最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

七話

賑わう商店街。
ここは数多くの貴族が集まる、貴族の溜まり場。
宝石や純金など平民には絶対に手が届かないものが揃っている場所。
レアンは路地裏に入る。
商店街の裏にあるのは、スラム。
汚く、暗い雰囲気をした町並みだが、レアンはよくここで情報を集める。
レアンが来るとスラムの子どもたちが騒ぎ出した。
「レアンおにーちゃん！！」
「久しぶり！」
そう言われ、くっつかれるレアンの目はとても優しい。まるで妹や弟を見ているような目。
ここは確かに忌み嫌われているがレアンにとってはどこよりも温かい場所だ。
「久しぶり、みんな」
「うん！おにーちゃんは今日も長老に用？」
レアンは頷く。
「そうだよ。長老の居場所わかる ？」
するとまだ6歳くらいの短い髪の女の子が言った。
「あたし知ってるー！」
「おっ、じゃあ、案内してくれる？」
「もちろん！」
大きく頷くとレアンの手をつかみ、引っ張り出した。
するとその他の周りにいる子どもたちが更に騒ぎ出した。
「あー、ずるいー！！俺も行く！」
「じゃー私もー！」
「私も行っていい？」
レアンはみんなに微笑みかけた。
「じゃあ、みんなで行こうか。みんなで案内してくれる？」
「「うん！！」」
一斉に頷くと、みんながくっついて来た。
「みんな、これじゃ歩けないよ？」
「えーー！」
「いいじゃん！」 
レアンは困ったように笑うといった。
「仕方ないなぁ。じゃあ、行こうか、みんな」
「「はーい！！」」
そしてだんだん進むとくっついてくる子どもたちが増えた。
「みんな、重いよ」
「えーー！」
「いいじゃん！」
また困ったように笑うレアン。
大人たちに歓迎されたり、子どもたちにくっつかれたりしながら歩くと、長老の家についた。
木造の小さな家だ。子どもたちはドアを叩き、勢いよく開けた。
「長ー老ー！レアンおにーちゃん来たよ！！」
レアンはドアをくぐり、頭を下げた。
「こんにちは、長老」
すると奥から老人の声がした。
「久しぶりだな。レアン。みんなもありがとう。……少しだけ外に出てなさい。」
白いひげを蓄えている長老はもう五十を過ぎている。貴族にとってはまだ生きている年齢だが、不衛生なここでは長生きの部類だ。
「「えー！！」」
不満全開の顔をするみんなにレアンは言った。
「後で遊んであげるから、まずはみんなで遊んでて」
するとみんなは渋々頷いた。
「絶対だぞ！」
「うん、分かってる」
そして渋々出ていく子どもたち。
みんなが出ていき、しばらくすると、長老は言った。
「レアン、また任務かね？」
長老はレアンの身分を知っている。
長老はレアンの魔術師としての師匠だ。
「はい、師匠」
「何があった？」
「実は……」
そして全て説明する。
「なるほど……」
「その印が押されていない書を見せてくれ」
「……どうぞ」
そして数秒見ると、首を縦に振った。
「うん、これは公爵の字ではない。……しかしお前の警戒を裏目にとるなんてな……相当の手練だな」
「考えたくもありませんが、僕は親友にも僕の任務での行動は知られていません。なので僕の行動を知っている、親しい存在としか思えません」
すると長老が難しい顔をした。
「うーむ……しかし、この字には見覚えがあるのだ」
「え……！」
レアンは身を乗り出した。
「誰ですか？！」
すると長老はレアンの目を見た。
「教えてもいいが、後悔はするな」
「え……？」
「お前はきっとそれを聞いたら悲しむし、後悔する。なぜならだいぶ最近のお前もお世話になっている人だからな」
最近の？
レアンは嫌な予感がしてきた。
聞きたくない、とも思った。
けど……
「教えて下さい、師匠」
「そうか、分かった」
そして師匠は僕の顔をじっと見た。
「この字の主は…」
レアンを見る目は、憐れみをおびていた。
「ハンナ・ローガン」