時間泥棒

虹乃ノラン

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第三章

魚海町シーサイド商店街(2)

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 緩やかな下り道を走っていくと、かなり後ろからミチルの声が届く。

「千斗君! ジョージ君! ちょっと待って!」

 ミチルが小さい体で、ヨロヨロ走るマルコを必死に支えながら歩いてくる。

 体の大きいマルコは、苦しそうにハアハアと大きく息をあげていた。二四時間テレビのマラソンランナーがラストスパートした後のような雰囲気だ。

 よろけながら向かってくる体力のないマルコに、さすがのジョージも呆れ顔だ。

「おいおい、アレは生まれたてのクマか何かか? まだ二〇〇メートルも走ってないぞ」
「ハァハァ……みんな、ゴメンね! ボク、あんまり運動は、得意じゃ、ないから……」

 顔から滝のような汗を流してマルコが謝るけど、下り坂の先を見るとすでに紅葉たちの姿は見えなくなっていた。

「本当にゴメンね! ボクが遅いから……」
「大丈夫だよ、マルコ。どっちみち紅葉に追いつけるやつなんて一人もいないんだから」
「そうよ。マルコがバテなくても、そのうちわたしがバテてたわ」
「千斗君、ミチルちゃん、……ありがとう」
「紅葉がまっすぐおりてったのは間違いないんだ。このまま進めばそのうち見つかるぜ」

 僕たちは立ち止まって、マルコの息が整うのを待った。

 しばらくしてから坂道をおりていくと、どこかから救急車のサイレンが聞こえてきた。マルコが不安げにキョロキョロとする。

「また救急車!? 消防車かな?」
「ほんとだね、でも火事なのか、事故なのかもわからないね……」
「事故じゃなくて、だれかが病気なのかもしれないしね。どこだろう?」

 ミチルも辺りを見回す。
 この獅子丘町の坂道はすごく見晴らしがいい。にもかかわらず、どこからも煙が上がってるようには見えなかった。

 鳴り続けるサイレンに、ジョージも耳を澄ます。

「こんなクレイジーな田舎町で、一日に何回もサイレンを聞くなんてめずらしいな」
「マシュマロは大丈夫かな……? 紅葉ちゃんもケガしてなければいいけど」
「しかしどこまで追いかけていったんだ? あのクレイジー娘は」
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