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一週間が過ぎても、惚れ薬は絶好調。
あまりに効きすぎていて、魔女に相談した方がいいと分かっているのに、恋人みたいな甘さに溺れて先延ばしにしていた。
「アリス、ただいま」
大きな身体に抱きしめられる。大好きな人の匂いと体温に包まれるのが堪らない。
「アルフレッド様、おかえり、なさい……」
「早く会いたくて、急いで帰ってきた」
「私も会いたかったです」
頭上からの優しい声にアルフレッド様を見上ると、顔中にキスが落ちてきた。心臓がきゅんと甘く締め付けられ、逞しい胸にこてんと頭を預ける。ぎゅっと抱き寄せられる温もりを感じて、しあわせに浸った。
「若旦那様、そろそろ着替えてください」
家令の咳払いでパッと離れる。アルフレッド様を窺い見ると、頭をぽんぽんと二回撫でられた。
早めの夕食を済ませ、お茶の準備が整うと二人きりなる。色とりどりのマカロンが並べられたお皿にわくわくしてしまう。
「アリス、どれが食べたい?」
「チョコ味が食べたいです」
「アリスは、本当にチョコが好きだな」
茶色の瞳をじっと見つめながら、頷いた。アルフレッド様の瞳と同じ色だからチョコが好きなのだけど、それは内緒にしている。
「アリス」
口元に運ばれたマカロンを食べる。外側はサックリとしていて、内側はねっとりとした食感で、甘くて、美味しい。
「アルフレッド様は、どの味が好きですか?」
「そうだな。俺は菫と桃だな」
「そ、そうですか」
思わずどきりとしてしまう。アルフレッド様の好きな菫色と桃色のマカロンは、偶然にも私の瞳と髪と同じ色。
「アリスと同じ色だから、好きなんだ」
驚いて目を瞬かせていると、アルフレッド様が照れたように微笑んだ。私と同じだと思うと、なんだか胸がくすぐったくて落ち着かない。じわじわと頬に熱が集まって、耳まで熱くなる。
「私もアルフレッド様の色だから、チョコが好きです」
私の言葉に目を細め、愛おしそうな表情で見つめられる。息をするのが苦しいくらいに胸のときめきが降り積もった。しばらくすると、アルフレッド様の指が伸びてきて、頬をなぞる。
「アリス、俺にも食べさせて」
「え」
「俺にするのは、嫌か?」
眉を下げて、困ったように肩を竦めるから、慌てて首を左右に振った。途端に、アルフレッド様が嬉しそうに笑い、じっと私の手元を見つめて待っている。
菫色のマカロンを掴み、どきどきしながらアルフレッド様の口元に近づけた。大きな口に食べられる。
「甘くて優しい味がする」
味わうように瞳を閉じるアルフレッド様を見ていたら、心臓がいつもより早く鼓動を打ちはじめた。耳まで熱くて、きっと赤い。
「アリス」
甘さの滲んだ茶色の瞳に、じっと見つめられる。蜂蜜みたいな甘さで名前を呼ばれ、ゆっくりと手のひらが伸びてきて頬を包む。甘い予感にどきどきしながら目蓋を閉じると、アルフレッド様の唇が私の唇に優しく触れた。
結婚式以来の二回目のキスは、マカロンみたいに甘くて。まるで本当にアルフレッド様に愛されていると勘違いしそうになった。
あまりに効きすぎていて、魔女に相談した方がいいと分かっているのに、恋人みたいな甘さに溺れて先延ばしにしていた。
「アリス、ただいま」
大きな身体に抱きしめられる。大好きな人の匂いと体温に包まれるのが堪らない。
「アルフレッド様、おかえり、なさい……」
「早く会いたくて、急いで帰ってきた」
「私も会いたかったです」
頭上からの優しい声にアルフレッド様を見上ると、顔中にキスが落ちてきた。心臓がきゅんと甘く締め付けられ、逞しい胸にこてんと頭を預ける。ぎゅっと抱き寄せられる温もりを感じて、しあわせに浸った。
「若旦那様、そろそろ着替えてください」
家令の咳払いでパッと離れる。アルフレッド様を窺い見ると、頭をぽんぽんと二回撫でられた。
早めの夕食を済ませ、お茶の準備が整うと二人きりなる。色とりどりのマカロンが並べられたお皿にわくわくしてしまう。
「アリス、どれが食べたい?」
「チョコ味が食べたいです」
「アリスは、本当にチョコが好きだな」
茶色の瞳をじっと見つめながら、頷いた。アルフレッド様の瞳と同じ色だからチョコが好きなのだけど、それは内緒にしている。
「アリス」
口元に運ばれたマカロンを食べる。外側はサックリとしていて、内側はねっとりとした食感で、甘くて、美味しい。
「アルフレッド様は、どの味が好きですか?」
「そうだな。俺は菫と桃だな」
「そ、そうですか」
思わずどきりとしてしまう。アルフレッド様の好きな菫色と桃色のマカロンは、偶然にも私の瞳と髪と同じ色。
「アリスと同じ色だから、好きなんだ」
驚いて目を瞬かせていると、アルフレッド様が照れたように微笑んだ。私と同じだと思うと、なんだか胸がくすぐったくて落ち着かない。じわじわと頬に熱が集まって、耳まで熱くなる。
「私もアルフレッド様の色だから、チョコが好きです」
私の言葉に目を細め、愛おしそうな表情で見つめられる。息をするのが苦しいくらいに胸のときめきが降り積もった。しばらくすると、アルフレッド様の指が伸びてきて、頬をなぞる。
「アリス、俺にも食べさせて」
「え」
「俺にするのは、嫌か?」
眉を下げて、困ったように肩を竦めるから、慌てて首を左右に振った。途端に、アルフレッド様が嬉しそうに笑い、じっと私の手元を見つめて待っている。
菫色のマカロンを掴み、どきどきしながらアルフレッド様の口元に近づけた。大きな口に食べられる。
「甘くて優しい味がする」
味わうように瞳を閉じるアルフレッド様を見ていたら、心臓がいつもより早く鼓動を打ちはじめた。耳まで熱くて、きっと赤い。
「アリス」
甘さの滲んだ茶色の瞳に、じっと見つめられる。蜂蜜みたいな甘さで名前を呼ばれ、ゆっくりと手のひらが伸びてきて頬を包む。甘い予感にどきどきしながら目蓋を閉じると、アルフレッド様の唇が私の唇に優しく触れた。
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