最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

りう

文字の大きさ
14 / 31

十四話

しおりを挟む
一瞬周りが静まり返った。
すると一人が言った。
「そう、なんだ……レアンくんは私達より遠いところにいるんだね……」
ディランはうつむいた。
こうなるってなんとなく分かっていた。
「でも、レアンを避けたりしないでほしい。レアンはたしかにここにいる誰よりも強いし規格外だ。でも、何よりも普通の生活を望んでいるんだ」
みんなは無言だった。
そして誰かが言った。
「俺はレアンを避けるつもりもない。あいつは俺のクラスメイトだからな」
その男子は妙に落ち着いていた。
ディランはその男子を見ると、言った。
「もしかして、君、レアンのこと、わかってたの?」
「もちろん。レアンはよく俺の家に来てたからな」
ディランは眉をひそめる。
「君の、家?」
そして指さした所にあったのは……
「あ、ああ……なるほど……」 
王宮だ。


レアンはその景色を見ていた。そして男子生徒と目があったので、左胸に右手を当て、軽くお辞儀。
そして前を見る。
子爵はそのレアンの圧倒的な魔力に体が動かなかった。
レアンは子爵の後ろにまわり、剣を突き出す。
「……あ……」
フローラが声を上げた。
しかし、その後にはギィィィン!という金属音。
フローラのお父さんは剣を使っていないはずだ。
「え……?」
見るとレアンは、子爵に背中を向け、誰かと剣を合わせていた。
「子爵といい、ハンナといい、お前たちはどれだけ不意打ちが好きなんだよ?しかも今、子爵を狙っただろ?!仲間なんじゃないのか?!」
その誰かとは、言うまでもなくハンナだ。
「あらあら、さっきも言ったでしょう?私、自分のこと以外のこと、どうでもいいの。だからこの男の生死もどうでも良い」
「……お前……!」
レアンはハンナを睨みつける。
「しかし、なんでこの男をかばったの?あなたの敵よ?もしかして、大事な友達のお父さんだから、って言わないでしょうね?」
「そのとおりだが?」
「あらあら……まさかの……敵をかばうなんて……失望ね」
「お前が感じていることなんてどうでもいい」
レアンは何かをつぶやく。
するとすぐに来た人はレアンに任務を持ってきたあの剣士だ。
「なんでしょうか、レアン様」
「そこに倒れている男を王宮へ連行しろ」
「はっ!」
そして男を担ぐ。そして振り向き、レアンに言う。
「ご武運を!」
レアンは一言。
「ああ」
その様子を見ていたハンナは、レアンを挑発するように言った。
「あの剣士に助けてもらわなくてよかったの?」
「ああ。お前程度なら一人で充分だ」
「あらあら、やる気あるわね。やっぱり自分は最強って思ってたりするの?」
「ないよ。自分が最強だって思ったこと」
レアンはハンナを見据える。
「……ただ、自分が最強だって思っているやつには負けない」
「へぇ……」
ハンナとレアンはお互い距離をとった。
レアンは剣を腰の鞘にしまう。
「ここからは魔法勝負だ」
「いいですね、面白そうです」
静寂。
まず、ハンナが動いた。
「はぁっ!」
気合を入れながら放ったのは、水魔法、「龍の滝」。
龍のようにうずまきながら水が頭上から落ちてくる。
レアンは無言で手を伸ばす。
じゅっ………
そう音を立て、水が消えた。
これは生徒の中ではフローラやディランが知っているが、水を蒸発させる魔法。
魔術師なら誰でもできる芸当だが、こんなに規模が大きい「蒸発」初めてだったらしく、ハンナが目を見開いている。
「いまの……蒸発……?」
あり得ない、そう顔に書いていた。
「じゃあ、次はこっちから行くぞ。最強なら、行けるだろ?」
そういうレアンの顔はどこまでも怖く、まるでディランが知らないレアンだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...