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8〜東視点〜
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葉山さんと話をしてからいつの間にか一週間が経とうとしていた。
最近、葉山さん見ないな…。
前に会ったところに行ってみたりしているもののなかなか会うことはできていない。
「はぁ……。」
そういえば日向も最近見ないな……。
どうでも良くなったのかな…なんて、そんな考えがよぎってくる。
寂しさを感じていると、いきなり病室のドアが開いて、見慣れない赤髪の人が入ってきた。
「………よぉ」
大輝さんだった。
葉山さんの恋人…多分。
「こんにちは…。どうされたんですか?」
わざわざ俺の病室に来るなんてどうしたんだろう?
疑問が浮かんだけれど口には出さないでおく。
「幸治が……幸治の容態が急変してな…。明日、明後日まで持つかどうかわかんねぇんだ………」
大輝さんの言葉に彼を見つめたまま思わず固まってしまった。
明日、明後日まで持つかわからない?
嘘……でしょ…。
だって、1週間前までは元気そうにしていたのに…。
「…会ってやってくれないか。お前はこんな窮屈な病院のなかで初めて幸治が作った友達なんだよ!」
「え……」
大輝さんからお願いされて戸惑った。
「たのむ!!!」
あまりにも必死な彼の様子に俺は思わず頷いていた。
それを確認して彼は少しだけほっとしたような顔になる。
俺の病室を出ていく大輝さんの後を追いかけながら俺は心の中で葉山さんに問いかけた。
葉山さん…貴方は今何を思っていますか?
葉山さんの病室のドアを開けると、まず目についたのは沢山の機械類とコードだった。
そして、やけに耳に響いてくる電子音。
「…あ…あ、ずま、…く…ん、き…て、くれ…た…の?」
葉山さんがゆっくりとこちらに首を向けて苦しそうに笑顔を見せた。
大輝さんがゆっくりベッドに近づいてその場に屈み、葉山さんの手をそっと握った。
「だ…いき、ぼ、く…しあ、わ…せだ…た、よ」
「……喋んな」
大輝さんが少し怒ったように言ったら葉山さんは綺麗に笑ったんだ。
それを見て俺は驚いた。
どうして…笑えるんですか?
死の間際に笑うなんて俺には無理だと思った。
「あ、ずま…く…ん」
「…はい」
名前を呼ばれて、俺も葉山さんに近づいて目線を合わせた。
そしたら、葉山さんは俺に向かって笑いかけてきた。
「あ、りが…とね」
「え……」
わけがわからず首を傾げてしまう。
そしたら、また彼は俺に笑いかけてきた。
「ぼく…あ、ずま…くん…の…おか、げ…で、たのし…か…………っ…」
言葉の途中で彼が一際大きく息を吸い込んだと思ったら、だらりと身体の力が抜けてピーーーと高く電子音が鳴り響いた。
命の終わりを告げる悲しい音……。
その音で、俺は一瞬にして何が起きたのかを理解してしまった。
そんなの…駄目だ…。
「は、やまさん?ねぇ…起きてよ…ねぇ!!」
まだほんのりと温かい葉山さんの体を揺すって俺は叫んでいた。
教えてよ…どうして貴方は笑えたの……ねぇ、教えてよ……。
大事な人を、大輝さんを置いて死にゆく貴方はどうしてそんなに綺麗に笑うことが出来たの?
「おしえてよ………ねぇ…」
しばらくそうやって葉山さんを揺すっているといきなり肩に温もりを感じて俺は顔を上げた。
「……もう、やめとけ」
「大輝さん……」
俺の肩には大輝さんの手が置かれている。
その手が微かに震えていることが分かって、俺は葉山さんから手を離した。
病室は看護師さんやお医者さんが慌ただしく動き回っている。
「幸治、幸せだったんだろうな…ほら、見てみろよ」
俺は促されるままに幸治さんの顔を見た。
俺はその表情を見て唇をぐっと噛み締める。
葉山さんは微笑んでいた。
幸せそうに…満ち足りたように……。
俺は何も言わずその場に立ち上がって動かなくなった葉山さんに向かって小さくお辞儀をした。
「……こちらこそ、ありがとうございました」
俺はそのまま病室を出て自分の病室の方へと足先を向ける。
『…う…うぁぁあ…うぅ……こ…うじ…』
病室からは大輝さんの泣き声が聞こえてきた。
それを耳に入れるのが辛くて、俺は早足に廊下を歩いて行く。
俺も………いつか…。
その時…あいつはどう思うんだろう。
最近、葉山さん見ないな…。
前に会ったところに行ってみたりしているもののなかなか会うことはできていない。
「はぁ……。」
そういえば日向も最近見ないな……。
どうでも良くなったのかな…なんて、そんな考えがよぎってくる。
寂しさを感じていると、いきなり病室のドアが開いて、見慣れない赤髪の人が入ってきた。
「………よぉ」
大輝さんだった。
葉山さんの恋人…多分。
「こんにちは…。どうされたんですか?」
わざわざ俺の病室に来るなんてどうしたんだろう?
疑問が浮かんだけれど口には出さないでおく。
「幸治が……幸治の容態が急変してな…。明日、明後日まで持つかどうかわかんねぇんだ………」
大輝さんの言葉に彼を見つめたまま思わず固まってしまった。
明日、明後日まで持つかわからない?
嘘……でしょ…。
だって、1週間前までは元気そうにしていたのに…。
「…会ってやってくれないか。お前はこんな窮屈な病院のなかで初めて幸治が作った友達なんだよ!」
「え……」
大輝さんからお願いされて戸惑った。
「たのむ!!!」
あまりにも必死な彼の様子に俺は思わず頷いていた。
それを確認して彼は少しだけほっとしたような顔になる。
俺の病室を出ていく大輝さんの後を追いかけながら俺は心の中で葉山さんに問いかけた。
葉山さん…貴方は今何を思っていますか?
葉山さんの病室のドアを開けると、まず目についたのは沢山の機械類とコードだった。
そして、やけに耳に響いてくる電子音。
「…あ…あ、ずま、…く…ん、き…て、くれ…た…の?」
葉山さんがゆっくりとこちらに首を向けて苦しそうに笑顔を見せた。
大輝さんがゆっくりベッドに近づいてその場に屈み、葉山さんの手をそっと握った。
「だ…いき、ぼ、く…しあ、わ…せだ…た、よ」
「……喋んな」
大輝さんが少し怒ったように言ったら葉山さんは綺麗に笑ったんだ。
それを見て俺は驚いた。
どうして…笑えるんですか?
死の間際に笑うなんて俺には無理だと思った。
「あ、ずま…く…ん」
「…はい」
名前を呼ばれて、俺も葉山さんに近づいて目線を合わせた。
そしたら、葉山さんは俺に向かって笑いかけてきた。
「あ、りが…とね」
「え……」
わけがわからず首を傾げてしまう。
そしたら、また彼は俺に笑いかけてきた。
「ぼく…あ、ずま…くん…の…おか、げ…で、たのし…か…………っ…」
言葉の途中で彼が一際大きく息を吸い込んだと思ったら、だらりと身体の力が抜けてピーーーと高く電子音が鳴り響いた。
命の終わりを告げる悲しい音……。
その音で、俺は一瞬にして何が起きたのかを理解してしまった。
そんなの…駄目だ…。
「は、やまさん?ねぇ…起きてよ…ねぇ!!」
まだほんのりと温かい葉山さんの体を揺すって俺は叫んでいた。
教えてよ…どうして貴方は笑えたの……ねぇ、教えてよ……。
大事な人を、大輝さんを置いて死にゆく貴方はどうしてそんなに綺麗に笑うことが出来たの?
「おしえてよ………ねぇ…」
しばらくそうやって葉山さんを揺すっているといきなり肩に温もりを感じて俺は顔を上げた。
「……もう、やめとけ」
「大輝さん……」
俺の肩には大輝さんの手が置かれている。
その手が微かに震えていることが分かって、俺は葉山さんから手を離した。
病室は看護師さんやお医者さんが慌ただしく動き回っている。
「幸治、幸せだったんだろうな…ほら、見てみろよ」
俺は促されるままに幸治さんの顔を見た。
俺はその表情を見て唇をぐっと噛み締める。
葉山さんは微笑んでいた。
幸せそうに…満ち足りたように……。
俺は何も言わずその場に立ち上がって動かなくなった葉山さんに向かって小さくお辞儀をした。
「……こちらこそ、ありがとうございました」
俺はそのまま病室を出て自分の病室の方へと足先を向ける。
『…う…うぁぁあ…うぅ……こ…うじ…』
病室からは大輝さんの泣き声が聞こえてきた。
それを耳に入れるのが辛くて、俺は早足に廊下を歩いて行く。
俺も………いつか…。
その時…あいつはどう思うんだろう。
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