最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

りう

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二十ニ話

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 レアンたちは訓練場にいた。
「じゃあ、フローラとディランはいつものをして。アル兄は……自分でやって」
「ちょっと、それはないだろ!」
 アルベールはレアンに訴えた。
「じゃあ、何を教えろ言って言うんだ!魔法の発動は早いし、魔力はとんでもなく多いし!教えること何もないよ!」
「でも、俺、レアンに負けたんだよ。俺は何かレアンに劣っていたんだ。それを教えてほしいんだ」
「……ない」
「えーー?なにかはあるでしょ。だって、レアンは俺に勝ったんだよ?」
「……それは……師匠が……」
「わかった。師匠の善し悪しか」
「なんでそうなるの⁈アル兄の師匠さんはウールヴェルムにいるわけだし、とんでいけないよ!空を飛ぶにしても、こことウールヴェルムは遠すぎるんだよ?」
「でも、あの師匠、どう見てのいいひとじゃん。さすがノア殿だ」
「え?アル兄、知ってるの?」
 首をかしげ、そう聞いたレアン。
「……知らないのか?」
 意外そうに目を丸くしたアルベールもまた首をかしげた。
「まさか、この世界にいる人でノア殿を知らない人がいたとはな」
 アルベールが言う「この世界」とは魔術師の世界のことだ。
「ノア殿はこの世界でもっとも人気がある魔術師の一人だ。毎年、ノア殿の弟子志望者がここ《ハイズガード》に集まるんだ。でも、どこを探してもいない。ノア殿の熱狂的ファンは、王宮にも行ったそうだ。ノア殿は自分を見つけた者しか弟子をとらない。でも最近はノア殿がいる場所がばれてきてしまっているんだ。でも、その前は十年で弟子になれたのはたった二人」
 そしてレアンのほうを見るとにやり、と笑った。
「そのうちの一人が、お前だ」
 レアンは瞬きをした。
 確かにレアンは当時スラムの住人の一人だったノアを見つけた。しかしそれは偶然が重なっただけだ。
 なので、そんなふうに言われても……
「さすがだな、レアン」
「ははは……僕は師匠を見つけたくて師匠のところに言ったわけじゃないから……そう言われても、微妙……」  
「まぁ、でも、ノア殿を偶然でも見つけて、弟子にしてほしいって言ったのは本当だろ?」
「……まぁね。だってさ、あんなに魔力出してたら魔術師だって分かっちゃうよ」 
「そうか?お前が天才だからじゃないのか?」
「……違うよ。っていうか僕ディランたちを見なきゃいけないんだけど」
「そうかそうか。じゃ、俺はノア殿に弟子申請してくる」
「は?ちょ、ちょっと!!」
  さっそうと歩き出したアルベールをレアンは止めようとしたが、遅かった。
「嘘でしょ……」
( アル兄が僕の弟弟子になる、というとこか?)
  また一緒に魔法の練習ができる嬉しさと、弟の自分が兄の兄弟子になる微妙な感情。
  レアンは一旦深くため息をついてから練習しているディランたちの方を向いた。
「なあ、レアン」
  ディランが聞いてきた。
「何?」
「お前さ、イザヤを許してるのか」
  レアンは首を振った。
「いや。イザヤは許してない。でもアル兄は許してる」
「何で?お前を殺そうとしたのもお前が言うアル兄なんだぞ」
「それはお前がよくわかってるだろ?悪いとこをしてもそれが大事な人なら許したいってこと。どれだけ悪いことをしても、ね」
「まぁ、ね」
  大罪を犯したディランの父をレアンが殺そうとしたとき、ディランはそれを止めようとした。
  つまるところ、ディランと同じだ。
「さ、どれだけできたのか、見せてくれ、ディラン」
「よし!いいぞ、って言いたいとこだけど、もうちょっと待って……」
  そしてディランはまた魔力を練り始めた。


  先生が授業をしている。
  レアンはうつらうつしていた。
「だ、だめだ……眠い……」
  体中が痛かったおかげで昨日全く寝られなかったのだ。なんとか午前中は乗り越えることができたが、午後が地獄だった。  昼ごはんを食べた途端、眠気が抑えきれなくなってきた。
  うつらうつらしていると先生に声をかけられた。
「オルドーラくん。大丈夫ですか」
  今の授業は魔法理論。ディランの弟弟子、ジェイスが受け持っている。
「す、すみません……」
  眠くて半眼のレアン。
  そんなレアンにジェイスはすれ違いざまに小声で言った。
「あまり無理はされないでくださいね」
  レアンはわずかに頷く。
  午後の授業は長くなりそうだ、と思いながら、レアンは眠気を振りきろうと自分の頬を叩いた。
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