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呪われ子のニーナ 1
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「ねえ聞いた? 隣街の……」
「ええ聞いたわ。魔獣だったそうだけど、この頃多いわよね」
夕暮れ。家に帰るための通り道。
そこに知り合いの姿を見つけ、わたしはそっと足を止めた。竦んだ、という表現の方が正しいかもしれない。
と、彼女たちもわたしに気付き、あからさまに眉を顰める。
「あら……まあ」
「嫌な匂いがすると思ったのよね」
ぼそぼそと言ったかと思うと、今度は聞こえよがしに大きな声を出される。
「あーもうこんな時間だわ。帰って夕食の支度をしなくちゃ」
「ええそうね、早く帰りましょう。呪いが移される前に」
言ってこちらを見やりながら、足早に去っていく。
わたしはじっとその影が見えなくなるまで待っていた。
──ウェンデルおばさんにシイナおばさん。二人は、近所に住む犬の獣人主婦だった。
わたしにはとても冷ややかだけれど、家族や友人には別人みたいに優しいことは知っていた。
だからきっと、呪われているわたしに原因があるのだ。
(わたし、匂うのかな。水浴びしなくちゃ……)
くんくんと袖を嗅いで、自分の匂いを確認する。犬の獣人であるおばさんたちには、わたしには嗅ぎ取れない腐臭でもするのかもしれない。
「はぁ……」
慣れていることとはいえ、落ち込みながら家を目指す。
これでも、今日はツイているほうだった。
出会したのがおばさんたちだったから。
これが子供たちだったら大変だ。石を投げてきたり、矢の的にしてきたりと、加減もなくやりたい放題だから。
一昨日なんてインクをかけられてしまい、服が一着だめになった。おばあちゃんから貰ったお気に入りの服だったから、とてもとても悲しかった。
思い出して、また、ため息をこぼしそうになる。
瞬間。
「どけよ、ぶす」
「!?」
後ろから突然蹴りつけられて、わたしは前に倒れ込んだ。もろに顔を地面に打ちつけて、驚きで動けなくなる。
「んなとこにつったってるから悪いんだろ。ばーか」
振り向かなくてもわかる。わたしと同い年の犬の獣人──フィーニスだ。ウェンデルおばさんの溺愛する息子でもある。
いつもこうして意地悪をしてくるフィーニスのことが、わたしはとても苦手だった。だからいつも会わないように時間や道を考えて行動しているのに。
今日は本当は、ツイていないみたいだった。
「ねえ聞いた? 隣街の……」
「ええ聞いたわ。魔獣だったそうだけど、この頃多いわよね」
夕暮れ。家に帰るための通り道。
そこに知り合いの姿を見つけ、わたしはそっと足を止めた。竦んだ、という表現の方が正しいかもしれない。
と、彼女たちもわたしに気付き、あからさまに眉を顰める。
「あら……まあ」
「嫌な匂いがすると思ったのよね」
ぼそぼそと言ったかと思うと、今度は聞こえよがしに大きな声を出される。
「あーもうこんな時間だわ。帰って夕食の支度をしなくちゃ」
「ええそうね、早く帰りましょう。呪いが移される前に」
言ってこちらを見やりながら、足早に去っていく。
わたしはじっとその影が見えなくなるまで待っていた。
──ウェンデルおばさんにシイナおばさん。二人は、近所に住む犬の獣人主婦だった。
わたしにはとても冷ややかだけれど、家族や友人には別人みたいに優しいことは知っていた。
だからきっと、呪われているわたしに原因があるのだ。
(わたし、匂うのかな。水浴びしなくちゃ……)
くんくんと袖を嗅いで、自分の匂いを確認する。犬の獣人であるおばさんたちには、わたしには嗅ぎ取れない腐臭でもするのかもしれない。
「はぁ……」
慣れていることとはいえ、落ち込みながら家を目指す。
これでも、今日はツイているほうだった。
出会したのがおばさんたちだったから。
これが子供たちだったら大変だ。石を投げてきたり、矢の的にしてきたりと、加減もなくやりたい放題だから。
一昨日なんてインクをかけられてしまい、服が一着だめになった。おばあちゃんから貰ったお気に入りの服だったから、とてもとても悲しかった。
思い出して、また、ため息をこぼしそうになる。
瞬間。
「どけよ、ぶす」
「!?」
後ろから突然蹴りつけられて、わたしは前に倒れ込んだ。もろに顔を地面に打ちつけて、驚きで動けなくなる。
「んなとこにつったってるから悪いんだろ。ばーか」
振り向かなくてもわかる。わたしと同い年の犬の獣人──フィーニスだ。ウェンデルおばさんの溺愛する息子でもある。
いつもこうして意地悪をしてくるフィーニスのことが、わたしはとても苦手だった。だからいつも会わないように時間や道を考えて行動しているのに。
今日は本当は、ツイていないみたいだった。
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