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3.一喜一憂しちゃうだろ
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結論、俺は彼にどハマりしてしまっていた。
あれから、金の余裕がある日はすぐに予約の電話をして海斗を指名する。もちろん彼は人気で、指名できない日もあったけど、そういうときは、彼の手や声を思い出して一人でしたりもした。
行為の度に、気持ちよすぎて、泣きまくる俺の髪を撫でながら
「可愛い。もっと気持ちよくなっていいからね」
と甘く囁いてくれる海斗。その声を耳に入れる度に、奥がうずき、最高に興奮して、好きだな……って思う。
気がつくと、海斗のことを本気で好きになっていた。
俺は馬鹿なんだと思う。
αなんて好きになってもいいことなんてなにもない。特に俺と彼は、客とスタッフという間柄。彼が俺に甘い言葉をくれるのは、仕事だからだって分かってる。
でも、行為のときだけは、海斗が俺のことを好きなんだって錯覚してしまうんだ。
あの甘い言葉を信じたいと思ってしまうんだよ。
ただ一つだけ、元彼に似ているあの瞳に見つめられるのは少しだけ苦手だった。現実を突きつけられているような気にさせられるから。
秀次はもう俺の傍にはいない。
そして、海斗は俺の恋人ではない……と。
ピピッといつもみたいにアラーム音が鳴る。
この音が嫌いだ。夢から現実に引き戻される瞬間だから。
「時間ですね」
海斗が、柔らかな短い茶色の猫っ毛を揺らしながら身体を起こした。
黒目がちの瞳がじっと俺を見つめている。
見つめられることが怖くて目をそらすと、俺の頭にキスが降ってきた。
「また呼んでくれます?」
「……たぶん」
お決まりの台詞だ。
そんなこと聞かないで欲しい、とつい心の中で悪態をつく。その言葉を聞くと期待してしまうから嫌なんだ。自分の心がおかしくなってしまいそう。
視線を床へ向ければ、散らばった服が視界の端に入って、妙に生々しく感じた。
いつの間にか、秀次のことは頭から抜けていることが多くなって、そのスペースに彼が入り込んでいる。
追い出そうとしても、どうやっても抜けてくれなくて、困るんだ。
もっと一緒にいたいと思ってしまう。でも、延長したいなんて言えない。
やっぱり俺はどこまで行ってもβなんだ。
もっと積極的になればいい。彼だって延長して貰えればそれだけお金も入るし、WinWinなはずだ。
それでも、どこか遠慮してしまうのは、境界を超えた先に行くのが怖いから。
服を着始めた後ろ姿を見つめながら、次はいつ会えるんだろうなんて思う。
「……歳、いくつ?」
気がついたら、声をかけていた。客からプライベートな質問をされることほど嫌なことってないだろうな。
慌てて訂正しようとしたら、彼が俺の方に身体ごと顔を向けて、微かに微笑んでくれた。
「二十四です」
「……そっ、か……」
そうだった……プロフィール欄にも書いてあったじゃないか。
恥ずかしさと、答えて貰えた嬉しさで顔が熱くなる。
こんなことくらいで一喜一憂して馬鹿みたいだよ本当に。
「それじゃあ、また」
真っ赤な顔をしているはずの俺の頬に、海斗が唇を寄せて、それから玄関を出ていった。
思わず固まったまま、締まり切った玄関扉を見つめてしまう。
あれって、サービスかなにかなのか?
だとしたら、海斗はどこまでも残酷だと思った。
「……ああ~、もう……っ」
熱すぎる顔を両の手のひらで隠してベッドへと背中を預ける。足をバタつかせて、悶えながら、今会ったばかりなのに、もう会いたいって思った。
あれから、金の余裕がある日はすぐに予約の電話をして海斗を指名する。もちろん彼は人気で、指名できない日もあったけど、そういうときは、彼の手や声を思い出して一人でしたりもした。
行為の度に、気持ちよすぎて、泣きまくる俺の髪を撫でながら
「可愛い。もっと気持ちよくなっていいからね」
と甘く囁いてくれる海斗。その声を耳に入れる度に、奥がうずき、最高に興奮して、好きだな……って思う。
気がつくと、海斗のことを本気で好きになっていた。
俺は馬鹿なんだと思う。
αなんて好きになってもいいことなんてなにもない。特に俺と彼は、客とスタッフという間柄。彼が俺に甘い言葉をくれるのは、仕事だからだって分かってる。
でも、行為のときだけは、海斗が俺のことを好きなんだって錯覚してしまうんだ。
あの甘い言葉を信じたいと思ってしまうんだよ。
ただ一つだけ、元彼に似ているあの瞳に見つめられるのは少しだけ苦手だった。現実を突きつけられているような気にさせられるから。
秀次はもう俺の傍にはいない。
そして、海斗は俺の恋人ではない……と。
ピピッといつもみたいにアラーム音が鳴る。
この音が嫌いだ。夢から現実に引き戻される瞬間だから。
「時間ですね」
海斗が、柔らかな短い茶色の猫っ毛を揺らしながら身体を起こした。
黒目がちの瞳がじっと俺を見つめている。
見つめられることが怖くて目をそらすと、俺の頭にキスが降ってきた。
「また呼んでくれます?」
「……たぶん」
お決まりの台詞だ。
そんなこと聞かないで欲しい、とつい心の中で悪態をつく。その言葉を聞くと期待してしまうから嫌なんだ。自分の心がおかしくなってしまいそう。
視線を床へ向ければ、散らばった服が視界の端に入って、妙に生々しく感じた。
いつの間にか、秀次のことは頭から抜けていることが多くなって、そのスペースに彼が入り込んでいる。
追い出そうとしても、どうやっても抜けてくれなくて、困るんだ。
もっと一緒にいたいと思ってしまう。でも、延長したいなんて言えない。
やっぱり俺はどこまで行ってもβなんだ。
もっと積極的になればいい。彼だって延長して貰えればそれだけお金も入るし、WinWinなはずだ。
それでも、どこか遠慮してしまうのは、境界を超えた先に行くのが怖いから。
服を着始めた後ろ姿を見つめながら、次はいつ会えるんだろうなんて思う。
「……歳、いくつ?」
気がついたら、声をかけていた。客からプライベートな質問をされることほど嫌なことってないだろうな。
慌てて訂正しようとしたら、彼が俺の方に身体ごと顔を向けて、微かに微笑んでくれた。
「二十四です」
「……そっ、か……」
そうだった……プロフィール欄にも書いてあったじゃないか。
恥ずかしさと、答えて貰えた嬉しさで顔が熱くなる。
こんなことくらいで一喜一憂して馬鹿みたいだよ本当に。
「それじゃあ、また」
真っ赤な顔をしているはずの俺の頬に、海斗が唇を寄せて、それから玄関を出ていった。
思わず固まったまま、締まり切った玄関扉を見つめてしまう。
あれって、サービスかなにかなのか?
だとしたら、海斗はどこまでも残酷だと思った。
「……ああ~、もう……っ」
熱すぎる顔を両の手のひらで隠してベッドへと背中を預ける。足をバタつかせて、悶えながら、今会ったばかりなのに、もう会いたいって思った。
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