烏珠の闇 追想花

晩霞

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本編 ─羽ばたき─

恋蛍※

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 温かい湯が肌を滑り、水滴がコロコロと落ちていく。動く度に立ち昇る湯気と湿った空気。少女は湯船からあがると髪を軽く絞り、ほのかに赤みが兆した肌を布で丁寧に拭っていった。桃色の少女の身体は熱さからなのか、それともその身に待ち受ける、甘く焦がれるほどの時間に対しての期待からなのか。
 薄布を肩に纏い、寒さの感じない廊下をゆっくり呼吸を整えながら歩いていく。薄暗い廊下は短く感じ、やがて寝室に辿り着いた少女の頬は完全に火照りきっていた。静かに、戸を開く。

 優しい灯りが浮かび上がる室内に、見慣れた寝台と人の気配。頭を手で支え、先に横になって待っていた男は恥じらいを浮かべる少女の姿を認めると、無言で片腕を上げた。

 ──こちらへ来い。

 言われずとも分かる男からの誘いに、少女も言葉を発することなく近づいていく。薄布がスルスルと肩から外れ、音も無く足元に落ちた。夜気に溶け入る少女の香りに湿った美しい黒髪。光る肌、乳房と染まった頂に腰の曲線。射貫くような男の視線に、乳首は尖り始める。
 少女は男の待つ寝台に乗り、伸ばされた手に身を寄せた。大きく無骨な手が背中を辿り、臀部を撫でる。双方、何も言わず瞬きもせず――唇が合わさった。どちらからともなく舌が絡み、吐息は熱くなっていく。

「ん……ふ……ぅ」

 歯をなぞり、唇を舐める。男の口内で甘露に広がる少女の唾液が銀糸を紡ぎ、途切れる前にまた合わさっては唇を動かし続ける。時間はもう、分からない。
 互いの唾液が混ざり合った頃、水瓶を仰いだ男は少女に口移しで給水し、これまで幾度となく繰り返されてきたこの行為に胸を高鳴らせた。自分の与える物を一生懸命に飲み込む少女は見ていて飽きない。口を開けてせがむ雛鳥に給餌する親鳥になったとも思えるし、卵を温めるつがいに給餌している気分にもなる。どちらにせよ、愛しくて仕方がない。

小毬こまり、愛している」

 火照る少女の肌を、水で冷えた舌で辿る。
 少女の柔肌は粟立ち、迫る舌に乳房が揺れた。

「ぁ……ぅ……」

 頂に触れられず、冷たい舌で乳輪ばかりを責められるもどかしさに少女は腰を震わせた。一方の乳房に至っては全く触れられず、男がそちらに目を向ける気配も無い。脚を擦り合わせながら、ひたすらに片方の乳輪ばかりを味わう男に潤んだ瞳を向け、唇を引き結んだ瞬間──。

「愛している」
「っ、あぁ……!」

 突如、胸の果実を口に含まれた。瞬間に広がる甘い痺れに思わず男の肩を掴みながら吸われる気持ち良さに胎内から蜜が流れ出るのを感じ、喘ぐ。
 男は乳房に深く顔を埋めながら少女の感じやすい箇所を優しい責めで追い詰めていき、くねる女体を宥めるように手を這わせた。太腿から腰に上がり、脇腹まで撫で上げると一気に乳房を手中に収め、触れなかった一方の果実に襲いかかる。

「あぁっ、そ……んな……ゃ……」

 ねぶられながら摘まれ、舌と指で弾かれ、優しく吸われて苛め抜かれる。腰は自然と浮いて、男にすがる手には更に力が籠った。

「やはり旨いな」

 尖った果実を食み舐めながら少女を見る。眉を歪め、汗と涙で濡れた顔は扇情的で堪らない。それが吸えば吸うほどより淫らに移り変わり、止められない。

「白い肌」

 呟きながら下腹部を撫でる。ねっとりと、円を描くように。

「腰の細さも」

 柳腰をくすぐり、乳房の下に手を置く。

「そして、この乳」
「あぁぁっ……!」
「柔らかく、形も良い。の色も」
烏京うきょうさま、あぁっ」

 熱く揉みしだき、赤い先端に口づけ、夢中で吸い上げる。乳房の形は男の手の動きに合わせて自在に変わった。
 少女も我慢ならず涙を零しながら男の頭に手を回し、有り余る快楽を少しでも逃がそうと下腹に力を入れる。

「あっ、だめ……ん、あぁ……!」

 必目を細めた男は指先で数回、果実を弾くと身体をわずかに浮かせ、必死な少女の溢れて伝う涙を指先で優しく拭いた。濡れた頬を大きい掌でそっと包み、顔を寄せながら呟く。

「瞳も、この顔も美しい。心も……全て俺の好みだ」

 髪の先から爪先まで。どこも何もかも、余すことなく。

「もっと啼け。聴かせろ」

 声までも。

「愛している」
「んあぁぁぁっ、烏京さまぁぁ……!」

 二指が膣に侵入し、少女の敏感な部分を撫でる。長い指は下りきった子宮の入り口をコリコリと弄りながら開き、うねる膣壁を広げるように刺激した。
 愛しているという言葉は、一度伝えたら堰を切ったように溢れてくる。留めていた真心を唯一無二の相手と定めた自分の少女へと向ける。言う度に膣は締まり、蜜が流れた。指は休まず蠢き続け、舌は再び乳房を捕えては吸い上げる。視界が狭まっていくのを少女は感じた。

「……小毬」

 秘部の真珠が圧迫される。撫でて擽り、慈しむ素振りから急に押し潰され、摘まれる。あと一呼吸もしない内に訪れる果てを覚悟した少女にしかし、男は止まった。

「お前の一番好きな方法で果てさせてやる」
「あぁぁっ! 舐めちゃ……」

 秘部を目一杯に広げては膣内に舌を入れ、真珠へと舐め上げていく。唇で食んだ瞬間、少女の太腿が震えるのを感じ、皮を剥いて露出させた。

「あっ、あぁ、やっちゃだめ……むり、むりなの……」

 焼き切れそうな脳内が警鐘を鳴らす。

「吸っちゃ……、ゆるして……」

 届かないことは分かっているのにも関わらず、少女の口からは必死の抵抗が紡がれる。毎度おかしくなっていく自分の姿。執着と快楽のせめぎ合いが少女の思考を奪い去り、何も判断が出来なくなった刹那──。

「許さん」

 濡れすぎた秘部に唇を密着させた男は容赦なく少女の弱い真珠を吸い、声も出せないほど激しく果てさせた。白魚のように跳ねる身体をほくそ笑みながら撫で回し、唇は離すことなく真珠を吸い続ける。

「ぁ……ぁぁ……いまは……はて、てるの……」

 摘まんで根元を圧迫し、再び水で冷やした舌で舐める。
 果てている最中でも止まらない男の行為に、少女の息は不規則に乱れた。

「ぁ、また……」

 飴玉を舐めるように軽く転がされ、ねっとりとしつこく、ちゅうっと吸われ、力無く果てた。やっと離れた男の舌と赤く染まった真珠の間を唾液の糸が繋いでいる。
 意識を飛ばしたいが、乳首に訪れた男の指にまた目を開けてしまう。胸の頂が厭らしく尖り、指の往復に晒されながらぼんやりと男を見る。

「蕩けた顔をしている」

 男は少女の顔に手を伸ばし、汗と涙で貼り付いた髪を外しては虚空を見つめる瞳を覗き、愛おしげに頬を撫でた。

「堪らないな」
「んぁ……」

 こめかみに落とされた口づけにふるりと震え、男の口から水を飲み込んだ。熱い体内を潤す水は望むだけ与えられ、手を握られた心地に安心するように少女の呼吸は落ち着いていった。

「小毬、愛している」

 手を握る男に少女も優しく握り返し、口づけを甘く受け入れていく。いつも目にしている無表情も愛しく感じ、もっと触れていたいと焦がれた心で願った。少女の想いを男は受け止め、二人は互いの背に腕を回し、深く、深く繋がる唇からは激しい水音が響き渡った。

「好きだ。愛している」

 合間に零される甘い響き。

「離さない」

 縛られる。離れられない。離したくない。

「小毬」

 素直に向けられる愛情に恥ずかしくも感じるが、同時に充足感も全身に沁み渡る。自分にとっては相手だけで、相手も自分を求めてくれている。

 ──応えたい。

「烏京さま……」

 夢中で乳房を揉む手に耐え、微笑みを湛えながら想いを吐露する。左手を男の頬に添えれば薬指にめた指輪と男の瞳が蒼く輝いた。

「私も……愛しています。だから……離しては嫌」

 吐息混じりの告白に男の表情は動かない。だが心は……。

「赤ちゃん、ほしいの」

 男の表情が歪んだ。苛立ちと怒りが込み上げているようにも見える。歯を食い縛り、目つきは鋭く尖って獣のように少女を貫いた。
 そんな状態でも少女は恐怖を感じず微笑み続け、また言の葉を紡ぎながら意図せず膣を収縮させた。溢れる蜜は男を誘う。

「烏京さま、愛しています」

 男の手が、襲いかかった。
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