マニーフェイク・フレンズ

天宮叶

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友達

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長いようで短い一日を終えて夜までだったパートさんとバイトさんに挨拶をしてから皆が外に出たのを確認して店の鍵を閉めた。

いつも似たような業務を淡々とこなす毎日は時々凄くつまらなく感じて嫌気がさす時もあるけれど、今日お花を買ってくれた綺麗なお客さんみたいにたまに印象にのこる出来事が起きるから今の仕事を続けられてるんだろうなと帰りながら思う。

「いつものとこ行くか……」

家に帰る方向とは逆の道に車を進めて、俺はとあるバーの駐車場で車を停めた。

「あら~今日も来たのねさとるちゃん」

「ママは今日も綺麗だね~」

バーの中に入るとここの主人でバーテンダーをしているママに話しかけられる。

所謂ゲイバーと言われるここの常連の俺はいつの間にかママに顔を覚えられていて飲み物の値段をまけてくれたりいい人を紹介してもらったりと何かと良くしてもらっている。

ただ、いい人とはいつも上手くいかないんだけど…。

俺は体格もそこそこでかいし顔もブサイクではないけど平凡で男って感じの顔だからタチの人は俺には立たないらしい。
かわいいネコの子達にはよく話しかけられるけれど俺もネコだから丁重にお断りさせて頂いている。

「いつものでいいかしら?」

「ありがとうママ」

ママが俺の前にホワイトレディを置いてくれて俺はそれを一気に半分ほど飲み干した。
お酒の種類なんてわからなくてママにおすすめされて飲んだこれを気に入った俺はほかのカクテルも試飲してみたものの結局ホワイトレディに落ち着いてしまった。

白くて透き通った液体を眺めていると今日アリッサムを買っていったあの人を思い出す。本当に綺麗な人だったなあ。

「アリッサムの花言葉って知ってます?」

「なあに~突然」

ママが不思議そうに首を傾げるから俺はそれに微笑んでからグラスを持って中の液体を揺らしてからまた一気に煽った。

「色々あるんですけど、優美っていう花言葉なんですよ。」

「ふーん、花言葉なんて小洒落たもの知ってるなんて悟ちゃんたら意外とロマンチストなのね~。」

「意外とは余計ですよー。」

くすくすと笑い合いながら俺はまたホワイトレディを頼んで、ママが直ぐに作って置いてくれた。

「今日すごく綺麗な人がいたんですよ。」

「お仕事の人?」

「そんな感じですかね~。その人、その花言葉がぴったりな感じで見惚れちゃいました。」

「あらまあ、ほの字になっちゃったわけ~?忘れられない子がいるって言ってなかったかしら。」

「ほの字ってそれちょっと古いですよ。それに貫君とはもう一切連絡とってませんし、その人には惚れたりはしてません。」

「つまらないわ~。」

ママが本当につまらなそうに口を尖らせるから俺はそれがなんだかおかしくてくすくす笑う。他のお客さんからも話しかけられたママが一旦俺から離れたから俺は目の前に置かれたホワイトレディを一気に煽ってからママに一言言ってお金を支払ってからバーを出た。
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