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生徒会長になる婚約者様
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婚約者になるとは言っても、まずは自分の親達にしっかり話さねばならない。でも、まだ学園があるため次の休みまでは婚約を結ぶことができない…
「あの…リュアン様。いくら、婚約を結ぶ予定…とはいえ、その…あまりにもくっつきすぎではありませんか?」
のだが。
今はティータイム中だ。でも、普通ならば向かいに座るはずがリュアンは私の横に座っている。しかも横から抱きしめている。
「婚約を結ぶんですから大丈夫ですよ」
「大丈夫とかそういうことではなくて…」
「僕がお嫌いですか?」
潤んだ瞳でそう問いかけるリュアン。一体そんな技をどこで覚えてきたのか。
いくら中身が悪魔といっても、見た目が天使のリュアンには流石に敵わない。
「…お嫌い、じゃない、です」
「じゃぁ、好きですか?」
「…そ、れは答えかねます」
そう言うと、「…へぇ、好きじゃないんだ。ふぅん、僕のこと嫌いなんだ」とすね始めた。
「き、嫌いではないです!でも、好き…とは…」
「じゃぁ、カナンのことは?」
「好きですっ!」
即座に答えた瞬間、ちっと舌打ちが聞こえたような気がした。
でもリュアンは、微笑んでいるだけで、舌打ちをしたようには見えない。
空耳だったのだろうか。
「どうしたら僕のこと好きって言ってくれますか?」
「え?」
「あなたが好きって言ってくれるならなんだってします」
「…そう言われても」
でも、もしもなんでもしてくれるなら…
「た、例えば生徒会長になってほしいと言ったら…?」
そう口走っていたことに、自分の口を押さえる。
「なんで、そう思ったんですか?」
「え?」
「ぼくが生徒会長になってほしいと」
「今の…ウィルニー様が生徒会長のままでは生徒会はある意味がないです。雑務は子爵家や男爵家の力のない貴族ばかりに押し付けて…」
「そうですね。僕もそれはそろそろどうにかしないといけないと思っていたところです」
「でも、本当にいいですから!今も忙しいのにもっと忙しくなったら身体が壊れてしまいます」
焦ったように言うと、「大丈夫です。その時はあなたに疲れを癒してもらいますから」と微笑む。
「い、いや…あの、それは…そ、それに例えばの話ですよ!?」
「ふふっ、嘘ですよ」
リュアンは「じゃぁ、授業があるので失礼しますね」そう言って歩いて行った。
私の言葉を真に受けていなければいいのだけど。
確かに生徒会長の座についてくれたなら、勤勉なリュアンなら生徒会をより良いものにしてくれるだろう。
でもそうする一方で身体を駄目にしていってしまう。
例えずば抜けて頭が良くて、多彩な才を持っていたとしても、その身は人間の身体なのだから、限界というものがある。あんな華奢な身体がそんなに耐えられるとは思えない。
そう、思っていたのだが…
「どうかリュアン様を生徒会長にー!!」
学園内どこもかしこも響くその言葉。
まさか本当にリュアンが生徒会長になろうとするなんて。
この学園では、前世でいうリコール制度というものがある。
今の生徒会長、ウィルニーかそれともリュアンが生徒会長になるか、票を集め、どちらが多いかを競うのだ。
「…あ、あのリュアン様」
保健室を訪れた私。そこではウィルニーの生徒会室では見られなかった無数の紙の山々。
意外なことにリュアンが眼鏡をかけている。
「す、すいません。あの…本当に生徒会長になるのですか?」
「はい」
「何故…ですか?」
「あなたがなってほしいと言ったからです」
やっぱり…!
あんなこと言わなければよかったと後悔する。
「…リュアン様、失礼ですが、昨日お休みになりましたか?」
「少しだけ仮眠はとりました」
「ど、どれくらいでしょう?」
「五分です。ぐっすり眠れました」
輝かしい笑顔を向けるリュアン。確かにその顔に睡眠不足なんていう文字は書いていない。
でも…少しだけ目の下に、うっすらとだが、クマがあった。
「寝てください」
「どうしてですか?」
「身体が持ちません。ほら、ベッドに移動して…」
立たせようと手を伸ばしたら、反対にその手を掴まれ、引き寄せられた。
「分かりました。その代わり、あなたが枕になってください。じゃないと僕は寝ません」
そう微笑むリュアン。
一体私をどこまで困らせれば気が済むというのだろう…。
枕になってくれと言われ、二人がけのソファに移動し、枕になった。
…私の足が。世に言う膝枕である。
そもそも寝ると言って仰向けになっているリュアンは寝ていない。目は開いている。
「柔らかいです」
そうリュアンはいうが、前世で言えばその言葉は男が言うとセクハラです。
まぁ、リュアンの天使のような外見の可愛さ故に許される言葉なのだが。ウィルニーなんかが言っていたら顔面殴りそうだし、そもそも膝枕なんてさせない。
カナン様なら…と考えて頬が熱くなってきた。
「…今、誰のこと考えてるの」
そう低い声が聞こえてきて現実に引き戻される。
「…べ、別に、誰のことも考えていませんわ」
「嘘つき」
口角を上げたリュアンは私の首に手を回したと思ったら、下に引っ張られた。
「今目の前にいるのは僕なんだから、僕以外のことを考えるのは…許さないよ?」
悪魔のように微笑みながら、唇が今にも触れそうで、触れない距離で喋るリュアン。
「あのぉ~、お楽しみのところ悪いんだけどねぇ~、ちょっといいかなぁ~」
声が聞こえた瞬間の私の行動は早かった。リュアンの肩を掴み、バリッと引き離した。
リュアンは急の私の行動にびっくりしたのか首に回していた手を離し、私の膝に飛び込んでいく。
「な、なななななにもやっていませんわ!」
見られたことに耳まで真っ赤になったであろう顔を晒しながら、来た人物に目を向ける。
「…メルヴィア、様?」
「うん、そうだよぉ~。二日ぶりだねぇ~ルミエラ」
「そ、そうですわね。ところで、メルヴィア様は一体どのようなご用が…?」
「普通は保健室だから傷の手当てか体調が悪くて寝に来るかだよねぇ~。まぁ、俺の場合は君の膝にいるリュアンさまに用があるんだけどねぇ~」
そう言いながらメルヴィアはリュアンを見つめる。つられて私もリュアンを見るが、当の本人は口をへの字にしながら、私を見ている。
「なんで、そいつのことを知ってるんですか、ルミエラ様は」
「そいつ…?」
そいつ、と言われて一人しかいないその人を見る。
その人は、「そうそう俺のことぉ~」と嬉しそうにしているけど。
「メルヴィア様のこと…ですよね。図書室に行った時に知り合ったんです」
「…それにしては随分と親しげですけどね…ルミエラ、ですか…へぇ~…」
「僕とルミエラはそういう仲なんですよぉ~。ね、ルミエラ~」
そう言って私に近づいて来たメルヴィアは後ろから私を抱きしめた。
「ちょ、メ、メルヴィア様!お戯れがすぎますっ」
首に回って来たメルヴィアの手をどけようとするが、力が強くて引き剥がせない。
「メルヴィア・ヴォルヴィン。今すぐ、その人から手をどけて。流石に怒るよ」
下からスッと伸びて来た手がメルヴィアの腕を掴んだ。
かと思ったら、メルヴィアがすぐさま私から手をどけ、リュアンは頭を上げて上半身を起こした。
「いたた。ちょっとは手加減して下さいよ。跡が残ったらどうすんですか」
「それくらいで跡は残らないから。それよりも、ルミエラ様に触らないでくれるかな。穢れる」
いつも天使のようなリュアンからは考えられないような、汚物を見るような目で話している。
「ごめんごめん。そんなに怒らないで下さいよ。今日はリュアン様に話があってここに来たんです。単刀直入に言いますと、俺の力が必要ですよね?」
「…別に、お前なんかの力借りなくても僕一人で生徒会長になれるけどね」
「確かにそうですけど、それではあなたの身体がもたないでしょう?これから、ウィルニー様を解任するにあたっての証拠が必要になってくる。リュアン様を押す一派も集結しつつあるようだし、それをまとめなきゃいけない。とにかく今あなたに必要なのは人手だ」
「それでも僕一人でなんとかなるから、そんなの不要だよ」
メルヴィアを睨みつけるリュアン。
だけど、メルヴィアの方はまだ何か策があるのか、余裕に笑みを浮かべている。
そんなメルヴィアを見ていたら、私に目を合わせて来た。
「…?」
ニコニコとこちらに笑みを向けるメルヴィアの意図がよく分からない。
「ルミエラ様もそう思いますよね?僕一人でも大丈夫ですよね?」
リュアンが唐突にそう聞いて来て、メルヴィアの意図がようやく分かった。
「わたくしはリュアン様の身体が心配なので、是非メルヴィア様にも手伝ってほしいと思っております」
「仕方ないから手伝ってもいいよ」
メルヴィアはそう言ったリュアンに、「即答ですか」と苦笑気味だった。
「じゃぁ、俺は解任するための証拠を集めて来ます。あと、証人もね。じゃぁねぇ~、ルミエラ」
メルヴィアは私の頬にキスを落とすと、すぐに保健室を出て行った。
その後、私はメルヴィアにキスされた頬を手でおさえる。
私のその手に、そっと細くて白い手が重ねられた。
「…リュアン様?」
重ねられた手を不思議に思いながら、リュアンを見ると、ニコリと微笑んではいるが、怒っているような気がする。空気がピリピリとしているからだ。
リュアンは何も言わずに、私の手をどけると、さっきキスされた場所をゴシゴシとポケットから出したハンカチで拭いた。
「え?あの…」
どうしたんですか?と聞こうとしたら、ハンカチがどけられ、キスされたその場所にリュアンの唇が押し当てられた。
「消毒です」
「しょ、消毒…?」
それは消毒っていうの?消毒なら、ここ保健室だから消毒液を使えばいいんじゃ…
「…あ、あの消毒液を使いましょうか?リュアン様って潔癖なんですのね」
私は立ち上がろうとしたけれど、両腕をがっちりとリュアンに掴まれて、そのまま押し倒されたため無理だった。
頭が少しぐらぐらする。
でも、次の瞬間頭がスッキリした。
だって、リュアンが私の唇に自身の唇を重ねたのだから。
「大丈夫です。消毒液は必要ありません」
唇を離すと、そうニコリと笑顔を向けて、私の唇をゆっくりとなぞる。
「…分かりませんか?妬いてるんです」
やいてる…?って、焼いてるではないよね…流石に私もそんな馬鹿じゃないし。
「嫉妬…して、たんですか?」
「そうです」
リュアンが誰に嫉妬を…?もしかして…
「そうとは知らずごめんなさい。リュアン様は…男の方が好きでしたのね」
そういうことだったのね。男が好きだったのか!それでイアナにも惚れなかったのね…そうか、そうかそうか!
一人納得していたら、掴まれたリュアンの手に力がこもった。
「いたっ…」
あまりの痛さにそう声を出すと、リュアンははっと気がついたように、手を離した。
「…すみません」
「あ、あのリュアン様」
「枕はもういいです。今は…一人になりたいです」
「え?あっ、はい!」
もしかしてデリケートな話だっただろうか。
私は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、急いで立ち上がり、保健室を出た。
「男が好き…なわけないんだけど」
僕は眼鏡を取り、痛み出したこめかみを抑えた。
どんな難解な問題や、書類よりも彼女以上に悩まされるものはない。
唇を交わしたって、好きだって言ったって意味ない。僕のことを男としてみていない、彼女は。
「…どうしたら僕だけのものになってくれるんだろう」
「怖いこと言わないでくれよ。俺をロッカーに押し込んだまま」
「あぁ…そっかベルティー…君いたんだっけ」
「いたんだっけ、って…」
呆れた様子でため息をつくベルティー。
「俺がいるっていうのにいちゃつかないでよ。困るだろ?」
はぁぁ…と深いため息を吐いたベルティーは、一人がけのソファに腰を下ろした。
ルミエラ様が保健室に来た時にベルティーを無理やり掃除道具が入っていたロッカーに押し込んだのを忘れていた。
根に持っているのか、じと目でこちらを見つめてくるベルティー。
「君は俺がいるって分かってるんだから、少しは遠慮をしてくれよ。君達のいちゃいちゃしてるのを見せられてる俺の気持ちになってくれよぉ…」
「…」
メルヴィア・ヴォルヴィン。次期国王の補佐役。国王の側に仕える身としては彼以外にいないと言ってはいいほどだけど…でも。
そんな心強い補佐役がもしもルミエラ様のことが好きならこいつ以上の敵はいない。
初めて会った時は教養のあるできた子供だと思っていたけれど…。
だんだんと僕と張り合うようになってきて何かと勘に触る男だった。
さっきも僕のものなのに勝手に触れて…抱きしめたり、頬にキスしたり…軽々と僕を超えようとしてくる。
「おーい。聞いてるの、リュアンー」
「うるさい」
考え事をしているから無視してるっていうのに本当にうるさい。
「ひぃっ!?おいおい、ちょっと落ち着いてくれよ。君が怒ると怖いんだよ」
「母上よりもね」と付け足してからベルティーは大人しく黙った。
減らない口だから、いつ喋り出すかわからないけれど。
それにしても、ルミエラ様はどうしてあんな男を軽々と許してしまうのか。ただでさえ危機感が足りなくて無防備なのに。あんな男に気を許しでも、したら…。
「何を考えているのかは知らないけど落ち着いてよリュアン!君のそのオーラも怖いんだよ!」
いつのまにか何か変なオーラを出していたらしい。分からないけど、しまったことにしておこう。
「あっ、引っ込んだ」
そうベルティーが言う。
「君には何か不思議なものでも見えてるの?」
「うん。どす黒いオーラが見えたよ」
「そう。精神が安定してないんだね。大丈夫、あとで安定剤を打ってあげるよ」
「そんなに穏やかに言わないでよ。君がいうと本気に聞こえてくる」
「本気だよ。君、頭もおかしくなってるね。もともとの馬鹿さを除いて」
本音を言うと、ベルティーは落胆した様子で「もう、何を言っても通じない気がするよ…」と悲壮感に満ちている。
「それはきっと君の語彙力が足りないからだよ」
微笑んで言ってあげると、泣き出した。本当、すぐ泣く。こういうのをヘタレって言うんだっけ。
「君のことはどうでもいいんだけど、問題はルミエラ様だよ。君も聞いたでしょ?僕に男が好きなのかって」
「あれは笑ったよー!まさかあんなこというとはね~。ルミエラ様もやるなー」
ベルティーはそう言いながらケラケラと笑う。
「…なんかイラつくから、一発殴らせてよ」
「えぇ!?ご、ごめんごめんリュアン!馬鹿にしたつもりはないんだよ」
馬鹿にしたつもりはないとかそういうことではないんだけどな…ただ、君のあの笑い方が妙にイラつくというか、なんというか…。
「それにしても相変わらずの鈍感だね~」
「本当だよ。なんであそこまで鈍感なのか…」
「リュアン!押してダメなら引いてみろって言うだろ!やってみようよ!」
「引く…?」
そんなことして意味あるのかな。
訝しげな目でベルティーを見ていたら、「も、ものは試しだよ!保証はできないけど…」そう言ってきた。
最後の方にこそっと言った「保証はできないけど…」って言う言葉もちゃんと聞こえてたから。
「…まぁ、これから忙しくなるし。からかえなくなるしね。一回試してみようかな」
ルミエラ様をからかうのができなくるのは少し寂しいけれど…
そう思いながら立ち上がった。
「どこ行くの、リュアン」
「安定剤を部屋まで取りに行くの」
「え?なんで…?」
「君に飲ませるためだよ」
歩き出した僕をベルティーは必死に止めた。
「あの…リュアン様。いくら、婚約を結ぶ予定…とはいえ、その…あまりにもくっつきすぎではありませんか?」
のだが。
今はティータイム中だ。でも、普通ならば向かいに座るはずがリュアンは私の横に座っている。しかも横から抱きしめている。
「婚約を結ぶんですから大丈夫ですよ」
「大丈夫とかそういうことではなくて…」
「僕がお嫌いですか?」
潤んだ瞳でそう問いかけるリュアン。一体そんな技をどこで覚えてきたのか。
いくら中身が悪魔といっても、見た目が天使のリュアンには流石に敵わない。
「…お嫌い、じゃない、です」
「じゃぁ、好きですか?」
「…そ、れは答えかねます」
そう言うと、「…へぇ、好きじゃないんだ。ふぅん、僕のこと嫌いなんだ」とすね始めた。
「き、嫌いではないです!でも、好き…とは…」
「じゃぁ、カナンのことは?」
「好きですっ!」
即座に答えた瞬間、ちっと舌打ちが聞こえたような気がした。
でもリュアンは、微笑んでいるだけで、舌打ちをしたようには見えない。
空耳だったのだろうか。
「どうしたら僕のこと好きって言ってくれますか?」
「え?」
「あなたが好きって言ってくれるならなんだってします」
「…そう言われても」
でも、もしもなんでもしてくれるなら…
「た、例えば生徒会長になってほしいと言ったら…?」
そう口走っていたことに、自分の口を押さえる。
「なんで、そう思ったんですか?」
「え?」
「ぼくが生徒会長になってほしいと」
「今の…ウィルニー様が生徒会長のままでは生徒会はある意味がないです。雑務は子爵家や男爵家の力のない貴族ばかりに押し付けて…」
「そうですね。僕もそれはそろそろどうにかしないといけないと思っていたところです」
「でも、本当にいいですから!今も忙しいのにもっと忙しくなったら身体が壊れてしまいます」
焦ったように言うと、「大丈夫です。その時はあなたに疲れを癒してもらいますから」と微笑む。
「い、いや…あの、それは…そ、それに例えばの話ですよ!?」
「ふふっ、嘘ですよ」
リュアンは「じゃぁ、授業があるので失礼しますね」そう言って歩いて行った。
私の言葉を真に受けていなければいいのだけど。
確かに生徒会長の座についてくれたなら、勤勉なリュアンなら生徒会をより良いものにしてくれるだろう。
でもそうする一方で身体を駄目にしていってしまう。
例えずば抜けて頭が良くて、多彩な才を持っていたとしても、その身は人間の身体なのだから、限界というものがある。あんな華奢な身体がそんなに耐えられるとは思えない。
そう、思っていたのだが…
「どうかリュアン様を生徒会長にー!!」
学園内どこもかしこも響くその言葉。
まさか本当にリュアンが生徒会長になろうとするなんて。
この学園では、前世でいうリコール制度というものがある。
今の生徒会長、ウィルニーかそれともリュアンが生徒会長になるか、票を集め、どちらが多いかを競うのだ。
「…あ、あのリュアン様」
保健室を訪れた私。そこではウィルニーの生徒会室では見られなかった無数の紙の山々。
意外なことにリュアンが眼鏡をかけている。
「す、すいません。あの…本当に生徒会長になるのですか?」
「はい」
「何故…ですか?」
「あなたがなってほしいと言ったからです」
やっぱり…!
あんなこと言わなければよかったと後悔する。
「…リュアン様、失礼ですが、昨日お休みになりましたか?」
「少しだけ仮眠はとりました」
「ど、どれくらいでしょう?」
「五分です。ぐっすり眠れました」
輝かしい笑顔を向けるリュアン。確かにその顔に睡眠不足なんていう文字は書いていない。
でも…少しだけ目の下に、うっすらとだが、クマがあった。
「寝てください」
「どうしてですか?」
「身体が持ちません。ほら、ベッドに移動して…」
立たせようと手を伸ばしたら、反対にその手を掴まれ、引き寄せられた。
「分かりました。その代わり、あなたが枕になってください。じゃないと僕は寝ません」
そう微笑むリュアン。
一体私をどこまで困らせれば気が済むというのだろう…。
枕になってくれと言われ、二人がけのソファに移動し、枕になった。
…私の足が。世に言う膝枕である。
そもそも寝ると言って仰向けになっているリュアンは寝ていない。目は開いている。
「柔らかいです」
そうリュアンはいうが、前世で言えばその言葉は男が言うとセクハラです。
まぁ、リュアンの天使のような外見の可愛さ故に許される言葉なのだが。ウィルニーなんかが言っていたら顔面殴りそうだし、そもそも膝枕なんてさせない。
カナン様なら…と考えて頬が熱くなってきた。
「…今、誰のこと考えてるの」
そう低い声が聞こえてきて現実に引き戻される。
「…べ、別に、誰のことも考えていませんわ」
「嘘つき」
口角を上げたリュアンは私の首に手を回したと思ったら、下に引っ張られた。
「今目の前にいるのは僕なんだから、僕以外のことを考えるのは…許さないよ?」
悪魔のように微笑みながら、唇が今にも触れそうで、触れない距離で喋るリュアン。
「あのぉ~、お楽しみのところ悪いんだけどねぇ~、ちょっといいかなぁ~」
声が聞こえた瞬間の私の行動は早かった。リュアンの肩を掴み、バリッと引き離した。
リュアンは急の私の行動にびっくりしたのか首に回していた手を離し、私の膝に飛び込んでいく。
「な、なななななにもやっていませんわ!」
見られたことに耳まで真っ赤になったであろう顔を晒しながら、来た人物に目を向ける。
「…メルヴィア、様?」
「うん、そうだよぉ~。二日ぶりだねぇ~ルミエラ」
「そ、そうですわね。ところで、メルヴィア様は一体どのようなご用が…?」
「普通は保健室だから傷の手当てか体調が悪くて寝に来るかだよねぇ~。まぁ、俺の場合は君の膝にいるリュアンさまに用があるんだけどねぇ~」
そう言いながらメルヴィアはリュアンを見つめる。つられて私もリュアンを見るが、当の本人は口をへの字にしながら、私を見ている。
「なんで、そいつのことを知ってるんですか、ルミエラ様は」
「そいつ…?」
そいつ、と言われて一人しかいないその人を見る。
その人は、「そうそう俺のことぉ~」と嬉しそうにしているけど。
「メルヴィア様のこと…ですよね。図書室に行った時に知り合ったんです」
「…それにしては随分と親しげですけどね…ルミエラ、ですか…へぇ~…」
「僕とルミエラはそういう仲なんですよぉ~。ね、ルミエラ~」
そう言って私に近づいて来たメルヴィアは後ろから私を抱きしめた。
「ちょ、メ、メルヴィア様!お戯れがすぎますっ」
首に回って来たメルヴィアの手をどけようとするが、力が強くて引き剥がせない。
「メルヴィア・ヴォルヴィン。今すぐ、その人から手をどけて。流石に怒るよ」
下からスッと伸びて来た手がメルヴィアの腕を掴んだ。
かと思ったら、メルヴィアがすぐさま私から手をどけ、リュアンは頭を上げて上半身を起こした。
「いたた。ちょっとは手加減して下さいよ。跡が残ったらどうすんですか」
「それくらいで跡は残らないから。それよりも、ルミエラ様に触らないでくれるかな。穢れる」
いつも天使のようなリュアンからは考えられないような、汚物を見るような目で話している。
「ごめんごめん。そんなに怒らないで下さいよ。今日はリュアン様に話があってここに来たんです。単刀直入に言いますと、俺の力が必要ですよね?」
「…別に、お前なんかの力借りなくても僕一人で生徒会長になれるけどね」
「確かにそうですけど、それではあなたの身体がもたないでしょう?これから、ウィルニー様を解任するにあたっての証拠が必要になってくる。リュアン様を押す一派も集結しつつあるようだし、それをまとめなきゃいけない。とにかく今あなたに必要なのは人手だ」
「それでも僕一人でなんとかなるから、そんなの不要だよ」
メルヴィアを睨みつけるリュアン。
だけど、メルヴィアの方はまだ何か策があるのか、余裕に笑みを浮かべている。
そんなメルヴィアを見ていたら、私に目を合わせて来た。
「…?」
ニコニコとこちらに笑みを向けるメルヴィアの意図がよく分からない。
「ルミエラ様もそう思いますよね?僕一人でも大丈夫ですよね?」
リュアンが唐突にそう聞いて来て、メルヴィアの意図がようやく分かった。
「わたくしはリュアン様の身体が心配なので、是非メルヴィア様にも手伝ってほしいと思っております」
「仕方ないから手伝ってもいいよ」
メルヴィアはそう言ったリュアンに、「即答ですか」と苦笑気味だった。
「じゃぁ、俺は解任するための証拠を集めて来ます。あと、証人もね。じゃぁねぇ~、ルミエラ」
メルヴィアは私の頬にキスを落とすと、すぐに保健室を出て行った。
その後、私はメルヴィアにキスされた頬を手でおさえる。
私のその手に、そっと細くて白い手が重ねられた。
「…リュアン様?」
重ねられた手を不思議に思いながら、リュアンを見ると、ニコリと微笑んではいるが、怒っているような気がする。空気がピリピリとしているからだ。
リュアンは何も言わずに、私の手をどけると、さっきキスされた場所をゴシゴシとポケットから出したハンカチで拭いた。
「え?あの…」
どうしたんですか?と聞こうとしたら、ハンカチがどけられ、キスされたその場所にリュアンの唇が押し当てられた。
「消毒です」
「しょ、消毒…?」
それは消毒っていうの?消毒なら、ここ保健室だから消毒液を使えばいいんじゃ…
「…あ、あの消毒液を使いましょうか?リュアン様って潔癖なんですのね」
私は立ち上がろうとしたけれど、両腕をがっちりとリュアンに掴まれて、そのまま押し倒されたため無理だった。
頭が少しぐらぐらする。
でも、次の瞬間頭がスッキリした。
だって、リュアンが私の唇に自身の唇を重ねたのだから。
「大丈夫です。消毒液は必要ありません」
唇を離すと、そうニコリと笑顔を向けて、私の唇をゆっくりとなぞる。
「…分かりませんか?妬いてるんです」
やいてる…?って、焼いてるではないよね…流石に私もそんな馬鹿じゃないし。
「嫉妬…して、たんですか?」
「そうです」
リュアンが誰に嫉妬を…?もしかして…
「そうとは知らずごめんなさい。リュアン様は…男の方が好きでしたのね」
そういうことだったのね。男が好きだったのか!それでイアナにも惚れなかったのね…そうか、そうかそうか!
一人納得していたら、掴まれたリュアンの手に力がこもった。
「いたっ…」
あまりの痛さにそう声を出すと、リュアンははっと気がついたように、手を離した。
「…すみません」
「あ、あのリュアン様」
「枕はもういいです。今は…一人になりたいです」
「え?あっ、はい!」
もしかしてデリケートな話だっただろうか。
私は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、急いで立ち上がり、保健室を出た。
「男が好き…なわけないんだけど」
僕は眼鏡を取り、痛み出したこめかみを抑えた。
どんな難解な問題や、書類よりも彼女以上に悩まされるものはない。
唇を交わしたって、好きだって言ったって意味ない。僕のことを男としてみていない、彼女は。
「…どうしたら僕だけのものになってくれるんだろう」
「怖いこと言わないでくれよ。俺をロッカーに押し込んだまま」
「あぁ…そっかベルティー…君いたんだっけ」
「いたんだっけ、って…」
呆れた様子でため息をつくベルティー。
「俺がいるっていうのにいちゃつかないでよ。困るだろ?」
はぁぁ…と深いため息を吐いたベルティーは、一人がけのソファに腰を下ろした。
ルミエラ様が保健室に来た時にベルティーを無理やり掃除道具が入っていたロッカーに押し込んだのを忘れていた。
根に持っているのか、じと目でこちらを見つめてくるベルティー。
「君は俺がいるって分かってるんだから、少しは遠慮をしてくれよ。君達のいちゃいちゃしてるのを見せられてる俺の気持ちになってくれよぉ…」
「…」
メルヴィア・ヴォルヴィン。次期国王の補佐役。国王の側に仕える身としては彼以外にいないと言ってはいいほどだけど…でも。
そんな心強い補佐役がもしもルミエラ様のことが好きならこいつ以上の敵はいない。
初めて会った時は教養のあるできた子供だと思っていたけれど…。
だんだんと僕と張り合うようになってきて何かと勘に触る男だった。
さっきも僕のものなのに勝手に触れて…抱きしめたり、頬にキスしたり…軽々と僕を超えようとしてくる。
「おーい。聞いてるの、リュアンー」
「うるさい」
考え事をしているから無視してるっていうのに本当にうるさい。
「ひぃっ!?おいおい、ちょっと落ち着いてくれよ。君が怒ると怖いんだよ」
「母上よりもね」と付け足してからベルティーは大人しく黙った。
減らない口だから、いつ喋り出すかわからないけれど。
それにしても、ルミエラ様はどうしてあんな男を軽々と許してしまうのか。ただでさえ危機感が足りなくて無防備なのに。あんな男に気を許しでも、したら…。
「何を考えているのかは知らないけど落ち着いてよリュアン!君のそのオーラも怖いんだよ!」
いつのまにか何か変なオーラを出していたらしい。分からないけど、しまったことにしておこう。
「あっ、引っ込んだ」
そうベルティーが言う。
「君には何か不思議なものでも見えてるの?」
「うん。どす黒いオーラが見えたよ」
「そう。精神が安定してないんだね。大丈夫、あとで安定剤を打ってあげるよ」
「そんなに穏やかに言わないでよ。君がいうと本気に聞こえてくる」
「本気だよ。君、頭もおかしくなってるね。もともとの馬鹿さを除いて」
本音を言うと、ベルティーは落胆した様子で「もう、何を言っても通じない気がするよ…」と悲壮感に満ちている。
「それはきっと君の語彙力が足りないからだよ」
微笑んで言ってあげると、泣き出した。本当、すぐ泣く。こういうのをヘタレって言うんだっけ。
「君のことはどうでもいいんだけど、問題はルミエラ様だよ。君も聞いたでしょ?僕に男が好きなのかって」
「あれは笑ったよー!まさかあんなこというとはね~。ルミエラ様もやるなー」
ベルティーはそう言いながらケラケラと笑う。
「…なんかイラつくから、一発殴らせてよ」
「えぇ!?ご、ごめんごめんリュアン!馬鹿にしたつもりはないんだよ」
馬鹿にしたつもりはないとかそういうことではないんだけどな…ただ、君のあの笑い方が妙にイラつくというか、なんというか…。
「それにしても相変わらずの鈍感だね~」
「本当だよ。なんであそこまで鈍感なのか…」
「リュアン!押してダメなら引いてみろって言うだろ!やってみようよ!」
「引く…?」
そんなことして意味あるのかな。
訝しげな目でベルティーを見ていたら、「も、ものは試しだよ!保証はできないけど…」そう言ってきた。
最後の方にこそっと言った「保証はできないけど…」って言う言葉もちゃんと聞こえてたから。
「…まぁ、これから忙しくなるし。からかえなくなるしね。一回試してみようかな」
ルミエラ様をからかうのができなくるのは少し寂しいけれど…
そう思いながら立ち上がった。
「どこ行くの、リュアン」
「安定剤を部屋まで取りに行くの」
「え?なんで…?」
「君に飲ませるためだよ」
歩き出した僕をベルティーは必死に止めた。
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