5 / 15
⑤
しおりを挟む
伯爵家の屋敷が見えてくると、リコの気持ちは更に重くなった。アルバーノの件のことをバレないように振る舞わなければならない。それに、屋敷に帰ってくると息が詰まって仕方ないからだ。跡継ぎを産むことを急かされているものの、リコは未だに懐妊できないでいる。懐妊を促す薬や発情誘発剤も試してみたが、結果は已然として出ないままだ。そのためかフリードリヒには年々冷たい態度を取られるようになってきている。それに気分ではなくとも無理矢理抱かれ、身体や心は疲弊しきっていた。
「帰ってきたのか」
屋敷に着くと、形式的にフリードリヒが出迎えてくれる。その後ろからコツコツとヒールが床を蹴る音が聴こえてきて、リコは眉を寄せた。
光を集めたように煌めくプラチナブロンドの髪とブルースカイ色のつぶらな瞳が可愛らしい青年が、フリードリヒの隣で立ち止まる。精悍な顔つきのフリードリヒと並ぶと、一枚の絵のように美しい。彼はケニーという名の平民だ。フリードリヒが視察の際に出会い、連れてきた美しいオメガであり愛人。
「お久しぶりですフリードリヒ様」
緊張で声が震える。それでも、毅然とした態度を取り続けた。動揺してしまえばなにもかもがすぐに見破られてしまう。
「早く中に入れ」
「はい」
どうやらなにも気づかれてはいないようだ。というよりも、フリードリヒはリコにあまり興味がないのだろう。暗闇を閉じ込めたような濃紺色の瞳と黒髪のリコは、目が覚めるほどの美人であるケニーに比べると見劣りする。
屋敷の廊下を進みながら、フリードリヒとケニーが並んで歩いている姿を後から見つめる。身分差はあれどお似合いの二人だ。フリードリヒが愛人を囲うようになったのは、リコが懐妊せず一年が経った頃。
初めはそれなりに動揺したものの、今はすっかり慣れてしまっている。それに、二人も周囲に関係を隠すつもりはないのか、白昼堂々逢瀬を重ねている姿を多くの人が見ていた。
途中、有名ブランドの服飾師が帰っていくのが目に入った。きっとケニーのためにフリードリヒが呼んだのだろう。
──よく考えてみると、彼が僕に贈り物をしてくれたことは一度もなかった気がするな。
頭を過ぎった事実が微かに胸を締め付けてきた。フリードリヒを愛しているわけではない。それでも、夫だと認識しているため嫌な気持ちにはなってしまう。こんなことをフリードリヒに伝えたら、すごく怒られてしまうのだろう。それくらいケニーのことを大切にしていることを知っているから。
「帰ってきたのか」
屋敷に着くと、形式的にフリードリヒが出迎えてくれる。その後ろからコツコツとヒールが床を蹴る音が聴こえてきて、リコは眉を寄せた。
光を集めたように煌めくプラチナブロンドの髪とブルースカイ色のつぶらな瞳が可愛らしい青年が、フリードリヒの隣で立ち止まる。精悍な顔つきのフリードリヒと並ぶと、一枚の絵のように美しい。彼はケニーという名の平民だ。フリードリヒが視察の際に出会い、連れてきた美しいオメガであり愛人。
「お久しぶりですフリードリヒ様」
緊張で声が震える。それでも、毅然とした態度を取り続けた。動揺してしまえばなにもかもがすぐに見破られてしまう。
「早く中に入れ」
「はい」
どうやらなにも気づかれてはいないようだ。というよりも、フリードリヒはリコにあまり興味がないのだろう。暗闇を閉じ込めたような濃紺色の瞳と黒髪のリコは、目が覚めるほどの美人であるケニーに比べると見劣りする。
屋敷の廊下を進みながら、フリードリヒとケニーが並んで歩いている姿を後から見つめる。身分差はあれどお似合いの二人だ。フリードリヒが愛人を囲うようになったのは、リコが懐妊せず一年が経った頃。
初めはそれなりに動揺したものの、今はすっかり慣れてしまっている。それに、二人も周囲に関係を隠すつもりはないのか、白昼堂々逢瀬を重ねている姿を多くの人が見ていた。
途中、有名ブランドの服飾師が帰っていくのが目に入った。きっとケニーのためにフリードリヒが呼んだのだろう。
──よく考えてみると、彼が僕に贈り物をしてくれたことは一度もなかった気がするな。
頭を過ぎった事実が微かに胸を締め付けてきた。フリードリヒを愛しているわけではない。それでも、夫だと認識しているため嫌な気持ちにはなってしまう。こんなことをフリードリヒに伝えたら、すごく怒られてしまうのだろう。それくらいケニーのことを大切にしていることを知っているから。
43
あなたにおすすめの小説
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる