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第二章
大切な想い出(10)
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私たちはその部屋を出ると廊下を走り、二階の階段踊り場まで進んだ。しかしすでに食堂厨房の入口の扉を破ったレテリーが踊り場で待ち構え、飛び掛かってきた。
私たちは振り返り、再び二階の廊下を真っすぐ全速力で走っていく。
怒り狂った化け物の暴走は想像を絶するものだった。その鋭い歯で砕かれた本棚の木屑がまるでナイフのように飛び交っている。その鋭い爪は廊下にはっきりとその爪痕を刻んだ。客室に逃げ込み、慌てて扉を閉めるが、レテリーの体当たりに客室の脆い扉など、一撃で粉々になっていく。
突入してきたレテリーに、ケルビムがサイドテーブルを投げつける。サイドテーブルはレテリーの頭に直撃し、一瞬体がよろめいた。その隙にケルビムはベッドをレテリーに向かって押しやる。私とアケルもサイドに分かれケルビムとともにベッドをおもいっきり押した。ベッドと部屋の壁とに挟まれたレテリーが苦しそうに吠える。
「今の内に三階へお逃げください」
ケルビムは、ベッドを一層力強くレテリーに向かい押し込んだ。
「でも、あなたは?」
「わたくしひとりであれば、この程度の化け物、どうとでも逃げおおせます」
私たちはケルビムのその言葉を信じてその場から立ち去った。
アケルの手を引きながら二階廊下を走る。後ろからものすごい音とともに客室の壁を突き破り、レテリーが廊下を転げ回っている。再び体勢を立て直したかと思うと客室にいるケルビムの元へと突進していった。
「ケルビム大丈夫かなぁ?」
アケルは走りながら後ろを気にしている。
「きっと大丈夫よ! それよりも今はここを離れましょ」
私たちは階段を駆け上って、三階廊下に続く扉を開けて中に入ると素早く扉を閉めた。
「きっとここもすぐに突破されるわ!」
私は客室に入り、ベッドを動かそうとするが重くて動かない。
「アケル! 手を貸して!」
アケルとベッドを少しずつずらしながら客室から廊下にベッドを出すと一気に扉までベッドを押し、扉のつっかえにした。
私とアケルは廊下を進み、一番奥にある客室に身を潜めた、相変わらず二階では大きな物音が響いている。
「ケルビム大丈夫かなぁ?」
アケルは再びケルビムのことを気にしている様子だった。
私は頭の中で考えていた。どうすればあいつを追い出すことができるんだろうか? 現状ケルビムは自分では今は太刀打ちできないと言っていたし、こうして私たちをあいつから遠ざけるのがやっとなのだろう。私はケルビムの言葉に違和感を覚えじていた。
今は太刀打ちできない……。
今は? なにかがあれば太刀打ちできるってことなんだろうか?
そもそもあいつを呼び寄せたのは私なんだから、私が強く念じればあいつは消えてくれるんじゃないかしら⁉
私は目を瞑り、心の中であの青白い化け物が消え去ってしまえばよいと強く念じた。
横に座っていたアケルが私を不安げにのぞき込む。
「おねえちゃん⁉ どうしたの? おなか痛いの?」
違うのよ……アケル。
アケルは二階から一冊の本を持ち出していた。
クローゼットに隠れている間、レテリーから一冊でも守ろうと胸に抱えていた本だ。
「アケル、その本、私に見せてくれない?」
アケルから本を預かり開いてみると、随分と懐かしい思い出が記されていた。
私たちは振り返り、再び二階の廊下を真っすぐ全速力で走っていく。
怒り狂った化け物の暴走は想像を絶するものだった。その鋭い歯で砕かれた本棚の木屑がまるでナイフのように飛び交っている。その鋭い爪は廊下にはっきりとその爪痕を刻んだ。客室に逃げ込み、慌てて扉を閉めるが、レテリーの体当たりに客室の脆い扉など、一撃で粉々になっていく。
突入してきたレテリーに、ケルビムがサイドテーブルを投げつける。サイドテーブルはレテリーの頭に直撃し、一瞬体がよろめいた。その隙にケルビムはベッドをレテリーに向かって押しやる。私とアケルもサイドに分かれケルビムとともにベッドをおもいっきり押した。ベッドと部屋の壁とに挟まれたレテリーが苦しそうに吠える。
「今の内に三階へお逃げください」
ケルビムは、ベッドを一層力強くレテリーに向かい押し込んだ。
「でも、あなたは?」
「わたくしひとりであれば、この程度の化け物、どうとでも逃げおおせます」
私たちはケルビムのその言葉を信じてその場から立ち去った。
アケルの手を引きながら二階廊下を走る。後ろからものすごい音とともに客室の壁を突き破り、レテリーが廊下を転げ回っている。再び体勢を立て直したかと思うと客室にいるケルビムの元へと突進していった。
「ケルビム大丈夫かなぁ?」
アケルは走りながら後ろを気にしている。
「きっと大丈夫よ! それよりも今はここを離れましょ」
私たちは階段を駆け上って、三階廊下に続く扉を開けて中に入ると素早く扉を閉めた。
「きっとここもすぐに突破されるわ!」
私は客室に入り、ベッドを動かそうとするが重くて動かない。
「アケル! 手を貸して!」
アケルとベッドを少しずつずらしながら客室から廊下にベッドを出すと一気に扉までベッドを押し、扉のつっかえにした。
私とアケルは廊下を進み、一番奥にある客室に身を潜めた、相変わらず二階では大きな物音が響いている。
「ケルビム大丈夫かなぁ?」
アケルは再びケルビムのことを気にしている様子だった。
私は頭の中で考えていた。どうすればあいつを追い出すことができるんだろうか? 現状ケルビムは自分では今は太刀打ちできないと言っていたし、こうして私たちをあいつから遠ざけるのがやっとなのだろう。私はケルビムの言葉に違和感を覚えじていた。
今は太刀打ちできない……。
今は? なにかがあれば太刀打ちできるってことなんだろうか?
そもそもあいつを呼び寄せたのは私なんだから、私が強く念じればあいつは消えてくれるんじゃないかしら⁉
私は目を瞑り、心の中であの青白い化け物が消え去ってしまえばよいと強く念じた。
横に座っていたアケルが私を不安げにのぞき込む。
「おねえちゃん⁉ どうしたの? おなか痛いの?」
違うのよ……アケル。
アケルは二階から一冊の本を持ち出していた。
クローゼットに隠れている間、レテリーから一冊でも守ろうと胸に抱えていた本だ。
「アケル、その本、私に見せてくれない?」
アケルから本を預かり開いてみると、随分と懐かしい思い出が記されていた。
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