失恋〜Lost love〜

天宮叶

文字の大きさ
7 / 22

6〜東視点〜

しおりを挟む
俺はその日から病室からでて外に散歩をすることが日課になった。

少しでも生きていると実感していたかったんだ。

外はすでに秋模様。

緑色だった葉は赤や黄色に染められて、鳥の鳴き声も少しずつだが聞こえなくなってきた。

そんな些細なことですら、時間が進んでいるのだ…死に近づいているのだ、と思わせる。

「あと、何ヶ月持つだろうか」

吐き出すようにそう言う。

あと何ヶ月…何日……貴方と話すことができますか?

俺は立ち上がると、病室へと戻ってベッドに入り体を休めた。

◇◇◇

今日は病院内を探索しようと思い、俺は廊下を歩いていた。

「あそこを曲がると…確か、手術室か」

俺は前を見ずに病院で渡された地図を片手に廊下を曲がった。

ドンッ

「「わっ!?」」

角を曲がる時に誰かにぶつかって小さく悲鳴のようなものを漏らした。

それは相手も同じだったようで、二人共尻餅をついて持っていた荷物をせかせかと拾い集め始めた。

「すみませんでした。よそ見してて…」

「あ、いえ。僕の方こそ不注意で」

二人で荷物を拾い集めてそれぞれの荷物を渡し終えて、また謝る。

「あ…僕、葉山幸治っていいます!」

葉山と名乗った気弱そうな青年は俺を見てにこりと微笑んだ。

「えと、東夕陽です」

俺もなんとなく自己紹介をすると、葉山さんの手に持たれていた本に目がいった。

「その本……」

「あ!これ?僕ねここに入院してるんだけど、自分の病気について少しは知っておきたくてね」

そう言って葉山さんが難しい病名の書かれた本の表紙をやさしく撫でる。

すごいと思った。

俺は今まで自分の病気のことにあえて触れないようにしていたから……。

どうせ死ぬなら調べても意味がないと諦めていたから…。

なんとなく、葉山さんのことを知りたくなった。

「あの…よかったらお話、しませんか?」

思わずそう尋ねたら、葉山さんは驚いた表情で少しだけ俺を見つめてから、いいよ、と承諾してくれた。

「ありがとうございます。」

「いいんだ。僕も誰かと話したいと思っていたから」

そう言って彼は花が咲いたみたいに微笑んでくれた。

こういう人を可愛いと言うんだろうか?

俺は平凡顔だしな…。

自分でそんなことを思って少しだけ落ち込んだ。

しばらく歩いて自販機の横にある椅子に二人で腰掛けて雑談をする。

「かなり悪いんですか…?」

そう尋ねたらどこか寂しそうな顔で彼は頷いてくれた。

なんとなく、申し訳ない気持ちになる…。

「君もかい?」

葉山さんが尋ね返してきたので、俺も頷いた。

………………。

しばらくの沈黙。

「僕はね………もう、長くないんだよ。」

「え……」

突然の葉山さんの言葉に少し動揺する。

俺もです…。

失礼なことに、少しだけ嬉しいと思ってしまった。

死にゆくのは自分だけじゃないのだと…。

「……僕は、ずっと両親にもお医者様にも病気のことを秘密にされていたんだよ。治るからねって毎日のようにその言葉を聞かされて、僕自身も信じていた」

俺は葉山さんの話しを黙って聞いていた。
自分に境遇が似ているなって思った。

「自分の病気について知ったのは本当につい最近のことだったんだけどね……。ショックは大きかったよ?だけど………」

葉山さんはそこで言葉を濁した。

なにかを思い浮かべるように…とても辛そうに…。

「だけどね……僕は自分が死ぬことよりも、自分が死んだあと自分の大好きな人がどうなってしまうのかがとても心配なんだ…」

大好きな人………。

その言葉に胸の鼓動が速くなる。

日向……。

俺は無意識のうちにあいつの顔を思い浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

僕は今日、謳う

ゆい
BL
紅葉と海を観に行きたいと、僕は彼に我儘を言った。 彼はこのクリスマスに彼女と結婚する。 彼との最後の思い出が欲しかったから。 彼は少し困り顔をしながらも、付き合ってくれた。 本当にありがとう。親友として、男として、一人の人間として、本当に愛しているよ。 終始セリフばかりです。 話中の曲は、globe 『Wanderin' Destiny』です。 名前が出てこない短編part4です。 誤字脱字がないか確認はしておりますが、ありましたら報告をいただけたら嬉しいです。 途中手直しついでに加筆もするかもです。 感想もお待ちしています。 片付けしていたら、昔懐かしの3.5㌅FDが出てきまして。内容を確認したら、若かりし頃の黒歴史が! あらすじ自体は悪くはないと思ったので、大幅に修正して投稿しました。 私の黒歴史供養のために、お付き合いくださいませ。

大事な呼び名

夕月ねむ
BL
異世界に転移したらしいのだが俺には記憶がない。おまけに外見が変わった可能性があるという。身元は分からないし身内はいないし、本名すら判明していない状態。それでも俺はどうにか生活できていた。国の支援で学校に入学できたし、親切なクラスメイトもいる。ちょっと、強引なやつだけどな。 ※FANBOXからの転載です ※他サイトにも投稿しています

パブリック・スクール─薔薇の階級と精の儀式─

不来方しい
BL
 教団が営むパブリックスクール・シンヴォーレ学園。孤島にある学園は白い塀で囲まれ、外部からは一切の情報が遮断された世界となっていた。  親元から離された子供は強制的に宗教団の一員とされ、それ相応の教育が施される。  十八歳になる頃、学園では神のお告げを聞く役割である神の御子を決める儀式が行われる。必ずなれるわけでもなく、適正のある生徒が選ばれると予備生として特別な授業と儀式を受けることになり、残念ながらクリスも選ばれてしまった。  神を崇める教団というのは真っ赤な嘘で、予備生に選ばれてしまったクリスは毎月淫猥な儀式に参加しなければならず、すべてを知ったクリスは裏切られた気持ちで絶望の淵に立たされた。  今年から新しく学園へ配属されたリチャードは、クリスの学年の監督官となる。横暴で無愛想、教団の犬かと思いきや、教団の魔の手からなにかとクリスを守ろうする。教団に対する裏切り行為は極刑に値するが、なぜかリチャードは協定を組もうと話を持ちかけてきた。疑問に思うクリスだが、どうしても味方が必要性あるクリスとしては、どんな見返りを求められても承諾するしかなかった。  ナイトとなったリチャードに、クリスは次第に惹かれていき……。

出戻り王子が幸せになるまで

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
初恋の相手と政略結婚した主人公セフィラだが、相手には愛人ながら本命がいたことを知る。追及した結果、離縁されることになり、母国に出戻ることに。けれど、バツイチになったせいか父王に厄介払いされ、後宮から追い出されてしまう。王都の下町で暮らし始めるが、ふと訪れた先の母校で幼馴染であるフレンシスと再会。事情を話すと、突然求婚される。 一途な幼馴染×強がり出戻り王子のお話です。 ※他サイトにも掲載しております。

おめでとうが言えなくて

まめなぎ
BL
祝えないのは、最低だからじゃない。 まだ手放せていないからだ。

処理中です...