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十六話
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レアンとディランの新しい学校生活が始まった。
新しい生徒も入り、順風満帆かと思いきや、レアンはまたもやいじめの対象になっていた。
「ちょっ、何なの?君!」
まだ名前を知らない生徒に追いかけ回されるレアン。
ここは食堂。もう昼ご飯の時間は過ぎているので誰もいない。
対してその生徒は笑っている。
「逃げてやんのー!弱虫ー!」
レアンにとってはその生徒の実力はたかがしれない。
しかし、やはりこの学校の生徒にとっては優等生に当たる。
「あ!レアンくん!」
レアンを見つけたのはフローラ。
だがレアンが追いかけ回されているのを見ると、怒り顔になった。
「ちょっと!なにしてるの?!レアンくんを追いかけない!君、名前は知らないけど、痛い目に言合うよ!校長先生に言うよ!」
その言葉にいじめっ子は悔しそうな、悲しそう顔をした。
フローラは美人で、実力もある。
そんな人に「名前は知らない」と言われたのだ。
「お、俺の名前はイザヤ・ロザース、十六歳。よろしくねフローラ」
にこやかな笑顔で言ういじめっ子、イザヤ。
レアンやフローラは十五歳だ。つまり二人の一つ上らしい。
しかしフローラは怯まない。
「君の名前なんてどうでもいい!!まず、レアンくんをいじめるのをやめる!」
ショックを受けた顔をするイザヤ。
「は、はい……」
あ、落ち込んだ。
「ここ、食堂よ!ここで走って、滑って何かあっても知らないからね!」
「……はい」
「しかも、もう五時よ!こんなところでみんなが頑張って自習してるのに、あなたはここで人を追いかけ回してたの?」
なんか先生と生徒みたいだ。
そうレアンが思うと、フローラが言った。
「はい、もう行く!」
うつむいて去っていくイザヤ。
レアンの前を通るとき、小さく言ったのをレアンは聞き逃さなかった。
「殺してやる……」
その声には明らかに殺気が混じっていた。
「ありがとう、フローラ」
イザヤが行ってからフローラにそう言うと、フローラは明るく笑った。
「ううん、私の魔法の先生だもん。あんなこと言われたら誰でも怒るよ。……でも、なんでレアンくんはいじめられるんだろう……」
「僕の外見のせいかもね」
レアンの外見は一言で、かわいい。
見る人によっては、女子と間違えるだろう。
それにレアンの背は小さいほうだ。なので余計、弱く見えるのだろう。
「実際は私なんか数秒も持たないくらい強いのに」
「そんなこと無いよ。僕は……物心ついたときから魔法の練習をしていたんだ」
「それは私もだよー」
「え?そうなの?」
フローラは笑みを浮かべる。
「うん。私んち、子爵だから、領地持っているんだけど、治めるだけのお金がなくてね、だからお父さんに、『お前は魔術師になってお金を稼いで、家を助けろ』って』」
「そうなんだ……」
「うん。でも蓋を開けてみたら、魔術師は暗殺者の仕事。もう嫌になった。……でも私、長男ではないから家を継ぐことはないんだけど、なにか貢献しなきゃって思ったの。だから嫌でも頑張ってた」
「大変だった?」
「もちろん。確か魔術師の採用試験の合格率って、たった数パーセントでしょう?だからさ、私、本当はなれると思っていないの。魔術師に。でもやっぱり助けたい。家も、領地にいるみんなも……」
確かにそうだ。何百人も受けてたった数人しか受からない。もっとひどい時は2千人受けて受かったのはたった一人だ。しかもその人がたった六歳の子供。
「魔術師の仕事は、人殺しだ。けど、それと同時に助かる人も出てくる。採用試験が驚くほどの難しさなのは、国のあり方を変えるかもしれない仕事だからなんだ。確かにお金目当てで魔術師になる人もいるけどその人は大体死んだよ。任務の時に、人を殺すことに怖気づいて、逆に殺される。そういう人をたくさん見てきた」
フローラは顔を真っ青にしている。
「僕が魔術師になったのはこの国を変えたかったから。家族をなくした子供たちが奴隷になるのも、盗賊に襲われたのが、上の権力でないことにされるのが。人を殺したくてなる人はいるはいるけど、その人は必ずハンナ先生みたいに追い出される。僕は魔術師の中でもかなり古参な方だからそんな人を……うん、やっぱりたくさん見てきた。……フローラ、この国をどう変えたいのか。それを考えてみな。そうしたら魔術師になる道が見えてくる」
フローラはうつむいて考えていた。
そして、顔を上げる。そこには何かが吹っ飛んだような清々しい顔があった。
その顔が窓から入ってきた夕日に当たり、より美しく見えた。
「ありがと!うん、頑張るね!」
「……ごめんね、偉そうに言って」
「ううん、さすが魔術師だね。なんか吹っ切れたよ」
「……そうか」
フローラはなにか思いついたように「あ!」と言った。
「そうだった!レアンくんに教えて欲しいのがあったの!こっち!」
レアンの手を取ると、フローラは走り出した。
「そういえば、フローラって、あんなふうに怒るんだね」
「あはは……私、普段はあんなふうに言えないんだけど。堪忍袋の緒が切れるとね……」
「そうなんだ」
あの後、ディランと合流して一緒に勉強した。その帰り道、フローラとそう話した。
新しい生徒も入り、順風満帆かと思いきや、レアンはまたもやいじめの対象になっていた。
「ちょっ、何なの?君!」
まだ名前を知らない生徒に追いかけ回されるレアン。
ここは食堂。もう昼ご飯の時間は過ぎているので誰もいない。
対してその生徒は笑っている。
「逃げてやんのー!弱虫ー!」
レアンにとってはその生徒の実力はたかがしれない。
しかし、やはりこの学校の生徒にとっては優等生に当たる。
「あ!レアンくん!」
レアンを見つけたのはフローラ。
だがレアンが追いかけ回されているのを見ると、怒り顔になった。
「ちょっと!なにしてるの?!レアンくんを追いかけない!君、名前は知らないけど、痛い目に言合うよ!校長先生に言うよ!」
その言葉にいじめっ子は悔しそうな、悲しそう顔をした。
フローラは美人で、実力もある。
そんな人に「名前は知らない」と言われたのだ。
「お、俺の名前はイザヤ・ロザース、十六歳。よろしくねフローラ」
にこやかな笑顔で言ういじめっ子、イザヤ。
レアンやフローラは十五歳だ。つまり二人の一つ上らしい。
しかしフローラは怯まない。
「君の名前なんてどうでもいい!!まず、レアンくんをいじめるのをやめる!」
ショックを受けた顔をするイザヤ。
「は、はい……」
あ、落ち込んだ。
「ここ、食堂よ!ここで走って、滑って何かあっても知らないからね!」
「……はい」
「しかも、もう五時よ!こんなところでみんなが頑張って自習してるのに、あなたはここで人を追いかけ回してたの?」
なんか先生と生徒みたいだ。
そうレアンが思うと、フローラが言った。
「はい、もう行く!」
うつむいて去っていくイザヤ。
レアンの前を通るとき、小さく言ったのをレアンは聞き逃さなかった。
「殺してやる……」
その声には明らかに殺気が混じっていた。
「ありがとう、フローラ」
イザヤが行ってからフローラにそう言うと、フローラは明るく笑った。
「ううん、私の魔法の先生だもん。あんなこと言われたら誰でも怒るよ。……でも、なんでレアンくんはいじめられるんだろう……」
「僕の外見のせいかもね」
レアンの外見は一言で、かわいい。
見る人によっては、女子と間違えるだろう。
それにレアンの背は小さいほうだ。なので余計、弱く見えるのだろう。
「実際は私なんか数秒も持たないくらい強いのに」
「そんなこと無いよ。僕は……物心ついたときから魔法の練習をしていたんだ」
「それは私もだよー」
「え?そうなの?」
フローラは笑みを浮かべる。
「うん。私んち、子爵だから、領地持っているんだけど、治めるだけのお金がなくてね、だからお父さんに、『お前は魔術師になってお金を稼いで、家を助けろ』って』」
「そうなんだ……」
「うん。でも蓋を開けてみたら、魔術師は暗殺者の仕事。もう嫌になった。……でも私、長男ではないから家を継ぐことはないんだけど、なにか貢献しなきゃって思ったの。だから嫌でも頑張ってた」
「大変だった?」
「もちろん。確か魔術師の採用試験の合格率って、たった数パーセントでしょう?だからさ、私、本当はなれると思っていないの。魔術師に。でもやっぱり助けたい。家も、領地にいるみんなも……」
確かにそうだ。何百人も受けてたった数人しか受からない。もっとひどい時は2千人受けて受かったのはたった一人だ。しかもその人がたった六歳の子供。
「魔術師の仕事は、人殺しだ。けど、それと同時に助かる人も出てくる。採用試験が驚くほどの難しさなのは、国のあり方を変えるかもしれない仕事だからなんだ。確かにお金目当てで魔術師になる人もいるけどその人は大体死んだよ。任務の時に、人を殺すことに怖気づいて、逆に殺される。そういう人をたくさん見てきた」
フローラは顔を真っ青にしている。
「僕が魔術師になったのはこの国を変えたかったから。家族をなくした子供たちが奴隷になるのも、盗賊に襲われたのが、上の権力でないことにされるのが。人を殺したくてなる人はいるはいるけど、その人は必ずハンナ先生みたいに追い出される。僕は魔術師の中でもかなり古参な方だからそんな人を……うん、やっぱりたくさん見てきた。……フローラ、この国をどう変えたいのか。それを考えてみな。そうしたら魔術師になる道が見えてくる」
フローラはうつむいて考えていた。
そして、顔を上げる。そこには何かが吹っ飛んだような清々しい顔があった。
その顔が窓から入ってきた夕日に当たり、より美しく見えた。
「ありがと!うん、頑張るね!」
「……ごめんね、偉そうに言って」
「ううん、さすが魔術師だね。なんか吹っ切れたよ」
「……そうか」
フローラはなにか思いついたように「あ!」と言った。
「そうだった!レアンくんに教えて欲しいのがあったの!こっち!」
レアンの手を取ると、フローラは走り出した。
「そういえば、フローラって、あんなふうに怒るんだね」
「あはは……私、普段はあんなふうに言えないんだけど。堪忍袋の緒が切れるとね……」
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