時間泥棒

虹乃ノラン

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第三章

魚海町シーサイド商店街(3)

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 長い坂道に沿って下っていくと、コスモ小学校が見えてくる。
 すでに随分歩いてきてるっていうのに、紅葉と白猫の姿は見えない。

「学校にいるかもね」

 ミチルがそう言うので、校舎の中も外も、ぐるりと一周してみたけど、やっぱり紅葉の姿はどこにも見当たらなかった。

 運動場では、野球部にサッカー部、そして端っこの方では陸上部が、それぞれにグラウンドを使っている。

「ちょっと陸上部の人たちに聞いてみようか」

 紅葉は陸上部の部長だから、もし誰かがみかけていたらわかるだろう。部員を呼び止めて何人かに尋ねてみるけど、やっぱり誰も見ていないらしい。

「紅葉ちゃんいないね……。どこ行っちゃったんだろう?」

 文字通り学校中を探し終わった僕たちは、あぜんと校門の前で立ち尽くした。

「手がかりなしか……参ったわね」
「もしかして紅葉のやつ、飽きて一人で帰ったんじゃないか?」ジョージがつぶやく。

 これだけ探してもいないんだ。疑いたくなる気持ちもわかる。
 でも紅葉がひとりで勝手に帰ってしまうとは思えない。

「それはないんじゃないかな? だって、紅葉は部長を任されるくらいの人物だよ。途中で投げ出したりはしないはずだよ」

それにしても、本当にどこに行ったんだろう。

たとえば、このまま学校を突っ切ってまっすぐ進んだら、この先は水瓶町だ。
でも逃げている猫が直進なんてするだろうか?

猫は素早くてジャンプ力もあるし、身のこなしだって抜群。追っ手がどんなに速くたって、相手が猫でもないかぎり、物影に隠れたり、ジャンプで塀を乗り越えたりすれば、あの白猫がいくらちょっと太っちょだからって、逃げるのは簡単なんじゃないのかな?

あの白い猫の行動は、すごく不自然だった。
逃げるかと思えば急に止まって、追いかけてくるのを待っているようにも見えた。
紅葉とははぐれてしまったけど、なにか意味ありげだった。

もしかしたらわざとなのか? 僕らが見失わないように途中でわざと座ったり、目の前でわざわざあくびなんかして、追いかけさせてるってことなの?

じゃあ、なんで追いかけさせるんだろう。

おまえらなんかに捕まらないぞ! ってバカにしてる? それともついて来てほしいってこと……? 

「千斗? またおまえ……」

じっと考え込む僕を見て、ジョージがまた勘違いをしている。その先は聞きたくない。
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