15 / 31
十五話
しおりを挟む
睨むレアンにハンナはほんの少しだけ怯んだ。
(くそっ!この私があんな子供に怯む……?あり得ない!)
あいつのせいだ。子爵がしっかりこの子供を殺さないから……!私がしっかり暗殺者に育ててあげたのに……!
レアンはハンナに言った。
「ハンナ。お前、子爵に何をした?」
ハンナは無理やりニヤリと笑った。
「さぁ、何をしたんでしょうねぇ……?」
レアンはハンナに言った。
「子爵はいつからか、殺すのが好きになった、と言っていた。お前がなにかしたのだろう?ハンナ」
「ええ、そうよ」
ハンナは相変わらず笑顔のままだ。
「あなたは催眠、という言葉を知っているかしら」
「……催眠?」
レアンは知らなかった。そういう人をありのままに動かす、ということがレアンは好きではないからだ。
「ええ。なんていうのかしら……?人の意思関係なく指示できるのよ。そして催眠状態の人はそれに従いやすくなる。ね?すごくいいと思わない?」
「……お前……!」
レアンはそういう考えのハンナに激怒した。
「人の心なんだと思っているんだ!!」
「あら、それ、あなたが言えたこと?」
「……は?」
「あなた、たくさんの人を殺してきたじゃない。もしそのターゲットが『生きたい』って思っても。たくさんの人の心を踏みにじってきたわねぇ、 レアンくん。そのあなたが言えたことかしら?」
レアンは何も言えなかった。
ハンナの言うとおりだと、内心思っているからだ。
何人も殺してきた自分がきれい事をいうことはできない。
うつむいたレアンをみて、ハンナは少し余裕ができた。
しかし観客席から声が聞こえた。
「レアンーー!あんなババアの言うことに耳を傾けるなー!」
「ばっ!!」
大きく反応したのはレアンではなくハンナだった。
「あんた!!よくも魔術師の私に向かってババァ呼ばわりしたわね!!」
「うるせーー!レアンを敵にまわしたやつは大体ババァかジジィなんだよ!!」
どういう根拠で言っているのか全く不明だが、レアンはそれだけで心が軽くなったような気がした。
レアンがそちらを向くと声の主、ディランはニヤッと笑った。
「レアン!こっちはやっといたよ!!」
そこにはぐるぐるまきにされたタイラーたち、ハンナの仲間たちがいた。
レアンはディランに笑いかけた。
「おう!サンキュー!」
ディランも笑う。
レアンはハンナに向き合う。
「なぁ、ハンナ。友達っていいな」
「そう思わないけど」
「だって、友達がいなかったら、多分僕、ここでお前に負けてた。でも、友達がいると負ける気がしなくなった」
そう言って笑うレアンの魔力が倍増した。
「な、なに?!」
「うそ?まだ本気じゃなかったの?!」
ディランも驚いている。
「レアンがこんな量の魔力を隠していたなんて……」
レアンは空に手をかざした。
「今、ハンナに僕が使える最強の魔法を見せる。それで立っていられたら僕の負けだ」
そう言い切る。
するとレアンの頭上で雷雲が渦巻く。
「うそ……」
「こんな大きい規模の魔法……見たことが……」
ディランも思わず言う。
「こんなの……魔法以上だろ……」
そして。周りが黒雲に染まった。
ゴロゴロ……という音がなる。
「行くぞ」
ドオォォン!!
雷が落ちた。
これはレアンが使える最大の魔法、「気候変動」。その中の「雷の鉄槌」。
雷は地面を深くえぐった。
土埃が舞う。
そして視界が妨げられる。
しばらく経つと視界がクリアになる。
ハンナは倒れていた。
「先生……死んじゃったの?」
レアンは言った。
「死んでないよ。生きてる。失神しているだけだ」
そして後ろの方に視線を向ける。
即座に来たのは先程子爵を連行した人、エルビン・ゲーラーだ。
「エルビン、連行して」
「はっ!」
そしてハンナを担ぐ。
「ディラン」
レアンはディランに声をかける。
「なんだ?」
そこには落ち着いた表情のディランがいた。
「これから仕事をしてくる」
「そうか。けど、一つだけ言わせろ」
そして一拍置く。
「お前、どれだけ俺たちを心配させれば気が済むんだ、この野郎!!」
「ご、ごめん……」
「無理、無茶しやがって!もう魔力ほとんどなくなってるじゃないか!!あの魔力量でほとんどなくなるって、相当だぞ!!」
「うっ……」
気候支配は、レアンほどの魔力がないと使えない。かと言って、レアンでもほとんどの魔力を使うのだ。連発は不可能。それで決着がつかなかったら、レアンは負ける。
「だけど、先生も含め、生きてたから許す」
「あ、ありがとう」
「じゃ、公爵ぶっ飛ばしてこい!!」
「あぁ。連行するか……して、陛下に引け渡せば終わりだから、夕方までに帰ってくるよ」
ディランは「連行するか」のあと聞こえなかったが、ディランはなんとなく分かっていた。恐らく、「殺したら」だろう。
ディランは少し表情を固くした。
レアンはうっすら笑っていた。その中にどこか悲しいものがあった。
もう太陽は上がっていていた。
学校の時計は六時半を指している。
「じゃあ、行ってくるね」
「おぅ」
ディランはそう言ってから付け足した。
「頑張れよ」
「あぁ」
みんなにも笑いかけて、王子には頭を下げて、去っていった。
その後、レアンは公爵と対決になり、罪は認めず、全て別の貴族になすりつけたため、結局レアンは公爵を殺した。
ハンナは国外追放され、ハンナに協力した者は牢獄入り。そしてまだ二十歳以下のタイラーたちは退学。
なのでこの学校の校長は新しくレアンの師匠がなり、少なくなった分、外部から編入試験で募集した。
そしてレアンの本当の身分を知っている者には口止めをした。
そしてまたレアンの落ちこぼれとしての生活が始まった。
(くそっ!この私があんな子供に怯む……?あり得ない!)
あいつのせいだ。子爵がしっかりこの子供を殺さないから……!私がしっかり暗殺者に育ててあげたのに……!
レアンはハンナに言った。
「ハンナ。お前、子爵に何をした?」
ハンナは無理やりニヤリと笑った。
「さぁ、何をしたんでしょうねぇ……?」
レアンはハンナに言った。
「子爵はいつからか、殺すのが好きになった、と言っていた。お前がなにかしたのだろう?ハンナ」
「ええ、そうよ」
ハンナは相変わらず笑顔のままだ。
「あなたは催眠、という言葉を知っているかしら」
「……催眠?」
レアンは知らなかった。そういう人をありのままに動かす、ということがレアンは好きではないからだ。
「ええ。なんていうのかしら……?人の意思関係なく指示できるのよ。そして催眠状態の人はそれに従いやすくなる。ね?すごくいいと思わない?」
「……お前……!」
レアンはそういう考えのハンナに激怒した。
「人の心なんだと思っているんだ!!」
「あら、それ、あなたが言えたこと?」
「……は?」
「あなた、たくさんの人を殺してきたじゃない。もしそのターゲットが『生きたい』って思っても。たくさんの人の心を踏みにじってきたわねぇ、 レアンくん。そのあなたが言えたことかしら?」
レアンは何も言えなかった。
ハンナの言うとおりだと、内心思っているからだ。
何人も殺してきた自分がきれい事をいうことはできない。
うつむいたレアンをみて、ハンナは少し余裕ができた。
しかし観客席から声が聞こえた。
「レアンーー!あんなババアの言うことに耳を傾けるなー!」
「ばっ!!」
大きく反応したのはレアンではなくハンナだった。
「あんた!!よくも魔術師の私に向かってババァ呼ばわりしたわね!!」
「うるせーー!レアンを敵にまわしたやつは大体ババァかジジィなんだよ!!」
どういう根拠で言っているのか全く不明だが、レアンはそれだけで心が軽くなったような気がした。
レアンがそちらを向くと声の主、ディランはニヤッと笑った。
「レアン!こっちはやっといたよ!!」
そこにはぐるぐるまきにされたタイラーたち、ハンナの仲間たちがいた。
レアンはディランに笑いかけた。
「おう!サンキュー!」
ディランも笑う。
レアンはハンナに向き合う。
「なぁ、ハンナ。友達っていいな」
「そう思わないけど」
「だって、友達がいなかったら、多分僕、ここでお前に負けてた。でも、友達がいると負ける気がしなくなった」
そう言って笑うレアンの魔力が倍増した。
「な、なに?!」
「うそ?まだ本気じゃなかったの?!」
ディランも驚いている。
「レアンがこんな量の魔力を隠していたなんて……」
レアンは空に手をかざした。
「今、ハンナに僕が使える最強の魔法を見せる。それで立っていられたら僕の負けだ」
そう言い切る。
するとレアンの頭上で雷雲が渦巻く。
「うそ……」
「こんな大きい規模の魔法……見たことが……」
ディランも思わず言う。
「こんなの……魔法以上だろ……」
そして。周りが黒雲に染まった。
ゴロゴロ……という音がなる。
「行くぞ」
ドオォォン!!
雷が落ちた。
これはレアンが使える最大の魔法、「気候変動」。その中の「雷の鉄槌」。
雷は地面を深くえぐった。
土埃が舞う。
そして視界が妨げられる。
しばらく経つと視界がクリアになる。
ハンナは倒れていた。
「先生……死んじゃったの?」
レアンは言った。
「死んでないよ。生きてる。失神しているだけだ」
そして後ろの方に視線を向ける。
即座に来たのは先程子爵を連行した人、エルビン・ゲーラーだ。
「エルビン、連行して」
「はっ!」
そしてハンナを担ぐ。
「ディラン」
レアンはディランに声をかける。
「なんだ?」
そこには落ち着いた表情のディランがいた。
「これから仕事をしてくる」
「そうか。けど、一つだけ言わせろ」
そして一拍置く。
「お前、どれだけ俺たちを心配させれば気が済むんだ、この野郎!!」
「ご、ごめん……」
「無理、無茶しやがって!もう魔力ほとんどなくなってるじゃないか!!あの魔力量でほとんどなくなるって、相当だぞ!!」
「うっ……」
気候支配は、レアンほどの魔力がないと使えない。かと言って、レアンでもほとんどの魔力を使うのだ。連発は不可能。それで決着がつかなかったら、レアンは負ける。
「だけど、先生も含め、生きてたから許す」
「あ、ありがとう」
「じゃ、公爵ぶっ飛ばしてこい!!」
「あぁ。連行するか……して、陛下に引け渡せば終わりだから、夕方までに帰ってくるよ」
ディランは「連行するか」のあと聞こえなかったが、ディランはなんとなく分かっていた。恐らく、「殺したら」だろう。
ディランは少し表情を固くした。
レアンはうっすら笑っていた。その中にどこか悲しいものがあった。
もう太陽は上がっていていた。
学校の時計は六時半を指している。
「じゃあ、行ってくるね」
「おぅ」
ディランはそう言ってから付け足した。
「頑張れよ」
「あぁ」
みんなにも笑いかけて、王子には頭を下げて、去っていった。
その後、レアンは公爵と対決になり、罪は認めず、全て別の貴族になすりつけたため、結局レアンは公爵を殺した。
ハンナは国外追放され、ハンナに協力した者は牢獄入り。そしてまだ二十歳以下のタイラーたちは退学。
なのでこの学校の校長は新しくレアンの師匠がなり、少なくなった分、外部から編入試験で募集した。
そしてレアンの本当の身分を知っている者には口止めをした。
そしてまたレアンの落ちこぼれとしての生活が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる