最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

りう

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二十六話

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 次の日の放課後。レアンは生徒会室に呼ばれた。
「はい。、マヤさん。来ましたよ」
「すみませんね。来てもらっちゃって。本当はこちらから行くべきでしたが……」
「いえ。お気になさらず」
「ありがとうございます」
 そして、頭を下げるマヤ。レアンはニコリと笑った。
(そんな笑顔、反則でしょ!)
 マヤは精一杯冷静を保ちながら笑った。
「……?マヤさん、どうしましたか?」
 しかしレアンにはすぐバレてしまう。
「い、いえ!何でも!さ、さて、もうすぐ他の方々も来ると思うので、少しお待ちいただいてもよろしいですか?」
「もちろんです」
 すると、明るい声が聞こえた。
「あ!レアン!」
 レアンは笑顔を崩さず言った。
「……殿下も生徒会の一員なんですか」
「そうだ。よろしくな」
「ええ。畏れ多い、と申したいところですが、なぜ王家の方が生徒会に?陛下に許可は頂いたのですか?」
「えーー、いいじゃん。言わなくても。レアンも言ってないだろ?」
「なぜ言ってないか分かっておっしゃってますよね、殿下」
 ヒルズ・ハイズガードはわざとらしく真顔になり、
「なんのことだ?」
 と言った。
「……殿下?」
 レアンが少し殺気を飛ばすと、ヒルズは慌てて言った。
「わ、分かった!分かってるから!……お前、王家にも容赦ないよな……」
「そうですね。特に殿下には容赦ないですね、僕は。五年前、王宮を巻き込んだ騒ぎを起こし、巻き添えになった僕さえも叱られたんですから」
「楽しかったなぁ……あれは」
 レアンは深くため息をつく。
「ヒルズ様、よろしくお願いします。」
 マヤがヒルズにそう言う。
「よろしくね、会長」
 ヒルズは変わらず笑顔だ。
 するとまた生徒会に入るらしい生徒が来た。
「……お前誰?」
 偉そうにそう言ってきた男子がいた。
「こんにちは。レアン・オルドーラといいます。以後お見知りおきを」
「ふぅん……どこに住んでんの?」
「……どこ……寮ですが……」
「何階に住んてだ?」
「……一階です」
 目を細め、レアンがそう言うと同時に「ぶはっ!」と吹き出した。
「か、会長!いいんですか?!一番下に住んでる落ちこぼれがここにいて!!」
「いいんです。彼はものすごく強いですから。私なんかどうにもならないくらい」
「そんな訳ありません!」
 男子生徒がそう言い切るとマヤは目を細めた。
「どこにそんな根拠が?」
「は?」
「なぜ彼の実力を知らないくせにそう言い切るのですか?」
 するとヒルズが口を挟んだ。
「レアンの実力は俺が保証する」
「は?誰だお前」
 ヒルズは真顔で言った。
「俺?俺はヒルズという。ヒルズ・ハイズガード」
「ハイズ、ガード……?ヒルズ……?って……もしかして……」
 そして顔を真っ青にする男子生徒。
「も、申し訳ありませんでした!」
 そして平伏した。
「謝るならレアンに謝れ。レアンは俺らよりも相当高いところにいるからな」
「しかし……」
「謝れ。もうすぐ他の者も来るぞ。その者たちの前でやるよりはいいだろう?命令だ」
「は、はい……」
 そしてレアンに頭を下げる。
「ご、ごめん」
 レアンは頷いた。
「いえ。気にしていません……ところで殿下。このこと、権力乱用で陛下に叱られるかもしれませんので心の準備をしておいてくださいね」
「おい、それはないだろ?お前を助けてやったのに」
「何度も何度も殿下のわがままに付き合っているこっちの身になってみればわかりますよ。正直、しめしめ、と思っています」
「おいおい!」
「冗談です」
 そんなやり取りをレアンとヒルズがしていると、マヤが言った。
「本当は殿下と同じくらいレアンくんにも敬意を払わなくてはなりません、私達は」
「なんでですか?」
 苛ついているように男子生徒が言う。 
「後でいいます。みなさんが揃ってから」
 レアンはヒルズと話していたので聞こえていなかった。
 しばらくして、全員揃った。一年生十人。そのうちの中にはレアンの正体を知っている人もいた。
 そしてこっちを見て深くお辞儀をしてきたので、レアンは頷いた。
「…………」
 先程の男子生徒はそれを睨みながら見ていた。
「では、皆さん。今期生徒会の招集に応えてくれてありがとうございます。今回はとても名誉な方々もいらっしゃるので、緊張の限りです。……では、自己紹介をお願いします」
 そして先程の男子生徒が言った。
「俺はノーラン・スルバイズだ。最上階に住んでいる」
 そして見下すように見渡す。
「こんにちは。アルナ・ヴァレリーです」
 アルナはレアンの正体を知っている人の一人だ。
「マウリル・ナガウリルだ。よろしくね」
 マウリルもレアンの正体を知っている人の一人だ。
 その他は知らない人たちばかりだ。
 最後から二番目。ヒルズの番が来た。
「こんにちは。ヒルズ・ハイズガードだ。よろしく」
 周りがざわめき、低頭する。
「殿下、いいんですか?」
「なにが?」
「陛下に知られますよ」
「それは仕方ない。お前がなんとかしてくれ」
「却下します」
 アルナとマウリル以外の周りがざわめく。
 他からしたら王家の命令を否定したように見える、というかそのまんまだ。
「なんだ?王家の命令だぞ?」
「では、そのように言われたことを陛下にお伝えしなければいけませんね。そして陛下に叱られてください」
「えーー、レアン、ひどい」
「こちらのセリフです!!もし僕がどうにかしてもそれがバレたら僕も陛下に叱られるんです!いい加減にしてください!!」
「ははは、悪い悪い」
 そしてマヤが口を挟んでくる。
「あの……レアンくん。自己紹介をお願いします」
 レアンは今更はっとして、
「えっと……レアン・オルドーラです。よろしくお願いします」
 そして一人の生徒が手を挙げた。
「生徒会長。先程、名誉なとおっしゃっていましたが、殿下の他にいらっしゃるのですか?」
「ええ」
 マヤが真顔でいう。
 レアンは嫌な予感がした。
「あの、マヤさん?」
 そしてマヤはレアンの方を手で指す。
「皆さんはレアンくんと一緒に行動するわけですから、いずれ知ることになると思うので、今のうちに知っておいたほうがいいです」
「えっと、マヤさん?」
「大丈夫です。校長先生にも許可をとっています」
「いえ、そういう事ではなくてですね」
 そしてマヤがレアンにこそっと言う。
「いずれ知られて周りに知れ渡るよりいいと思いますよ」
「……そうかもですけど……職業柄、そういうのあまり……」
「ええ。分かっています。しかし、今後のことを考えると……」
「……分かりました」
 みんなは首を傾げている。
 マヤさんは真剣な顔で言った。
「知っている方もいると思いますが、レアンくんは、魔術師です」
「「は?」」
 アルナとマウリル以外目を丸くする。
「あの、魔術師育成学園の生徒、ではなく……?」
「ええ。現役の魔術師です。そして、最強と呼ばれています」
 そしてざわめき始める。
「最強の魔術師って……」
「うん。俺もそう思ってた」
「闇の暗殺者、だよな……?」
 そして、それをヒルズが肯定する。
「そうだ。レアンは『闇の暗殺者』と呼ばれている最強暗殺者だ」
 レアンはそれに少々顔を赤くする。
「で、殿下、やめてください。その二つ名、不本意なんですから!」
「でも、そうだろ?」
「まぁ……そう呼ばれていることは本当だけど……でも、本当はやめてほしいんです!」
「かっこいいじゃん」
「恥ずかしすぎます」
 そんな事を言っているレアンを見て、アルナたち以外の誰もが顔を青くした。 
(こんな弱そうなのが、魔術師……?しかも最強の?嘘だろ?)
 しかし、彼の動きは隙がなく、対峙してもすぐに負ける、という予感があった。
「俺は認めんぞ!お前みたいな落ちこぼれが!魔術師なんて!」
 そう騒いだのはノーランだ。
「そうか。しかし、お前が認めなくても世の中ではレアンが最強だ。お前、レアンに勝てるのか?」
 ヒルズが言う。
「勝てます!よし、落ちこぼれ!今すぐ訓練場行くぞ!」
「そう言われましても……決闘の場合、校長から許可をもらわないといけなません……なので、どうですか?」
 レアンが何もない空間に話しかける。
「いいぞ。許す」
 すると魔術で隠れていたノアが姿を表す。
 ヒルズとマヤ以外口を開け、放心する。
「てか、師匠、こんなところで何してるんですか?!」
「なあ、レアン。いつから気付いていた?」 
「始めっからです!こんなに気配残しておいて、気付かないほうがおかしいです!」
 気付かなかったみんなは少し落ち込む。
「とりあえず、本当にいいんですか?」
「ああ。かわいい孫からそう言われたからな」
「孫、じゃなくて弟子、でしょう?」
「まぁな」
 そしてノーランはぎりっと歯を鳴らした。
 そして後ろに隠れていた家来を一瞥する。
 家来は頷き、去っていこうとする。
 すると、ふとレアンがこちらを見た。
「何してるんですか?ノーランさん」
 その目には少しの殺気が混ざってるのに気付いた。
 ノーランは背中に悪寒が走ったような気がして体を強張らせた。
 そして、直感した。
「こいつには勝てない……」
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