呪われたわたしが幸せになるまで

koma

文字の大きさ
2 / 3

呪われ子のニーナ 1

しおりを挟む



「ねえ聞いた? 隣街の……」
「ええ聞いたわ。魔獣だったそうだけど、この頃多いわよね」

 夕暮れ。家に帰るための通り道。
 そこに知り合いの姿を見つけ、わたしはそっと足を止めた。竦んだ、という表現の方が正しいかもしれない。

 と、彼女たちもわたしに気付き、あからさまに眉を顰める。

「あら……まあ」
「嫌な匂いがすると思ったのよね」

 ぼそぼそと言ったかと思うと、今度は聞こえよがしに大きな声を出される。

「あーもうこんな時間だわ。帰って夕食の支度をしなくちゃ」
「ええそうね、早く帰りましょう。呪いが移される前に」

 言ってこちらを見やりながら、足早に去っていく。
 わたしはじっとその影が見えなくなるまで待っていた。

 ──ウェンデルおばさんにシイナおばさん。二人は、近所に住む犬の獣人主婦だった。
 わたしにはとても冷ややかだけれど、家族や友人には別人みたいに優しいことは知っていた。

 だからきっと、呪われているわたしに原因があるのだ。

(わたし、匂うのかな。水浴びしなくちゃ……)

 くんくんと袖を嗅いで、自分の匂いを確認する。犬の獣人であるおばさんたちには、わたしには嗅ぎ取れない腐臭でもするのかもしれない。

「はぁ……」

 慣れていることとはいえ、落ち込みながら家を目指す。

 これでも、今日はツイているほうだった。
 出会したのがおばさんたちだったから。
 
 これが子供たちだったら大変だ。石を投げてきたり、矢の的にしてきたりと、加減もなくやりたい放題だから。
 一昨日なんてインクをかけられてしまい、服が一着だめになった。おばあちゃんから貰ったお気に入りの服だったから、とてもとても悲しかった。

 思い出して、また、ため息をこぼしそうになる。

 瞬間。

「どけよ、ぶす」
「!?」

 後ろから突然蹴りつけられて、わたしは前に倒れ込んだ。もろに顔を地面に打ちつけて、驚きで動けなくなる。

「んなとこにつったってるから悪いんだろ。ばーか」

 振り向かなくてもわかる。わたしと同い年の犬の獣人──フィーニスだ。ウェンデルおばさんの溺愛する息子でもある。

 いつもこうして意地悪をしてくるフィーニスのことが、わたしはとても苦手だった。だからいつも会わないように時間や道を考えて行動しているのに。

 今日は本当は、ツイていないみたいだった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

処理中です...