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翌朝、約束の通りにアルフレッド様が朝食の席にいて驚いた。隣の席に座るように言われて、腰を下ろす。肩の触れ合う近距離に心臓が早鐘を打ち始める。
「アリス、おはよう。よく眠れたか?」
「はい、すっきりしました」
「きちんと眠れてよかった」
大きな手のひらに頭をぽんぽんと二回撫でられて、心臓の音が煩い。
「あの、嬉しいです。アルフレッド様と一緒に食事ができて嬉しいです。また一緒に食べたいです」
「アリスの願いなら、喜んで」
茶色の瞳で見つめられ、柔らかく微笑んで告げられた。不意打ちの甘さに、頬がじわじわと熱くなった。
アルカス侯爵家の食事は美味しい。所作の綺麗なアルフレッド様は、食べている姿も素敵だと改めて思う。
「もう食べないのか?」
見惚れていたら不意に視線が絡み、心臓が大きく跳ねた。アルフレッド様が心配そうに眉を下げる。
「アリスの好きな桃を用意してある。桃なら食べれるか?」
「え? あっ、はい……」
花のように桃を盛り付けた皿が運ばれてきた。アルフレッド様が桃をフォークに刺すと、私の口もとに運ぶ。
「アリス、食べて」
アルフレッド様の甘い声に口を開くよう促される。明るい部屋が恥ずかしいけれど、誘惑に負けて食べると、爽やかな甘さが口いっぱいに広がっていく。
「ん……っ、すごく美味しいです!」
「それならよかった。もうひとつ食べるか?」
また目の前に瑞々しい桃を差し出されて、ぱくりと食べた。とても美味しい。すぐに傷む桃は高価なものなので、朝食で食べられる幸せを噛みしめて、両手を頬に当てた。
「全部食べて偉かったな」
アルフレッド様に頭をぽんぽんと二回撫でられる。はっと我に帰ると桃はなくなっていた。八切れ近くの桃をすべて食べさせてもらっていたと思うと、羞恥で顔に熱が集まっていく。
「アリス、顔が赤い。熱が出てきたか?」
突然、アルフレッド様の顔が近付いて、おでこがコツンと優しく引っ付いた。
「っ! な、ないです」
「いや。少し熱っぽいな……」
「ひゃ! だ、だ、大丈夫ですから」
首に大きな手を当てられて、変な声を上げてしまう。こんな恋人みたいな触れ方は初めてで、心臓がどきどき煩い。凛々しい顔に見つめられたまま、大きな手のひらで頬を包まれて、身体中が茹っている。
「若旦那様、そろそろ仕事に行かないと遅れますが……」
「なんだ、トーマス」
家令のトーマスに話しかけられて、私からアルフレッド様が離れる。安堵して大きく息を吐いた。眉間に皺を寄せたアルフレッド様がトーマスとやり取りした後、盛大に溜め息をつく。
「アリス、本当に大丈夫か?」
「ほ、本当に大丈夫ですから、お仕事頑張ってください」
「なるべく早く帰る。一緒に夕食をとろう──いってきます」
ちゅ、とおでこで音が鳴った。
アルフレッド様と家令のトーマスが歩いていく。自然すぎる動きに、今のがキスだったと気づいた時にはアルフレッド様は見えなくなっていた。そっと指で触れてみれば、ときめきすぎて胸が苦しい。
「まるでアルフレッド様じゃないみたい……」
本当に私にメロメロみたいなふるまいに戸惑ってもいて。魔女の惚れ薬クッキーがここまで効くなんて思ってもいなくて、本音を漏らしてしまった。
「アリス、おはよう。よく眠れたか?」
「はい、すっきりしました」
「きちんと眠れてよかった」
大きな手のひらに頭をぽんぽんと二回撫でられて、心臓の音が煩い。
「あの、嬉しいです。アルフレッド様と一緒に食事ができて嬉しいです。また一緒に食べたいです」
「アリスの願いなら、喜んで」
茶色の瞳で見つめられ、柔らかく微笑んで告げられた。不意打ちの甘さに、頬がじわじわと熱くなった。
アルカス侯爵家の食事は美味しい。所作の綺麗なアルフレッド様は、食べている姿も素敵だと改めて思う。
「もう食べないのか?」
見惚れていたら不意に視線が絡み、心臓が大きく跳ねた。アルフレッド様が心配そうに眉を下げる。
「アリスの好きな桃を用意してある。桃なら食べれるか?」
「え? あっ、はい……」
花のように桃を盛り付けた皿が運ばれてきた。アルフレッド様が桃をフォークに刺すと、私の口もとに運ぶ。
「アリス、食べて」
アルフレッド様の甘い声に口を開くよう促される。明るい部屋が恥ずかしいけれど、誘惑に負けて食べると、爽やかな甘さが口いっぱいに広がっていく。
「ん……っ、すごく美味しいです!」
「それならよかった。もうひとつ食べるか?」
また目の前に瑞々しい桃を差し出されて、ぱくりと食べた。とても美味しい。すぐに傷む桃は高価なものなので、朝食で食べられる幸せを噛みしめて、両手を頬に当てた。
「全部食べて偉かったな」
アルフレッド様に頭をぽんぽんと二回撫でられる。はっと我に帰ると桃はなくなっていた。八切れ近くの桃をすべて食べさせてもらっていたと思うと、羞恥で顔に熱が集まっていく。
「アリス、顔が赤い。熱が出てきたか?」
突然、アルフレッド様の顔が近付いて、おでこがコツンと優しく引っ付いた。
「っ! な、ないです」
「いや。少し熱っぽいな……」
「ひゃ! だ、だ、大丈夫ですから」
首に大きな手を当てられて、変な声を上げてしまう。こんな恋人みたいな触れ方は初めてで、心臓がどきどき煩い。凛々しい顔に見つめられたまま、大きな手のひらで頬を包まれて、身体中が茹っている。
「若旦那様、そろそろ仕事に行かないと遅れますが……」
「なんだ、トーマス」
家令のトーマスに話しかけられて、私からアルフレッド様が離れる。安堵して大きく息を吐いた。眉間に皺を寄せたアルフレッド様がトーマスとやり取りした後、盛大に溜め息をつく。
「アリス、本当に大丈夫か?」
「ほ、本当に大丈夫ですから、お仕事頑張ってください」
「なるべく早く帰る。一緒に夕食をとろう──いってきます」
ちゅ、とおでこで音が鳴った。
アルフレッド様と家令のトーマスが歩いていく。自然すぎる動きに、今のがキスだったと気づいた時にはアルフレッド様は見えなくなっていた。そっと指で触れてみれば、ときめきすぎて胸が苦しい。
「まるでアルフレッド様じゃないみたい……」
本当に私にメロメロみたいなふるまいに戸惑ってもいて。魔女の惚れ薬クッキーがここまで効くなんて思ってもいなくて、本音を漏らしてしまった。
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