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第二章
大切な想い出(11)
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小学生の頃、クラスでカエルの飼育をしていた。
授業の一環でおたまじゃくしから飼育し、グループで一匹ずつ、八グループで合わせて八匹のおたまじゃくしをひとつの水槽で飼っていたんだ。
水槽の掃除は当番制で、そのときは私の当番だった。カエルを別容器に移し、水槽を掃除してカエルを戻し下校した。その夜の夕食時になって、急に水槽の蓋をしたかどうか覚えがなくて気になり始めた。心配になり、私は夜の学校に忍び込み、教室に行って確認してみると案の定蓋は開いていてカエルは全部逃げ出してたんだ。
私は必死で教室中探し回った。
最後の一匹がどうしても見つからなくてヤキモキしたけど、持ち前の諦めの悪さが功を成し、無事に見つけることができたんだ。両親の捜索届けと引き換えに……。
そうだ、私は昔から責任感の強さと諦めの悪さはピカイチだったじゃないか!
きっと今回だってやれないことはないはずだ、だって私にはアケルもケルビムも力を貸してくれるんだから。そう考えたら少し勇気が湧いてきた。
「おねえちゃん?」
アケルが心配そうに私を見つめている。
「ごめんね、もう大丈夫だよ」
気がつくと下から聞こえてきていた音が止んでいた。
突然階段側のドアを激しく叩く音が響く。
「ケルビムかも⁉」
アケルは立ち上がると客室を出て廊下を駆け出していった。私もアケルの後を追うように飛び出す。廊下の先ではバリケードにしたベッドが、ドアを叩くたびにギシギシと音を立て揺れている。
「アケル! 待って!」
そのとき、バキバキッという音とともに、ドアを突き破ったレテリーがとうとうこのフロアまで侵入してきたのだった。
すっかりケルビムだと思い込んでいたアケルは、その期待を裏切られたかのように驚き尻餅を着いた。
「アケル!」
私は無我夢中でアケルの側まで駆け寄った。
レテリーも一直線に突進してくる。
だめ! 間に合わない! アケルとの距離とレテリーの速度を冷静に判断した私は諦めかける。
そのとき、心の中の諦めの悪い私が言ったんだ。
「やってもないのに諦めるな!」
諦めちゃいけない! 私は持てる力を全部その瞬間に出し切る気持ちでアケルに駆け寄った。一瞬でもよい、一瞬でも私の方がレテリーよりも早くアケルに触れることができればアケルを引き寄せて私が身代わりになれるはず!
現実はつらいことの連続だ、思い通りになることなんて、自分の一生の時間の中で一瞬程度のものしかないんだろう。
でも、それでも人は諦めずに歩き続けるという道を選択することがある。
きっとそれは後悔したくないからなんだ!
張り詰める緊張の中、一瞬早くレテリーの方がアケルに達していた。だけど私は諦めなかった。その瞬間、レテリーの足元の床が割れて、人の手が出たかと思うとレテリーの足をつかんだ。私はアケルを引き寄せながら体を反転させて背中からレテリーに体当たりする。その隙にアケルを突き飛ばして部屋に隠れるように指示した。アケルが怯えた目で私を見ている。
「おねえちゃん!」
足元から出てきた手がレテリーを下の階へと引きずり落とそうとしている。
レテリーは引きずり落とされまいと、体当たりした私の背中に鋭い爪をたて、必死に抵抗していた。
あまりに一瞬の出来事で、痛みなんて感じる暇さえなかった。アケルが怯えた目で私を見て叫んだとき、初めて気がついたんだから。
授業の一環でおたまじゃくしから飼育し、グループで一匹ずつ、八グループで合わせて八匹のおたまじゃくしをひとつの水槽で飼っていたんだ。
水槽の掃除は当番制で、そのときは私の当番だった。カエルを別容器に移し、水槽を掃除してカエルを戻し下校した。その夜の夕食時になって、急に水槽の蓋をしたかどうか覚えがなくて気になり始めた。心配になり、私は夜の学校に忍び込み、教室に行って確認してみると案の定蓋は開いていてカエルは全部逃げ出してたんだ。
私は必死で教室中探し回った。
最後の一匹がどうしても見つからなくてヤキモキしたけど、持ち前の諦めの悪さが功を成し、無事に見つけることができたんだ。両親の捜索届けと引き換えに……。
そうだ、私は昔から責任感の強さと諦めの悪さはピカイチだったじゃないか!
きっと今回だってやれないことはないはずだ、だって私にはアケルもケルビムも力を貸してくれるんだから。そう考えたら少し勇気が湧いてきた。
「おねえちゃん?」
アケルが心配そうに私を見つめている。
「ごめんね、もう大丈夫だよ」
気がつくと下から聞こえてきていた音が止んでいた。
突然階段側のドアを激しく叩く音が響く。
「ケルビムかも⁉」
アケルは立ち上がると客室を出て廊下を駆け出していった。私もアケルの後を追うように飛び出す。廊下の先ではバリケードにしたベッドが、ドアを叩くたびにギシギシと音を立て揺れている。
「アケル! 待って!」
そのとき、バキバキッという音とともに、ドアを突き破ったレテリーがとうとうこのフロアまで侵入してきたのだった。
すっかりケルビムだと思い込んでいたアケルは、その期待を裏切られたかのように驚き尻餅を着いた。
「アケル!」
私は無我夢中でアケルの側まで駆け寄った。
レテリーも一直線に突進してくる。
だめ! 間に合わない! アケルとの距離とレテリーの速度を冷静に判断した私は諦めかける。
そのとき、心の中の諦めの悪い私が言ったんだ。
「やってもないのに諦めるな!」
諦めちゃいけない! 私は持てる力を全部その瞬間に出し切る気持ちでアケルに駆け寄った。一瞬でもよい、一瞬でも私の方がレテリーよりも早くアケルに触れることができればアケルを引き寄せて私が身代わりになれるはず!
現実はつらいことの連続だ、思い通りになることなんて、自分の一生の時間の中で一瞬程度のものしかないんだろう。
でも、それでも人は諦めずに歩き続けるという道を選択することがある。
きっとそれは後悔したくないからなんだ!
張り詰める緊張の中、一瞬早くレテリーの方がアケルに達していた。だけど私は諦めなかった。その瞬間、レテリーの足元の床が割れて、人の手が出たかと思うとレテリーの足をつかんだ。私はアケルを引き寄せながら体を反転させて背中からレテリーに体当たりする。その隙にアケルを突き飛ばして部屋に隠れるように指示した。アケルが怯えた目で私を見ている。
「おねえちゃん!」
足元から出てきた手がレテリーを下の階へと引きずり落とそうとしている。
レテリーは引きずり落とされまいと、体当たりした私の背中に鋭い爪をたて、必死に抵抗していた。
あまりに一瞬の出来事で、痛みなんて感じる暇さえなかった。アケルが怯えた目で私を見て叫んだとき、初めて気がついたんだから。
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