ぼくの万能魔法で、フェンリルの子を最強のもふもふに育てあげたいと思います。

榊原モンショー

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【閑話】クレア・シュネーヴル③-1

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 ――4年前、シュネーヴル邸。

「クレア。今朝二週間ぶりに帰って来たかと思えば、もうどこかへ行ってしまうんですか? お父様もお母様も、言いはしないだけでとても心配していたんですよ?」

 当時のクレアは、17歳。
 サルディア皇国首都内、貴族街出身の彼女にとって、そこはまるで檻の中同然に等しかった。

「姉貴はいちいちうるせェんだよ。わたしがどこで何してようが、カルファの姉貴にゃ関係ねェだろ」

「関係ないも何も……! 首都にそんな大きな生き物連れて突然帰ってきたら、姉なら心配するでしょう!?」

「へへへ、コイツ、ついにわたしの相棒になったんだぜ。な、ポゥ吉!」

「わっふ!」

「ま、全くあなたって人は昔から……」

 シュネーヴル邸の広々とした玄関には、一振りの刀を携えた紅髪のロングストレートを持つ少女と、彼女の腰ほどの背丈がある真っ白い犬がいた。
 ちょこんと大人しく座る真っ白な犬は、主人クレアが話し掛ける女性の方へと興味津々そうだ。
 そんな自由奔放すぎる妹を見て、姉のカルファ・シュネーヴルは頭を抱え込んだ。
 金色の長髪をくしゃくしゃにしてカルファは言う。

「お父様とお母様も、代々皇王様のお側にお仕えした由緒正しきシュネーヴルの血を引いているというのに、どうしてクレアはいつもいつもそうなのです」

「はいはいそーですか。そりゃカルファの姉貴がやったらいいんじゃねェの。魔族倒すために世界から集められたっつーすげぇ団体の一員にもなったんだろ? 皇王様のお側にお仕えするのは姉貴のが適任だろう。親に勘当されてるわたしには縁がないさ」

「――ァウッ!!」

「勘当とは言いますが……クレアが謝りさえすれば、家にだって戻ってこられるでしょう?」

「汚い犬引き連れて野蛮な連中とつるんでる奴は、ウチの娘じゃない、だろ。ちょーどいいじゃねェか。わたしにゃこっちのが性に合ってんだ。今のわたしの夢は、皇王様のお側にお仕えすることじゃねェ。ポゥ吉と二人で世界最強の冒険者になることだからな」

 わしゃわしゃとクレアが雑にポゥ吉の頭を撫でれば、ポゥ吉も嬉しそうに尻尾を振った。

「ポゥ吉、ですか。そもそも魔物ですらない『動物』と魔物退治なんて、割に合わなそうなんですけどね……。はぁ、《鑑定》」

「おぉ、さすが世界最強の鑑定士。フェウ、隠された能力が暴かれるかもしれないなァ?」

「そんな都合の良い能力あるわけないでしょう、バカクレア。もう」

 カルファ・シュネーヴルの職業は《鑑定士》。
 魔物を生み出したという魔族領域ダレスに向け、増えすぎた魔族を討伐するために世界中から強者中の強者を集めて組織された|《世界七賢人》の一員だ。
 じきに国外へと向かう姉の顔を一目見ておくためにと、クレアもわざわざ遺恨のある実家へも戻ってきているのだった。
 
【名前】 ポゥ吉
【種族】 デミウルフ《イヌ属タイリクオオカミ亜種》
【性別】 ♂
【年齢】 3歳
【クラス】 C
【体力】 C
【筋力】 C
【防御力】 D
【魔力】 -
【俊敏性】 B
【知力】 B

「【魔力】無し……私も実物は初めて見ましたが本物の動物、なんですね」

「魔力は魔族、悪い心の欠片かけらってほどだからな。魔力の無ぇポウ吉は、世界一心がキレイな奴ってことだな!」

「それは言い過ぎだと思いますが……」

 クレアはポゥ吉にペロペロと顔周りを舐め回されて、困った顔をしながらも嬉しそうだ。
「まぁ、妹の元気そうな顔も見られて私は安心しましたよ。どうせ言っても聞かないでしょうけどあなたの冒険者戦果は、しっかり目を通していますからね。変なことはしないように。シュネーヴル家の名前に恥じぬように」

「わぁった。分かりましたよ。んじゃな」

「《世界七賢人》として魔族討伐から帰還したら! 私の権限で何が何でもクレアを招聘しますからね! 中央のギルドに! せめて皇国の為に、『デスペラード』に入って貰いますからね!!」

「よっし、行くぜ相棒!」

「ワォンッ!!」

 シュネーヴルの家から飛び出すようにして、一人と一匹は次なる任務に出た。

「……一人ぼっちじゃ、なくなったんですね」

 元気に飛び出た二つの影を見て、姉のカルファは少し寂しそうながらも小さな微笑みを見せていた。
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