最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

りう

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十話

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「さて、ディラン。前までやってたのを繰り返して。パウエルさんは一回得意な魔法を使ってみて」
「おっす!」
「わかった!」
するとディランは魔力制御の、フローラは魔法の発動に入った。 
ここは練習場。いつもどおり教室でも良かったのだが、フローラには魔法を教えるつもりだっため、練習場に来た。
魔法は想像だ。
あらゆる現象の発動条件を知っていなければ、魔法は発動できない。魔法を使うには、魔力以外にも頭脳が必要になる。だからこの学校では赤点を2回とったら退学なのだ。
……遅い。
魔法の発動に時間がかかっている。
三十秒、四十秒と時間が経つ。
「……はっ!」
そしてやっと魔法が発動した。
水の滝が地面に落ちる。
そしてこっちを心配そうに見る。
「まずいいところ。いいところは魔力制御がうまい。……あと、悪いところ。魔法の発動が遅い。たぶん水の発動条件をわかってない」
しゅん、とするフローラ。
レアンは火の魔法の応用、蒸発を使い、水を蒸発。
「でも、もっと遅い人だと二分くらいかかるから、気にやまなくて大丈夫。魔術師になるには実践が一番だ。けど今日は水の発動条件について教える」
「わかった」
しっかりうなづくフローラ。
「水の発動条件はなんだと思う?」
「私の場合は、湖、とか……」
「大体の人はそうだ。けど、もう一つ質問。じゃあ、湖の水はどこから来たんだろう?」
フローラは首を傾げ、考える。
「ええっと……あ!雨?雨降ったら湖の水の量、増えるよね?」
レアンは満足げに頷く。
「そう。じゃあ、雨はどうやってできるんだろう?」
「え……?」
全く分からないようで、視線を彷徨わせる。
「ディラン、教えようとしないの」
フローラに耳打ちしようとしていたディランを止める。
「できるようになったから!」
子供のような言い訳をするディランにレアンはため息をつく。
「じゃあ、ディラン。特訓のせいか、見せてもらおうか」
「も、もちろんだ!」
そして始める。
「……うーん、だいぶ良くなったけど、やっぱり魔力量が足りない。もうちょっと、頑張って」
「……はーい」
「嫌ならやめてもいいんだよ?」
「や、やる!!嫌じゃないから!」
そしてまた集中し始めたディラン。
レアンはフローラに向き合った。
「わかった?」
フローラはため息をつく。 
「ううん、全くわからない」
「じゃあ、説明するね。空間の中にある物質だ。水はその物質同士がくっつきあってできる。僕たち魔術師は水ができる根源まで探るという研究もしている。だから僕たちは魔法をすぐに発動できる。そうしないと暗殺者としてやっていけないからね。……じゃ、もう一回やってみて」


そうしているうちに生徒たちが登校する足音が聞こえた。
「じゃ、今日はここまで。今はテスト期間中だし、無理にとは言わないけど、なるべく部屋でも練習して。積み重ねもだいじだ」
「わかった……にしても疲れた……」
「おつかれパウエルさん。でも、体力も大事だよ」
「……はぁい」
急ぎ足で教室に戻る。
ふとフローラが言った。
「わたしのことはフローラって呼んでくれると嬉しい」
「あ、了解」
フローラは笑うと、疲れたようで机に突っ伏した。


今日、タイラーたちは学校をなぜか休み、レアンが暴言を浴びせられることはなかった。
「今日はありがとう。朝、付き合ってもらっちゃって」
「ううん、こっちも楽しかったし。……にしてもフローラ、呑み込み早いね。びっくりした」
「先生の教えがいいからだよ」
「先生はやめてほしいなぁ」
そう言い合って、お互いにくすくす笑っていると、隣で居心地悪そうにしていたディランがいった。
「お前たち、仲良すぎないか?」
レアンとフローラは首を傾げる。
「そう?」
「そうかな?」
ディランは疲れたように肩を落とした。
「そうだよ」
レアンはそんなディランに気づいた様子はなく、フローラに言った。
「明日はまた学校を休むことになるから、朝はやらなくてもいいし、二人だけでやってもいい。昨日とかはどうしてたんだ?」
「ディランくんとふたりで」
「そっか。じゃあ、どっちでもいいから」
「わかった」
そしてディランが言った。
「俺を無視するな!」
楽しい学園生活は今日でお預けだ。
明日からは任務の続きがある。
国内一の魔術師育成学園の校長になるほどの実力がある魔術師。
「闇の暗殺者」と呼ばれている最強暗殺者。
その二人が本気で争うのだ。
血を血で洗うような混戦になるのは明らかだった。
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