垂れてシーツを濡らす。瞳が潤んで視界がぼやけていく。生理的な涙が頬をすべったと同時に指を引き抜かれて、蜜を垂らしたように濡れた後孔がひくひくと開閉を繰り返した。

「ベルが欲しい」

「っ、僕もライアン様が欲しいです」

 ねだるように首元に腕を回す。微笑みを浮かべた彼が、昂った巨根を蜜穴へとあてがう。頭を抱え込むように抱きしめられながら、ゆっくりとペニスが僕の体内を押し開いていく。指とは比べようもないほどの圧迫感に唇を噛み眉を寄せる。

「傷ついてしまう。力を抜いてごらん」

 指が唇をなぞる。優しく甘く下唇を食まれて、意識がそちらへと逸らされる。そのおかげか少しだけ体から力が抜けた。その隙に、奥までペニスが挿入される。

お腹の中が熱くて、少し身じろぐだけでも喘いでしまう。好きな人と繋がることのできた奇跡がまだ信じられない。

「この上なく、愛しています」

「っ、俺もだ。ベルをこの腕に抱くことができたことを心から誇りに思う」

 ライアン様が髪先にキスを落としてくれる。幸せすぎて嗚咽が漏れた。

こんなに幸せでいいのだろうか。きっと何度もその疑問に突き当たるんだと思う。それでもこの瞬間は、感じる幸せ全てを受け入れて笑っていたい。

「動くぞ」

 太腿を掴まれて律動が始まる。馴染ませるようにゆったりとした動き。じれったさを感じながらも、的確に快感を引き上げる動きに翻弄されていく。

「あふぅ、あ、ん、もっとっ」

 奥に欲しいとお願いしようとした瞬間、ズプリと最奥に昂りがはまる感覚がした。目の前が明滅し、足先に力が入る。中がライアン様を飲み込むように締まる。

「ッ、食われてしまいそうだ」

「あ、ん! やあっ、お腹の奥、熱いっ!」

 小刻みに全身が震えて、ペニスの先端からとろりと勢いのない白濁が流れ出す。気持ち良すぎてまた怖くなる。お互いの指を交差させ、強く握りしめる。

「エロい顔だな。もっとその顔を見せてくれ」

 ふやけってだらしない顔をしているはずなのに褒められて、顔を見られるのが恥ずかしくなった。思わず片手で顔を隠すと、腕を掴まれて頭上で固定されてしまう。

「隠したら駄目だ」

「やぁ、恥ずかしいです……」

「恥じらっている顔も愛おしい。ベルの表情を一秒でも多く目に焼き付けておきたいんだ」

 腰の動きが早くなると、隠す余裕すらないほどに乱れてしまう。前立腺を攻められると、簡単に達してしまうんだ。気持ちよさに酔いしれて、全身が浮いたような心地になる。コツコツと奥をノックされて、受け入れるように奥が開く感覚がする。

 大好きな人に愛を囁かれて、気持ちよくなることしか考えられない。できることならずっとこの時間が続いてほしいと思ってしまう。そのくらい、僕の心は満たされていた。

「もうっ、達しそうだ」

「ん、あっ、きてっ。ライアン様を感じさせてください!」

「ッ、イクっ」

「あっ、んん~~~~!」

 お腹の中に熱が吐き出される。まるで直接幸福を注ぎ込まれたような感覚だった。しっとりと濡れたライアン様の胸元に唇を寄せる。そうして僕も一枚花びらの痕を刻んだ。

 媚薬なんてこの世には存在しない。でももしかしたら、媚薬の正体は愛なのかもしれない。人をおかしくさせてしまうほどの想い。

 僕のことを強く抱きしめてくれるライアン様に全身を預ける。お互いの心音がこの瞬間重なった気がした。

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