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さらばギルティ:序
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今日もバイトの業務を無事完了。ようやく趣味に没頭できる時間が。……なのに。なのに。本当に胸が苦しい。不安というか得体の知れない"何か"が自分に押し寄せてくる。趣味のことを考えることが息抜きどころか、むしろ億劫になる感覚。
理由は昨年からある日のみに来る彼の存在。最初の彼に対する印象は、そんなにガッカリするくらいなら早く書店にくれば良いのに。くらいの感想を持つ程度だったが、何度も何度も息を切らしながら来店し、
「…店員さんすいません、特典まだ残っていますか。」
特典へ熱量を向ける彼の姿が頭から離れない。
「家に帰りたくない…部屋見るのが嫌とか。なんで知らない人のことでこんなに悩まされなきゃいけないんだろう、私。」
独り言の内容が、無意識に罪悪感から怒りへと変わりつつあることに気づいていない、美少女、北島晴乃は
「はあー。どうでもいいよね、そんなこと。気にしない。気にしない。さて今日は楽しむぞ~!」
さっきまでの罪悪感はいずこへ。家へ猛ダッシュで戻っていった。
◇
家に帰ってから、超高速でご飯やお風呂等、やるべき作業を一気にこなした。ここまで早く済ませたことにお母さんが何か言っていたけど、そんなこと聞いてる暇は今日に関してはない。さあ部屋であれを、ゆっくりと。復習を兼ねて目を本棚に向けて1話前の巻を取り出そうとしたその刹那、
「あっ……」
視界に映ったのは本棚に飾られている、私にとって国宝と表現しても差し支えない、「生徒会長は許嫁」の色紙とファイルのコレクション。うん、私は、「生徒会長は許嫁」の重度のファンなのだ、というよりもこの作者様のファンと言った方が正確。
小さい頃に見てからすっかりハマっている、彼女の描く少女漫画。そんな方が最近小説を書いたと聞き、読まないと後悔するかもと、第一巻を買ったらまたしても私は心を持ってかれてしまった。そして、この小説に店舗限定特典があることを知り、少しでもそれを早く見たいという気持ちが、「おコメブックス」でバイトをすることに決めたきっかけでもある。
「あの人に申し訳ないな……」
前までは自分の趣味への熱量に対する誇り。学校で少し嫌なことがあってもこのコレクションを見れば、他のことなどどうでもよくなれるくらい大切な、誰にも譲れない、これが自分なんだって示せるもの。なのに。だったはずなのに。今では自分の醜い欲望の具現化。宝物であったその色紙たちは自分を嫌いにさせる要素へと変貌していた。
―――取り置きしているんだ、私の分。
発売日の日に皆がバイトを断ることに困り果てた店長は、誰か一人でもシフトに入ってもらうため、その日は時給アップ、休憩増やすなどの対策を講じた。その中の一つであった、店長にとって情けの案である「休む理由」。
「ごめんね、北島さん、申し訳ないんだけれど、あの木曜日のイベントの日に入れない理由教えてもらってもいい?心が痛むけれど。ってこれは言い訳か。」
「……その日、おコメブックスに来ているんです。実は私、その小説のファンでして。」
「え、そうだったの?なんだ、早く言ってくれれば在庫一つ、取り置きしといたのに。お金はもらうけど。」
「え。……本当ですか。」
「もちろんだよ。というかその日に北島さんいるの気づかなかったよ。俺にバレないように変装でもしてたの?」
「あ、髪型変えて、サングラスかけてたんです。……」
―――
今日。私は、ズルしていると分かっていても、彼に残り一つあるはずの物を譲ることをしなかった。彼の後ろ姿をみて見ぬふりをしていた。……この気持ちは結局罪悪感をなくしたいという自分本位な気持ちによるものだと分かっているけれど。彼に謝りたい……。
気持ちを切り替えてみたものの、それは虚構。結局今日買ったラノベを読み進めることなど彼女にはできなかった。一方その頃、佐田修哉が限定ssにのめり込み、感情を爆発させていることなどミジンコも知らない。
理由は昨年からある日のみに来る彼の存在。最初の彼に対する印象は、そんなにガッカリするくらいなら早く書店にくれば良いのに。くらいの感想を持つ程度だったが、何度も何度も息を切らしながら来店し、
「…店員さんすいません、特典まだ残っていますか。」
特典へ熱量を向ける彼の姿が頭から離れない。
「家に帰りたくない…部屋見るのが嫌とか。なんで知らない人のことでこんなに悩まされなきゃいけないんだろう、私。」
独り言の内容が、無意識に罪悪感から怒りへと変わりつつあることに気づいていない、美少女、北島晴乃は
「はあー。どうでもいいよね、そんなこと。気にしない。気にしない。さて今日は楽しむぞ~!」
さっきまでの罪悪感はいずこへ。家へ猛ダッシュで戻っていった。
◇
家に帰ってから、超高速でご飯やお風呂等、やるべき作業を一気にこなした。ここまで早く済ませたことにお母さんが何か言っていたけど、そんなこと聞いてる暇は今日に関してはない。さあ部屋であれを、ゆっくりと。復習を兼ねて目を本棚に向けて1話前の巻を取り出そうとしたその刹那、
「あっ……」
視界に映ったのは本棚に飾られている、私にとって国宝と表現しても差し支えない、「生徒会長は許嫁」の色紙とファイルのコレクション。うん、私は、「生徒会長は許嫁」の重度のファンなのだ、というよりもこの作者様のファンと言った方が正確。
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「あの人に申し訳ないな……」
前までは自分の趣味への熱量に対する誇り。学校で少し嫌なことがあってもこのコレクションを見れば、他のことなどどうでもよくなれるくらい大切な、誰にも譲れない、これが自分なんだって示せるもの。なのに。だったはずなのに。今では自分の醜い欲望の具現化。宝物であったその色紙たちは自分を嫌いにさせる要素へと変貌していた。
―――取り置きしているんだ、私の分。
発売日の日に皆がバイトを断ることに困り果てた店長は、誰か一人でもシフトに入ってもらうため、その日は時給アップ、休憩増やすなどの対策を講じた。その中の一つであった、店長にとって情けの案である「休む理由」。
「ごめんね、北島さん、申し訳ないんだけれど、あの木曜日のイベントの日に入れない理由教えてもらってもいい?心が痛むけれど。ってこれは言い訳か。」
「……その日、おコメブックスに来ているんです。実は私、その小説のファンでして。」
「え、そうだったの?なんだ、早く言ってくれれば在庫一つ、取り置きしといたのに。お金はもらうけど。」
「え。……本当ですか。」
「もちろんだよ。というかその日に北島さんいるの気づかなかったよ。俺にバレないように変装でもしてたの?」
「あ、髪型変えて、サングラスかけてたんです。……」
―――
今日。私は、ズルしていると分かっていても、彼に残り一つあるはずの物を譲ることをしなかった。彼の後ろ姿をみて見ぬふりをしていた。……この気持ちは結局罪悪感をなくしたいという自分本位な気持ちによるものだと分かっているけれど。彼に謝りたい……。
気持ちを切り替えてみたものの、それは虚構。結局今日買ったラノベを読み進めることなど彼女にはできなかった。一方その頃、佐田修哉が限定ssにのめり込み、感情を爆発させていることなどミジンコも知らない。
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