最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

りう

文字の大きさ
17 / 31

十七話(上)

しおりを挟む
ここはハンナとレアンが戦った訓練場。
土埃が舞い、大きなクレーターのようなくぼみが二つ。
レアンはまたこの学校の生徒と向かい合っている。
お互いに殺気をぶつけ合って。
「さぁ、いくよ、闇の魔術師さん」
レアンが激しく息をしているのに対して、生徒は息が全く乱れていない。
そしてふとレアンの頭上に……巨大な火球が現れた。




遡ること数日。
レアンはいつも通りディラン、フローラと学校に通っていた。
やはり時間は早く、誰もいない。
玄関につき、早速入ろうとすると、後ろから声をかけられた。
「お前、あの『闇の魔術師』だろ?」
レアンは少し遅れながらも振り向く。
「まさか。僕みたいな落ちこぼれが『闇の魔術師』なわけないよ」
するとその生徒、イザヤは、鼻で笑った。
「うそつくなって。バレバレなんだよ。俺にはな」
その声には殺気は微塵もなかったが、憐れみがあるような気がした。
それにイザヤがレアンに声をかけたとき、レアンは反応が遅れた。
ただ者ではない。
レアンはそう直感した。
「何者だ、お前」
「いやー、何者でもないよ。この国ではただの国民。けど、違う国では……魔術師だよ」
レアンは表情を険しくする。
「つまり、僕を狙ってここに来たと?」
「へぇ、そこまで分かるんだ。やっぱり侮れないな」
「違う国って、どこだ」
「……ウールヴェルム王国」
ウールヴェルム王国は、魔法が発展している国だ。この国よりも圧倒的に発展している。レアンが知らない魔法もたくさんあるだろう。
「なんでウールヴェルムの魔術師が僕を狙う?」
「脅威だから」
「はぁ?」
「自分では分かっていないだろうけど、君の力は世界中を見ても圧倒的な強さだ。この僕をも抑えるだろうね。ウールヴェルム王国、最強と言われる僕を、さ」
だからなんだ。
レアンはそう思った。
今、この世界は戦争などない。だから、他国の強者が自国の脅威になるなんてありえないのだ。
でも、もしかして戦争を起こそうとしていたなら……
「この国と戦争をするつもりか」
レアンが聞く。
無言。
この国、ハイズガード王国は、科学、魔法、等が平等に発展している。なので武力としては劣るが、知識としては勝てる。
しかしやはりいくら知識が高くてもそれを実行できる武力がなくてはだめだ。
「なんで仕掛けるつもりだ」
「それは言えないなぁ」
「言え」
「嫌だね。それ以上言ったら怒られちゃうから。……でもこの俺に魔法で勝ったなら戦争は取りやめだ。あの国に俺以上の魔術師はいないから。……どうだ?」
レアンは眉をひそめる。
「つまり、これは魔術師同士の戦いってこと?」
「うん。ターゲットと暗殺者って関係」
「お前……!」
「お?やる気になったか?ちなみに俺はいつでも殺る気だぞ?」
その言葉にディランが言った。
「レアン、やめろよ。もうお前が人を殺すな」
気遣うような口調。
「そうよ。レアンくん」
しかしレアンは言った。
「いつからだ」
「…レアン!!」
「レアンくん!!」
「やる気になったのか。いい。決戦はここの訓練場で一週間後。いいな?」
「僕はいっこうに構わない」
ディランは俯く。
フローラは呆然とする。
イザヤはにやりと笑う。
「忘れるなよ」
そう言い、学校内に入っていく。
それと同時に他の生徒も登校しはじめた。
普段の学園のにぎやかさが戻ってくる。
そのなかレアンは一人、目を細くし、イザヤが行った道を睨めつけていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...