最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

りう

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十三話

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二人の間にスパークが走ったような気がした。
「準備はできましたか?」
子爵が笑みを浮かべて言う。
レアンは剣を持ち、軽く振り、真顔で言った。
「僕はいつでも構いませんが」
「じゃあ、私から行かせてもらおうかな」
「お好きに」
そうレアンが言ったと同時に子爵が魔法を放った。
「……はっ」
そう言いながらレアンが剣をふる。 剣が魔法を斬った。
すると魔法が消えた。
「……は?」
子爵が口を開けた。
「次はこっちだね」
レアンは言う。
気合のようなものはなく、しかし隙はなく、子爵の瞳を睨む。
ーーふとレアンの姿が消えた。
「なっ……」
即座に反応したのはさすがというべきだ。
しかしレアンが一枚上手だ。
その反応速度よりレアンの速さが勝っていた。
「……くそっ!!」
剣筋が見えのでその方向に手をかざし、即座に魔法で鉄を作り、盾を作ってガード。
「へぇ……これを反応するのか……」
レアンが感心したように言う。
「……ははっ、あなた、本当にとんでもないですね……」
「どうも」
レアンが嬉しくなさそうに言う。
「君とやると、とてもたのしいです。こんなワクワクしたのはいつぶりでしょう……」
「知りませんよ、そんなこと」
冷たく言い放つレアン。
しかし子爵は嬉しそうにずっと笑っていた。
狂っていた。
その男は人を殺すことに喜びを感じていた。
子爵は今まで人を殺したことはなかった。
しかし今まで我慢していた。
主に、ハンナに、「我慢しろ、もうすぐ殺させてやる」といわれていたからだ。
それを見越したようにレアンが言った。
「お前、おかしいな」
今まで敬語だった言葉が変わった。
しかしそんなことは気にせずに子爵は笑った。
「ええ、おかしいですね、私。狂っています。いつからか私は人を殺すことに喜びを感じてしまっているのです。今、私はあなたと殺し合えることに喜びを感じています」
レアンは眉を寄せる。
「いつからだ」
「……さあ、忘れてしまいました」
そしてお互い飛びずさり、距離を取る。
「では私からですね」
「あぁ」
そして手のひらを前出し、魔法を出す。
「はぁ!」
光の上位魔法、「白閃光」。
名前がついているほどの上位魔法は数少ない。
「白閃光」は、全魔法の中で最も速い魔法だ。
レアンのスピードを封じるのはこれがベストだろう。
しかし「白閃光」は速いが、真っすぐにしか進まないという特徴がある。
それを見切れば……
そして「白閃光」が放たれた。
レアンは一歩横にうごいた。
それで魔法はレアンの横を通る……と思ったが。
「はぁ?!」
レアンを追いかけてくる。
「くそっ!」
レアンは剣を振る。
魔法を斬る。
その隙にレアンの懐に潜り込む子爵。
「くっ!」
レアンはすぐに飛びずさり、放たれる火魔法を避けようとする。
しかし、魔法はレアンをかすめる。
剣だとかすり傷で済むが魔法だとそうもいかない。
右腕と右頬が焼ける感覚。
「いっ……」
「レアン!!」
「レアンくん!!」
ディランとフローラの悲鳴。
その他の(敵では無い)生徒の悲鳴も聞こえた。
レアンは騒ぐみんなを落ち着かせるために、上空に爆発火魔法を放つ。
ドオォン!!
みんなが静まり返る。
そして風魔法を駆使して声を大きくする。
「大丈夫だから!騒がないで」
レアンが光魔法の最上級治癒魔法、「神の息吹」を遣い、傷を治す。
レアンは子爵に向き直った。
レアンは今までにないくらい集中していた。
なぜなら彼をこんなに傷つけたのは子爵が初めてだからだ。
レアンの眼は鋭く細められた。
「上等だ……本気を出そう」
レアンは抑えていた魔力を解き放つ。
その魔力は今までに感じたことのないほどの量の魔力だった。
「待って……これが、レアンくんの、魔力……?」
「ああ、そうだよ。これがレアンの本気だ。今までは無理やり押さえつけてた」
フローラとディランが話しているとディランの隣の女子生徒が言った。
「でも、レアンくんのこの魔力、多すぎる……」
フローラの隣の男子生徒も言った。
「俺、レアン以外の王宮の魔術師、見たことある。けど……こんなに多くなかった。やっぱりレアンって……」
そしてディランが頷く。
みんながディランを見る。
「ああ、そうだよ。ここにいる人たちだけには言っておく。けどここにはいない人には秘密だ。いいな?」
敵以外の生徒が頷く。
「レアンは……レアン・オルドーラは……」
ディランがみんなをみまわす。
「あの最強の魔術師で、暗殺者。『闇の魔術師』、その人だよ」
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