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使用人の力を借りて、使節団を迎える準備がなんとか整った。翌日、昼間にホーガン伯爵家を尋ねてきた使節団を迎え入れる。
リコの予想通り、訪問してきた使節団の中心にアルバーノの姿を見留めて、リコは心臓を跳ねさせた。
「初めまして。私はグレー公爵家当主のアルバーノ・グレーと申します」
「フリードリヒ・ホーガンです。ようこそホーガン伯爵家へ。どうぞ中にお入りください」
フリードリヒが笑顔でアルバーノを屋敷内へと通す。フリードリヒの隣に立っていたリコは、紹介されなかったことに驚いて目を見開いた。まさかフリードリヒはリコのことが見えていないのだろうか。それか、妻だと紹介することが嫌なのだろう。
「失礼。そちらの美しいご夫人は紹介していただけないのですか?」
「あぁ、彼は……」
助け舟を出すようにアルバーノが話題をふってくれた。その優しさが嬉しい。それにお世辞でも美しいと言われて、胸が高鳴った。フリードリヒが言いたくなさそうに口ごもる。その態度を見て、無視をしたと思われてしまったら大変だ。リコは内心で冷や汗をかきながら、美しい所作で自ら名乗り出た。
「申し遅れました。リコ・ホーガンと申します」
「愛らしい名だ。ぜひ貴方とも話をしてみたい」
「ええ、ぜひ」
笑みを返すと、アルバーノも応えるように笑ってくれた。顔を合わせた瞬間から、胸に篭もる熱の温度が上昇していく。馬車での一件はお互いに伏せなければならない事実だ。けれど、どう足掻いても彼に魅力を感じてしまうことを実感してしまう。番契約が上書きされたせいなのだろうか。フリードリヒと番だった頃には感じなかった気持ちに戸惑いも大きい。けれど、それは全部秘密にしなければならない尊い感情だ。
「中にお入りください。料理を用意しております」
話を遮るようにフリードリヒがアルバーノへと声をかけた。素直に頷き、屋敷内へと足を踏み入れたアルバーノをリコは後から見つめ続ける。
ディナールームに着くと、料理を食べながら貿易路についての話が始まった。失敗は許されないため、料理にも力を入れている。アルバーノがリコの用意させた料理を口に入れた瞬間、顔を綻ばせたのがわかり安堵した。隣国と自国では食文化も違うため、かなり気を使った。それが報われたようで嬉しい。
「とても美味しいです。まさか他国で郷土料理を味わえるとは思ってもいませんでした」
「え……」
またしてもフリードリヒが口篭ってしまう。それもそのはずだ。今回、料理からナフキンの色まで、ほぼすべてのことをリコが準備した。一応フリードリヒにも料理のメニューなどの伺いはたてていたものの、任せるの一点張りだったため彼が郷土料理について知らないのも無理はない。けれど、伯爵家当主なのだから把握しておくのは当然のことだろう。特にこういった席では、一つの過ちが難しい問題へと繋がることも多い。
フリードリヒに呆れつつ、リコはアルバーノへと笑顔を向けた。それから、料理について詳細な説明を行っていく。
リコの予想通り、訪問してきた使節団の中心にアルバーノの姿を見留めて、リコは心臓を跳ねさせた。
「初めまして。私はグレー公爵家当主のアルバーノ・グレーと申します」
「フリードリヒ・ホーガンです。ようこそホーガン伯爵家へ。どうぞ中にお入りください」
フリードリヒが笑顔でアルバーノを屋敷内へと通す。フリードリヒの隣に立っていたリコは、紹介されなかったことに驚いて目を見開いた。まさかフリードリヒはリコのことが見えていないのだろうか。それか、妻だと紹介することが嫌なのだろう。
「失礼。そちらの美しいご夫人は紹介していただけないのですか?」
「あぁ、彼は……」
助け舟を出すようにアルバーノが話題をふってくれた。その優しさが嬉しい。それにお世辞でも美しいと言われて、胸が高鳴った。フリードリヒが言いたくなさそうに口ごもる。その態度を見て、無視をしたと思われてしまったら大変だ。リコは内心で冷や汗をかきながら、美しい所作で自ら名乗り出た。
「申し遅れました。リコ・ホーガンと申します」
「愛らしい名だ。ぜひ貴方とも話をしてみたい」
「ええ、ぜひ」
笑みを返すと、アルバーノも応えるように笑ってくれた。顔を合わせた瞬間から、胸に篭もる熱の温度が上昇していく。馬車での一件はお互いに伏せなければならない事実だ。けれど、どう足掻いても彼に魅力を感じてしまうことを実感してしまう。番契約が上書きされたせいなのだろうか。フリードリヒと番だった頃には感じなかった気持ちに戸惑いも大きい。けれど、それは全部秘密にしなければならない尊い感情だ。
「中にお入りください。料理を用意しております」
話を遮るようにフリードリヒがアルバーノへと声をかけた。素直に頷き、屋敷内へと足を踏み入れたアルバーノをリコは後から見つめ続ける。
ディナールームに着くと、料理を食べながら貿易路についての話が始まった。失敗は許されないため、料理にも力を入れている。アルバーノがリコの用意させた料理を口に入れた瞬間、顔を綻ばせたのがわかり安堵した。隣国と自国では食文化も違うため、かなり気を使った。それが報われたようで嬉しい。
「とても美味しいです。まさか他国で郷土料理を味わえるとは思ってもいませんでした」
「え……」
またしてもフリードリヒが口篭ってしまう。それもそのはずだ。今回、料理からナフキンの色まで、ほぼすべてのことをリコが準備した。一応フリードリヒにも料理のメニューなどの伺いはたてていたものの、任せるの一点張りだったため彼が郷土料理について知らないのも無理はない。けれど、伯爵家当主なのだから把握しておくのは当然のことだろう。特にこういった席では、一つの過ちが難しい問題へと繋がることも多い。
フリードリヒに呆れつつ、リコはアルバーノへと笑顔を向けた。それから、料理について詳細な説明を行っていく。
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