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4.突然の電話

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その日から、俺は彼を呼ぶたびに、一つだけ質問をするようになった。
質問に嫌な顔もせずに答えてくれる海斗。
会う度に、沢山甘やかされて、気持ちよくなって、それから、彼のことを一つ知ることが出来る。

その時間がなによりも幸せだ。

「ねえ、質問してもいい?」
「どうぞ」
「好きな食べ物は?」
「コロッケが好き」

些細なことでさえ、聞けることや知れることが嬉しくて、笑みがこぼれるんだ。
海斗が好き。絶対的に揺るぎない恋心が、少しだけ辛いと思う瞬間もある。
でも、それは、仕方の無いことだ。一方的な片思い。デリヘルのスタッフに恋をした俺が悪い。

そんな日々の最中、番号登録していない番号から電話が来た。恐る恐る出てみると、聞き覚えのある声が俺の名前を呼んで、サッと血の気が引く感じがした。
電話は秀次からだった。

「なんのようだよ」

声が震える。なぜか秀次の声も震えている気がした。

「今、恋人とかいるのか?」
「……いないけど」
「俺の家に弟が住んでるんだけど……俺さ、恋人と同棲することになって。弟がいると困るんだよ。だから、お前ん家に数日、泊めてやってくれないか?今そっちに向かわせてるから」
「は??」

いや、わけが分からない。
どうやったら、元恋人に弟を押し付けようっていう発想になるんだよ。
秀次の考えていることが理解できなくて、腹が立ってくる。

「無理だから!」

思わず大声で拒否していた。でも、秀次は全然話を聞いてくれなくて、弟には話を通しているとか、なんとか言って一方的に電話を切られた。

……いや、本当に訳が分からない。
あいつ、おかしいんじゃないのか?
イライラして、近くにあったクッションをぼふぼふ叩く。
それから、数時間後、インターホンが鳴って、俺は大きなため息を吐き出した。
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