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二十一話
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「おーい、ディラン!」
レアンがディランを呼ぶ。
「おー!レアン!大丈夫なのか?体の方は。昨日動けなかったんだろ?」
レアンは苦笑いをした。
「まぁね。でも、もう動けるくらいにはなってきた。まだところどころ痛いけどね」
「無茶するからだ、このバカ」
「あ、人をバカ呼ばわり、だめだよ」
「うるせ。こっちは後頭部殴られてコブできてるんだ。結構痛いんだぞ?」
レアンとディランは二人揃って笑った。
「仲いいね、二人とも」
そう言ったのはフローラ。
「あ、フローラ、おはよう」
「おっす!フローラ」
フローラはニコリと笑って、「おはよう」と言った。
「そういえば、何だけどさ……」
そしてレアンの後ろを見る。
「あそこにいる人……レアンくんのことをジロジロ見てない……?」
「なにかしたの?」、と見てくるがレアンは肩をすくめる。
「いや、大したことじゃないよ」
実際は大したことなのだが、レアンにとっては結婚、婚約など二の次だ。
「ふぅん、だといいけど」
フローラはぱっと笑顔になると、早く、と急かしながら言った。
「早くしないとみんな来るよ。早く訓練場行こう」
「分かった」
「おし、行くか」
そして歩き始めようとすると見知った声が聞こえた。
「へぇ……朝練?」
レアンは振り向かず、答える。
「そうだよ、アル兄もする?」
レアンの兄、アルベールは一旦王宮に引き渡された。しかしレアンの師匠であるノアが機転を利かせ、学園に行けるようになったのだ。
「まさかね、弟とこうやって学園生活が送れるとはね……魔術師になりたての頃は思ってもいなかったよ」
「そっか。ぼくもまさかアル兄が僕の敵になっているとは思ってもいなかったよ」
「ははは……悪かったね。しかし、本当は死刑になってもいいのに、レアンってこの国じゃ、重要人物なんだな。レアンの師匠が言うことをすんなり聞き入れたぞ」
「まぁ、特に師匠はこの国にたくさん貢献しているからね。あの師匠が見張るって言うなら聞くよ。たとえそれが陛下でもね」
ノアは、アルベールを学園に入れさせたがった。その理由を「自分やレアンが監視する。そのためには学園に入れたほうが好都合だ」と言った。
本当は「少しでもやっと再会できた兄弟の時間を失わせたくない」というレアンへの贔屓ということはノア当人しか知らない。
「そういえばまだ聞いてなかったね。なんで魔術師になったの?」
「本来の目的はレアンと合流するためだ。俺が有名になればレアンの耳にも届くかもしれないから。……でも最終的には奴隷から逃げ出した俺を助けてくれた恩人だから、借りを返すことになってた。なんでだろう……」
レアンはそれに近いことを知っていた。
かつて育成学園の校長だったハンナ・ローガン。
彼女はフローラの父に催眠術をかけ、暗殺者に作り上げたのだ。
その際、「殺すことを 好きにさせる催眠」というレアンでもよくわからない催眠で操った。
恐らくアルベールもそういう扱いになっていたのだろう。
とてつもない力をもつアルベールを利用するために。
そう考えてているとレアンはだんだんウールヴェルム王国に苛立ちを覚えた。
しかし、深呼吸して落ち着かせる。
いま苛立っても仕方ない。
今考えることは、ディランのこと、フローラのこと。そしてアルベールのこと。そして先程マヤから申し込まれた婚約のことだけだ。
婚約のことは断ろうと思っている。しかしなぜかマヤに懐かしさを覚えている自分もいるため、なかなか決心がつかない。
「ソフィアの娘か……」
ソフィアは伯爵家当主だ。
豪華な暮らしをしているのだろう。
レアンはふと思い出した。
ソフィアの家で行われたパーティーに誘われたのだ。
花畑に連れて行かれ、豪華さ、美しさに見とれた。
一輪一輪がしっかり美しく、それがより集まることでより一層美しいのだ。
色とりどりの花たちを見ていると、こちらの血にまみれた心が洗われていく気がした。
夢中で見ていると、ふと視線を感じた。こちらをまっすぐ見ている。そう感じた。
レアンは少し警戒しながら後ろを振り向いた。
そこには銀の短い髪をした少女とソフィアがいた。
レアンは直感で、「この子とは友達になれる」と思った。
名前はなんて言っただろうか。
確か一歳上だったはずだ。
レアンは首を傾げた。
「その子の名前、マヤ、じゃないよな……?」
レアンは神妙な表情で呟いた。
レアンがディランを呼ぶ。
「おー!レアン!大丈夫なのか?体の方は。昨日動けなかったんだろ?」
レアンは苦笑いをした。
「まぁね。でも、もう動けるくらいにはなってきた。まだところどころ痛いけどね」
「無茶するからだ、このバカ」
「あ、人をバカ呼ばわり、だめだよ」
「うるせ。こっちは後頭部殴られてコブできてるんだ。結構痛いんだぞ?」
レアンとディランは二人揃って笑った。
「仲いいね、二人とも」
そう言ったのはフローラ。
「あ、フローラ、おはよう」
「おっす!フローラ」
フローラはニコリと笑って、「おはよう」と言った。
「そういえば、何だけどさ……」
そしてレアンの後ろを見る。
「あそこにいる人……レアンくんのことをジロジロ見てない……?」
「なにかしたの?」、と見てくるがレアンは肩をすくめる。
「いや、大したことじゃないよ」
実際は大したことなのだが、レアンにとっては結婚、婚約など二の次だ。
「ふぅん、だといいけど」
フローラはぱっと笑顔になると、早く、と急かしながら言った。
「早くしないとみんな来るよ。早く訓練場行こう」
「分かった」
「おし、行くか」
そして歩き始めようとすると見知った声が聞こえた。
「へぇ……朝練?」
レアンは振り向かず、答える。
「そうだよ、アル兄もする?」
レアンの兄、アルベールは一旦王宮に引き渡された。しかしレアンの師匠であるノアが機転を利かせ、学園に行けるようになったのだ。
「まさかね、弟とこうやって学園生活が送れるとはね……魔術師になりたての頃は思ってもいなかったよ」
「そっか。ぼくもまさかアル兄が僕の敵になっているとは思ってもいなかったよ」
「ははは……悪かったね。しかし、本当は死刑になってもいいのに、レアンってこの国じゃ、重要人物なんだな。レアンの師匠が言うことをすんなり聞き入れたぞ」
「まぁ、特に師匠はこの国にたくさん貢献しているからね。あの師匠が見張るって言うなら聞くよ。たとえそれが陛下でもね」
ノアは、アルベールを学園に入れさせたがった。その理由を「自分やレアンが監視する。そのためには学園に入れたほうが好都合だ」と言った。
本当は「少しでもやっと再会できた兄弟の時間を失わせたくない」というレアンへの贔屓ということはノア当人しか知らない。
「そういえばまだ聞いてなかったね。なんで魔術師になったの?」
「本来の目的はレアンと合流するためだ。俺が有名になればレアンの耳にも届くかもしれないから。……でも最終的には奴隷から逃げ出した俺を助けてくれた恩人だから、借りを返すことになってた。なんでだろう……」
レアンはそれに近いことを知っていた。
かつて育成学園の校長だったハンナ・ローガン。
彼女はフローラの父に催眠術をかけ、暗殺者に作り上げたのだ。
その際、「殺すことを 好きにさせる催眠」というレアンでもよくわからない催眠で操った。
恐らくアルベールもそういう扱いになっていたのだろう。
とてつもない力をもつアルベールを利用するために。
そう考えてているとレアンはだんだんウールヴェルム王国に苛立ちを覚えた。
しかし、深呼吸して落ち着かせる。
いま苛立っても仕方ない。
今考えることは、ディランのこと、フローラのこと。そしてアルベールのこと。そして先程マヤから申し込まれた婚約のことだけだ。
婚約のことは断ろうと思っている。しかしなぜかマヤに懐かしさを覚えている自分もいるため、なかなか決心がつかない。
「ソフィアの娘か……」
ソフィアは伯爵家当主だ。
豪華な暮らしをしているのだろう。
レアンはふと思い出した。
ソフィアの家で行われたパーティーに誘われたのだ。
花畑に連れて行かれ、豪華さ、美しさに見とれた。
一輪一輪がしっかり美しく、それがより集まることでより一層美しいのだ。
色とりどりの花たちを見ていると、こちらの血にまみれた心が洗われていく気がした。
夢中で見ていると、ふと視線を感じた。こちらをまっすぐ見ている。そう感じた。
レアンは少し警戒しながら後ろを振り向いた。
そこには銀の短い髪をした少女とソフィアがいた。
レアンは直感で、「この子とは友達になれる」と思った。
名前はなんて言っただろうか。
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レアンは首を傾げた。
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レアンは神妙な表情で呟いた。
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