虜の虎

餅川

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虜の虎-9

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「あいつを永遠にお前のものにすればいいんだ」
 
 猪の話はとても単純で、率直なものだったよ。
 おれを苦しめる「何か」。それを取り除く為にオルドをおれから離れられなくする――単純で、馬鹿げた話。
 イカレ野郎め。そう罵ってやるのが正しい。あの猪は客ではあるけれど、全く媚びへつらってやる気にはなれなかった。
 オルドに抱かれるようになってからは尚更だ。あの猪に犯されるとその汚れがオルドにまで移る気がして、触れられるだけで吐き気がした。あの猪に犯されるときはいつも睨みつけてやったよ。薬を使われたとしても心までは負けないようにな。
 
「…どういう意味だよ」
 
 なのにおれは聞き返してしまった。猪のやつなんかとは言葉を交わすのさえ嫌だったはずなのに。オルドをおれのものにするなんて、ふざけた話聞く価値も無いのに、猪の言葉をもっと聞きたいと望んでしまった。
 おれが苦しんでいたせいだろうか。真っ暗で、どうすればいいかわからない真っ暗闇の中で猪の言葉がおれを救ってくれるかもと、つい縋ってしまったのかもしれない。
 あの時の猪顔は、そう思わせるような不快で醜悪で、でも間違いなくおれの望みを叶えてくれる、そんな悪魔みたいなおぞましさで満ちていたんだ。
 
「お前が苦しんでるのは知ってるんだ。あの偽善者野郎がお前から離れるのが。いつ自分を見限るか、他の恋人を作るか、おまえとのくだらない恋人ごっこをやめるか、考えたんだけで震えちまうんだろ?」
 
 あいつはおれの心の中を見透かしているみたいに喋った。誰にも、オルドにすら話していないことを全て理解したように。
 
「お前の気持は正しい。だってお前なんかとあいつじゃ釣り合わないもんな?遊ばれてるだけだ、野良猫にエサをやってるような憐れみでしかない、そう思って当然だ。お前は正しい」
 
 猪は吐き気がするぐらいに優しい口調で微笑んで、おれの頭を撫でてきた。オルドに撫でてもらうのとは違う何もかもが不快な感触。なのに跳ね除けることもできずにその手を受け入れていた。もっと猪の言葉を聞きたかったんだ。
 だって、おれの心の中をここまで理解してくれたひとはいなかったからさ。オルドだって、おれがこんなに醜くて、馬鹿で、臆病で最低な奴だとは思わなかっただろ?いや、気付いていて、それでも受け入れてくれたのかもしれないな、オルドなら。

 …ああ、ごめん。話がそれちゃったな。もうちょっとだけ聞いててくれ。すぐに終わるからさ。
 ともかく、おれの心を何もかも理解してくれているひとの言葉なら、聞きたくなるよな。だって理解しているなら、助けてくれるかもしれないだろ?
 真っ暗な海の中、一人で泳いでいるおれを助けてくれるかもしれない。猪の言葉はおれを照らしてくれる光みたいだった。
 
「どうしろって言うんだよ」
 
 おれが聞き返すと猪の奴は懐からある薬を取り出した。おれが幾度も使われた飴玉や粉末じゃなく、どろりとした液体だった。一目みてロクでもない代物だって分かったよ。見ているだけで体にぞわぞわしたものが走ったぐらいだからな。おれにはさっぱり知識は無いけど、魔術だか呪いだかそういう良くないモノで作られたんだろうなとなんとなく理解した。
 
「こいつはな、ヒトの心を変えるクスリなんだ」
 
 猪の説明はこれまた単純だった。自分の血を混ぜて香りを纏えば、嗅いだやつは血の主に対して勝手に愛情を抱き、欲情し血の主を求めて体が疼く。
 直接吹きつけてやれば精神は混濁しマトモに思考できなくなる。言葉も話せない人形のようになってしまう。
 その状態で血の主が命令すれば精神の表層を操ることができる。ああ、表層ってのは記憶や性格…ヒトが被る仮面みたいなものだって言ってたな。重要だけど、例え失っても生きてはいけるモノ。そういう簡単な部分を操れるんだって。
 おれがやったみたいに記憶を消したり、おれの特定の言葉に反応して肉体の自由を失う暗示をかけたりな。快楽を与えながら擦り込めばより効率よくなるんだってさ。
 
「こいつを飲ませれば、あの虎をお前の物にできるんだ」
 
 そして一瓶全て飲ませればそいつは終わる。肉欲に支配されてしまうんだ
 雄の臭いを愛してちんぽに依存して、1日ちんぽが貰えなければ狂って死ぬ。身体が疼いてマンコを弄くっていなければ我慢できない。そして血の主のちんぽに深く執着させて、完全なる肉便器にしてしまう。
 価値観や人格のねっこみたいな、変えられたらオルドがオルドでなくなる部分すらも腐らせる。猪の野郎はそう言ってた。
 荒唐無稽な話だと思うだろう?でもおれは信じたよ。真っ黒な飴玉や薬を使われて何度も犯されたからな。身体は娼夫しかできない淫乱なものに変えられて、飴玉をぶちこまれればちんぽをおねだりする豚に変わった。だから、精神を変える薬だと言われてもなんの疑念も無かった。
 
「何が嫌だってんだ?まさしくお前の望みを叶えてくれる魔法のお薬だろう?」
 
 でも、おれがそんな薬を使うかどうかは別問題だよな。猪の言葉がよく信じられたからこそ、その薬を使おうとは思えなかったよ。
 おれはオルドを愛してたからな。馬鹿で弱いおれだけど、オルドを奴隷にするなんてできるわけがなかった。おれが大好きなのは少し抜けているけど誰よりも優しい虎だった。快楽しか求めない奴隷なんて欲しくはなかった。それに、おれの頭の中にはあの豹人の姿が浮かんでいて。
 
「安心しろよ。アレは失敗例だからな。ちゃんと下準備を踏めば壊れない」
 
 猪の奴はお料理の作り方を話すときみたいな笑顔でそう言った。実際アイツにとっては人が壊れるかどうかなんて大したことじゃなかったんだろう。
 猪が言うにはこの薬は強力だけど反動も凄いんだってさ。少量使うぶんには精神が疲弊するだけで問題ないんだけど、完全な奴隷に変えるぐらいの量を使うと精神が耐え切れなくて壊れてしまう。
 それを防ぐのは簡単で、予め調教を施しておけばいい。要するに、まともな状態とおれのちんぽが無いと生きていけない奴隷と精神の構造がかけ離れすぎている。だったらちんぽが大好きなように肉体と精神を変えておけばいい。薬漬けにして体も脳みそも駄目にして犯して調教する。それなら反動が少なくなるっていうのが猪の言葉だった。
 
「さあこれで迷う必要は無くなっただろ?早くあの野郎をお前の物にしちまえよ」
 
 ふざけるな。そう叫んであいつの手を振り払った。おれは言ってやったよ。おれはオルドを愛している。絶対にそんなもの使わない!ってな。
 一応おれにも良識みたいなものはあったし、オルドを信じようとしてたからな。あとは猪への反発心か。あいつの言いなりになってオルドを裏切るなんて絶対にしないと思った。おれの心の中では「何か」が蠢きだしていたけれど、オルドの笑顔を思い浮かべて負けないように。
 
「はは、お前は救えない馬鹿だな。だからお前をあいつの恋人役に選んだんだけどな?」
 
 にたりと笑う猪に寒気がした。おれの顎を撫でるその指が恐ろしく、選んだという言葉の意味をすら聞けなかった。でも猪はまたもおれの心を読んだみたいに語りだしたんだ。
 
「だからぁ、お前とあの偽善者野郎を恋人にしてやったのはおれだって事だよ。引き合わせたのもおれ。あいつが便器にしか使えない娼夫なんぞに恋心を持つように催眠を仕込んだのもおれ。あいつに催眠をかけるのはかなりの手間だったんだぜ?」
 
 あいつの言葉を聞いた瞬間に目の前が白くぼやけた。運命の出会いなんてものを信じているわけじゃなかったが、オルドとおれの出会いがあいつの謀略によるものだと知って悲しかった。でもそれ以上におれの心を抉ったのは、オルドの愛情すらあいつに操られているってことだった。
 嘘に決まってる。そう考えても言葉は反響しておれの頭の中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜて。
 
「心を壊さないように改悪するのは手間がかかってな。元々催眠を受け入れる土台が無いと始まらない。お前みたいに惨めで憐れな奴はあいつの同情を買うのに丁度良かったからなぁ、時間を掛けて少しずつ……なんだぁ?震えちまって大丈夫か?ん?」
 
 おれの心ではまた「何か」が大きくなっていた。こいつの言葉なんて信じるなと理性は叫んでいた。オルドを信じるんだとおれの中の愛情はおれを繋ぎ止めてくれていた。
 でも、一度心の中に落ちた疑念をエサにして、「何か」はどんどん膨れ上がって。気付いたらおれは自分の身体を抱いてうずくまってしまてったよ。大嫌いな、憎いあいつが目の前にいるってのに芋虫みたいに情けなく。
 それでも、自分を保とうとしたんだ。オルドのくれたたくさんのものを思い浮かべて。そうすればきっと「何か」にだって勝てるんじゃないかって。
 
「あー面倒くせえなぁ。じゃあ馬鹿でも分かるようにお薬使ってやるよ」
 
 でも、そんな決意も勇気も薬を一滴飲まされるだけで吹き飛んでしまった。頭は朦朧として身体から力が抜けて、ちんぽとケツの穴だけがぞわぞわしてた。そんで湧いてきたのはちんぽへの欲求だ。さっきまで大嫌いだったはずの相手で、脳みそでは拒んでいるんだけど不愉快な体臭もおれにのしかかったせいで感じる腹の感触もたまらなく愛おしくなったんだ。
 
「お前は便器なんだ。便器に惚れる奴なんかいるわけねえだろ」
 
 ぼんやりとしていると猪のちんぽをぶちこまれた。もう何百回とハメられてきたあいつのちんぽ。でも今まで感じたことがないぐらいに気持ちよかった。血管で内壁をゴリゴリされるだけで絶頂して、奥を亀頭で殴られると失神してザーメンを飛ばした。ケツ穴はめくれあがってぶっといちんぽに媚びて絡みついた。気付いたら猪の奴を愛していますなんて叫んでた。それを異常だと思う気持ちも、オルドへの愛もどっかへ行っちゃってた。
 首を絞められても気持ちよくってさ。息ができなくて死にかけてるのにザーメンはびゅるびゅる漏れて、首の骨がミシミシ鳴るたびに絶頂してどんどん猪が愛おしくなった。唾を吐きかけられても、罵倒されても同じ。もっともっとおれを辱めてくださいっておねだりする始末だ。
 んで、薬の効き目が切れたあとは自分を嫌悪した。オルドを愛していたはずなのに猪にあんなに媚びて、ザーメンだらけの顔で醜悪な笑みを浮かべる自分がどうしようもなく嫌だった。今すぐ死にたくなったよ。でも、猪のやつが許してくれるわけもなかったんだけどな。あいつは悔しくて泣いてるおれにもう一度薬を垂らした。
 
「お前が賢くなるまで繰り返す。ちゃーんと壊れないように加減はするからな。安心していいぞ」
 
 それから地獄が始まった。オルドと会っているとき以外はずっとあいつに犯された。あいつの調教はどんどん激しくなっていった。最初は殴られながらヤラれるだけだった。それが肛門に腕を突っ込まれてかき回されたり、あいつの部下複数人に一晩中犯されたり、おれが絶頂するたびに牙をへし折られたこともあったな。
 そんで、おれはどんなに辛くて痛いはずの行為でも快楽しか得なかった。ちんぽが好きで好きで仕方なくって、あいつの臭い足の指も喜んで舐めたよ。んで、その口でオルドとキスもしてたんだ。
 猪の調教はいろいろだった。精液をケツの穴にたっぷりと注がれたあと、張り型でふさがれてオルドと話してたときもあったな。おれが様子がおかしかった日はないか?あのときのおれはオルドが何を話しているかもわかんなくって、今すぐケツマンコを弄くることしか頭に無かったな。
 軽蔑するよな。おれも自分が大嫌いだ、殺してやりたい。でもおれにはそんな勇気無かったからさ、猪に調教される毎日をただ過ごしていた。
 オルドに相談しなかった理由?怖かったからだよ。「誰かに話せばあの虎にかけた催眠を解く。それでも良いのか?」そう言われたらオルドに話す勇気なんて無くなってしまった。
 おれにばらされたら猪の奴だって終わりなのにな。随分と余裕そうだったよ。おれが話せるわけがないって確信してたんだろうな。そしてその通りだった。あいつはおれのクズみたいな心を完全に把握してたんだ。
 そりゃそうだな。おれが自分から話したんだから。猪の奴はおれの肉体を辱めるだけじゃなくて精神までも陵辱した。
 オルドとどんな話をしたとか、キスはどんな風にするのかとか、全部おれの口から話させた。おれがオルドをどれだけ愛しているのかもな。
 オルドからの贈り物の思い出をおれに語らせながらおれを犯した。贈り物におれのザーメンをぶちまけさせて、こんな物なんかよりもちんぽの方が大事ですって宣言させた。
 最初は絶対に負けないなんていきまいていたのに、一ヶ月ぐらい経つころには猪に逆らう気持ちなんかすっかり消えうせていた。逆にもう虐めないでください、オルドとの思い出を汚さないでくださいって懇願する始末だ。猪が聞き入れてくれるはずもなく犯されたんだけど。
 脳みそも精神も心も猪に屈服していった。オルドと出会うのがもう苦痛でしかなくなっていった。猪に陵辱されて、それでも恍惚としているおれの顔を見せ付けられて、もう何もかもを諦めて猪の言葉を受け入れたくなった。
 
 でも本当に絶望したのはオルドに初めて抱いてもらったときなんだ。
 愛しているひとに抱いてもらえればきっと幸せで、薬漬けにされて犯されるよりもずっとおれを満たしてくれると信じていた。
 駄目だったけどな。オルドとのセックスは何も気持ちよくなかった。オルドと身体を触れ合わせる嬉しさはあったよ。おれの鱗を綺麗だと囁いてくれるのも幸せだった。
 でも何も感じない。イイところをちんぽで擦られも全くおれは気持ちよくなかった。薬をぶちこまれて殴られている方が数百倍良かった。
 それでおれは分かったよ。おれはもう終わってたんだって。オルドと一緒にいるなんて無理だってな。
 
「そうだそれでいい。お前なんか、誰も愛しちゃくれないんだからな」
 
 何もかもを諦めて、おれは猪の手を取った。
 他に道は無かった、なんて言い訳はしない。他にいくらでも道はあったんだ。
 オルドを信じれば二人で幸せになれた。オルドを諦めればオルドは幸せになれた。おれの孤独も、きっといつしか心が死んで消えうせただろう。
 諦めることも信じることもできないのらば、死ねば良かった。そうすれば苦しみからは解放されて、オルドも幸せになれた。いくらでも道はあったはずだ。
 
 でもおれは何度過去に戻れてもこの道を選ぶ。オルドを信じるなんておれにはできなくて、諦めるなんて耐えられなくて、死ぬ勇気さえおれには無い。
 どれだけの可能性があっても、おれが進むことができる道は、進みたいと思えるのはこの道だけなんだ。

 目の前にいるオルドの頬を撫でる。あんなにも欲しかったオルドが目の前にいる。目は虚ろでどこも見ておらず、舌がだらりとはみ出しているけれど。
 オルドとはいえない紛い物だ。でも、これでいいんだ。本物のオルドとは一緒にいられないから。
 ベッドから起き上がると、花束をそっと抱きかかえる。オルドが贈ってくれたきれいな空色の花だ。尖った鼻先を近づけると、花びらが散ったりしないようにそっと息を吸う。

「良い匂いだな」
 
 懐かしい。ずっと昔に嗅いだような。愛おしくて、過去を思い出す香りだ。
 壊れ物を扱うように手に取ると花弁をそっと撫でる。本当にきれいだ。おれの鮫肌とはぜんぜん違う空色。
 
「ありがとう、オルド」
 
 照れくさくて恥ずかしくて言い出せなかった感謝を漏らす。優しく花束を抱きしめると花の香りをより一層強く感じる事ができる。その芳香はこの娼館の淀んだ空気を綺麗にしてくれるような気さえする。
 ふんふんと香りを楽しむ。性と汗、そして甘ったるい薬の臭いしかしないこの部屋の中ではとても美しい香りに感じる。花瓶に活けておけば暫くの間おれの毎日を楽しくしてくれるだろう。でも、ずっとじゃない。摘んだ花はいつかは枯れてしまう。この花だって数日のうちに美しい空の色も心を和ませてくれる香りも失ってしおれてしまうだろう。腐って狂ったこの娼館では美しい花は生きていけない。
 
 おれの愛する虎も、この花と同じ。綺麗すぎて純粋すぎてこんな所は相応しくない。おれには見合っていない。
 足もまともに動かない。セックスしかできない。金で身体を売る娼夫なんかとは釣り合わない。だから、いつかふっとおれの所から消えていなくなってしまいそうで。きっとまともな恋人同士ならこんな想いは生まれなかったんだろうな。おれとオルドが一緒にいるのが間違いだから、こんな気持ちになるのだろう。
 
「あうぁあ、わたし、わだしはぁ……」

 ちらりとオルドを見ると、苦しそうに呻いている。ときどき両手を宙に彷徨わせる姿は、大事なものを失って苦しんでいるようにも見えた。

「ごめん、今治してやるからな」」
 
「便器になる自分を受け入れさせろ。壊したくないのならば、心に便器になる快楽を刻んでやれ」猪のやつはそう言ってた。
 おれのちんぽこそ至上であると認めた。今までは薬物とちんぽでどれだけ価値観をぶち壊そうとしても、女房だけは穢されないようにと必死に抵抗してきた。だが今日ついに一線を越えた。
 今日オルドは精神の根底に致命的な傷を負った。それだけではただの傷だが、手を加えればオルドを変える事ができる。暗示で植えつけた愛じゃない。薬物で従えているんでもない。おれなんかでも愛してくれる人間に変えられる。
 今までの自分を捨てさせる為に、ぴったりと身体をくっつけて寝そべる。オルドの身体は変わらずぽかぽかと暖かい。

「ほらオルド、こっち向いて」
「あ"っ!わたしは、私が、違う。違うんだ、やめて」
「大丈夫だって。なーんにも怖くないから。ほら、これ嗅げばいやな事がなくなっちゃうから」
 
 軽くキスをすると黒い液体をしゅっと香水のように黒い鼻面へと吹きかける。その途端に呻き声は弱くなり、ぼんやりとしていた瞳から光が消失していく。
 
「ほーら、楽になっただろ?」
「あ……あぁ…?」
「ほら、もっかい。嫌な事全部忘れちゃおうな」
 
 黒い鼻をぺろりと舐めてやると、もう一回吹きかける。舌をでろりとはみ出させていた口から鼻水を垂らす鼻から黒い霧が侵入していく。
 今オルドはどんどん精神が蕩けていっている。焼きついた脳みそから考える力を奪う。3回目を吹きかけるとついにうめき声が出なくなった。脳ミソが空っぽになった証拠だ。
 あとは最後の仕上げ。オルドが洗脳を受け入れられるように、精神を改悪するだけ。
 
「よしよし。オルドは良い子だな。もうすぐで終わるから、もうちょっとだけ我慢してくれよ」
 
 頭をくしゃりと撫でると囁きかけるのを再開する。思考力のほかに抵抗力も失った頭の中にどんどんとおれの言葉が侵入してく。

「これで嫌な事は全部無くなっちゃったな。分かったらはいって言って」
「は……イ…」
「良い子良い子。いっぱい虐めちゃったけどおれの事も嫌いじゃないよな?嫌な事は全部無くなっちゃったもんな」
「は、い。ぜんぶ、きえた……嫌い、じゃない」
「そう。おれの事は嫌いじゃないよな。おれはオルドのご主人様だもんな」
「……ごしゅじん、さま」
「そう。おれはオルドのご主人様」
 
 今までぼんやりと言葉を繰り返すだけだったのに、丸い耳がぴくりと反応した。ご主人様という言葉が心の底まで根付いている証だ。おれがご主人様であると、心の一部に刻まれているんだ。
 
「おれはオルドのご主人様。オルドはおれの便器。言ってみて」
「あ…わだじ、わだしは」
「『私はご主人様の便器です』ほらがんばれー」
「うウ…ワタしは、べんき。あぁ…ちがう……わだじ、だめ。ノア"のこどは」
 
 光を全て失ったはずの目が微かに瞬く。自我が沈んでいるはずなのに、おれの洗脳に抵抗しようとしている。おれを愛さないように、必死に抵抗している。
 これはオルドの精神の強さが為せる事だろう。どんなに頭を犯されても根底にあるものは消えまいと抵抗する。
 それを見ていたくなくて、たくましい胸板に顔を埋める。もうオルドには大事な物なんて無いだろう?さっき自分で、全部いらないって言ってたじゃないか。
 それでも必死に自分にしがみつこうとしている。オルドを繋ぎとめる楔、それが分からない。家族も友人も生業も、全てごみ同然であると思考に根付かせてやったのにな。もう大事な物なんて、無いくせに。
 
 まあ、分からなくてもどうでもいい。今消してしまうのだから。こうして霧を吹きつければそれで霞のように消えるんだ。
 
「ひ、ぁああ」
 
 何度か口をぱくぱくとさせた後、ぐったりと動かなくなった。今度こそ目の光が完全に消えてなくなる。これでオルドは正真正銘の人形。こんなによく効いたのは初めてだ。今まではどれだけ吸わせてもここまでは堕ちなかった。
 完全に薬が馴染んだのは、おれのちんぽを二本とも受け入れたせいなのか。死んだ奥さんに唾を吐きかけてしまったせいなのか。
 
「まあ、どっちでもいいよなオルド」
「……」
「オルド。おれが話しかけたらちゃんとお返事しような。『はい』って言って」
「はい」
「お利口お利口。じゃあ次な。『私はご主人様の便器です』言ってみて」
「私は、ごしゅじんさまの、べんき、です」
「そう!そうだよ。オルドは賢いな」
 
 洗脳内容と心が乖離していればそれだけ精神に負担がかかる。だったらその隙間を埋めてやればいい。そう、猪が言っていた。
 自分が便器であることは今日しっかりと刻みこんだ。二本のちんぽに犯されて大衆の前でザーメンをぶちまけた激悦は、心にも脳にも刻まれている。あとは、便器であることを心と脳と体の隅々まで馴染ませるのだ。拒否なんてできないように。完全に人形と化した今ならば、表層の意識だけではなくもっと深くまで改悪できる。
 手始めに、ちょうど目の前にあった乳首をぱくりと咥えるてねっとり舐めてやる。
 
「んひい"っ」
「んちゅ。んはぁ、じゅるっ」
「はあ"あぁぁ。あっ、あぁぁぁぁ」
「ちゅ、ふぅ。乳首気持ちいいよな。きもちいいって言ってみて」
「きもち、きもちぃいいい」
「だろ。もう片方の方も摘まんであげるからな」
「んぉおお"ぉぉお、きもぢい"ぃぃい」
 
 片方の乳首を舌先で転がして、もう片方をでかい乳輪ごと優しく引っ張ってやるとオルドのちんぽが痙攣し始めた。顔は無表情のまま、口から喘ぎ声が漏れおれの言葉を繰り返す。
 先に投与した粉末と飴玉の効果は消えている。でもモロ感になるまで開発された乳首は少し強く弄れば簡単に絶頂してしまうだろう。でもそれじゃ駄目だ。優しく、イかないように。
 口を外すと空いていた方の手で乳首をやさしくねぶる。痛みを与えてはいけない。快感とおれの言葉だけで隙間を埋めていく。
 
「あ"っあ"お"お"おぉおお。きもぢいぃい」
「だろ。なんで乳首きもちいんだ?」
「ゆび。ゆ、び。ゆびでひっばられでぇ」
「そう。おれの指のおかげで気持ちいいんだよな。ほらこうしてぐにって折り曲げてやるのも好きだろ」
「んぉう"ぉう"ぉおっぞれ、ぞれぎもちいぃぃ」
 
 舌をでろりとはみ出させただただ喘ぐ。さきほどまでの肉便器であった時とは違うのは全身を弛緩させてただひたすらにおれの言葉と快感を受け入れるだけな所。気持ちいいとしか繰り返していない。
 おれが指の動かし方を変える度に反応も変わる。片方の乳首をピピピッと弾きながらもう片方の手ででかい雄胸ごと揉み解す。
 
「ひ、おぉぉォおぉおお。きモチいぃ。きぼちい"いぃい」
「乳首気持ちいいんだな。こんなに感じるのは何でか分かるか?」
「あ"っアっわが、ワガりま、わかりまセんっ!乳首が、あっア"っあぅアぁぁぁ」
 
 乳首を捻れば身体も合わせて捻れる。蝋燭の火はとうに消え星と月のみが照らす部屋はおれたちの姿すら霞ませるほど暗い。
 その中で虎が踊る。
 嬌声を音楽にして、おれだけを観客にして。
 知性も意思すらも無い虚ろな目で。ちんぽばかりか全身を痙攣させ分からない気持ち良いとだけ繰り返す。
 おれは憐れなオルドに答えを与えてやる。残酷で、間違った。けれどオルドを幸せにしてくれる解答を。
 
「オルドが気持ちいいのはな、便器だからだよ」
「べ、ンき」
「そう。お前はおれの肉便器だから乳首を捏ねられただけで気持ちいいんだ」
「べんき、便器。わたしは、デモ、お"っ!お"おぉ~~」
 
 目は虚ろだが、身体の反応は過敏になっている。両乳首をぎゅっと引っ張ると脂がたっぷりの雄胸も吊られて持ち上がった。あれだけ精液を垂れ流したちんぽはぎんぎんになって潮をびゅっびゅっと吹いている。
 そして逞しい下半身。考えるだけの知能は無いはずなのに、でかけつを持ち上げてがに股だ。ちんぽを欲しがっているんだ。肉体は便器になる事を完全に受け入れている。
 
「股開いてるなぁ。おまんこはおれのちんぽ欲しがってるみたいだな。オルドはどうかな?おれのちんぽ欲しい?」
「ちんぽ、わたしは、わたしはきもちいいちんぽ、わだじはああぉ」
「んー?聞いてるんだからちゃんと答えような。ほらほら大好きなちんぽだぞ」
「あっ、あだっでぇ、ちんぽが、ちんぽがわだジのまんこに"ぃ、ん"ひぃ」
 
 オルドの痴態にすっかり固くなったちんぽを尻にこすりつけると、呻き声を漏らした。言葉は意味を為さないもので、はっきりとちんぽが欲しいと口にしようとしない。
 ケツマンコは正直なくせに、脳みその方はダメだな。おれの言葉と、砂粒ほどの理性が情報となって脳内を駆け巡り、混乱しているのだろう。
 
「ほら、ちんぽいらないのか?」
「お"っ!チンぽ、ちんぽガぁ、ワたシのまンコ」
 
 もっとも、すぐに脳内は統一される。こうしてちんぽを盛りマンにくっつけてやるだけで、クパクパと開閉してちんぽをおねだりし始める。先端をちょっと挿入しれやればそれで終わりだ。もうちんぽに負けてしまっているんだ。二本のちんぽでケツアクメをキメた時の強烈すぎる記憶が脳みそを埋め尽くし、ちんぽをねだることを耐えられなくなる。
 
「ちっチンぽ欲シ、っ~~~~~~~お゛おおぉぉッ!」
「ほらお望みのちんぽだ。便器マンコ気持ちいいだろ?」
 
 ちんぽの片方を根元まで一気に挿入してやる。普通ならば一本だけでも大変なおれのちんぽだけど、二本のちんぽすら咥えこむ淫乱穴には何の障害もない。ただ圧倒的な喜悦だけがまんこから脳天まで突き刺さっているだろう。
 
「ひっ、ヒュっ、ちんぽ、ちんぽガアあぁあ」
 
 二本のちんぽで散々拡張されたはずなのに、絶妙な力加減で締め付けてくる。それどころかおれのちんぽへと勝手に纏わり付いてきて肉壁で竿をしごいてくる。
 おれのちんぽ専用の性処理穴と化したマンコ。そして脳みそも自分が何であるのかを理解し始めたのだろう。無表情であったはずの顔がとろりと緩んで、声に媚が滲んできている。
 
「ちんぽ、ちんぽきもぢい"ぃいい!ダメなのニちんぽっ!ちんぽイぃいイ!」
「そうだろ?お前が便器だからこんなにちんぽが気持ちいいんだよ」
「べんきっ!わた、私わタしは、わたじが便器!イヤ、イケなイのに、デもデモでもでも便器きもちい"いぃい!」
 
 そのまま腰をゆっくりと動かし始める。激しく突き上げるのではなく、内壁を擦るようにだ。快楽を刻むのではなく馴染ませる動き。
 激しくして、壊したりしないように。快楽と一緒におれの言葉という毒を送り込む。
 
「そうだな。ちんぽは気持ちいい」
「ひゃあ"っ!ひゃい、きもち、い"い!」
「気持ちいいのは便器だからだ。そうだな?」
「便器に"ぃ!わだじが、便器!わたしはべん、き」
 
 マンコがオルドの言葉に合わせて蠢く。便器と口にするのが嬉しいのか、ひくついておれのちんぽに媚びてくる。
 オルドの精神に刻まれている便器になる事の幸福。理性では拒絶しているはずのそれを受け入れさせていく。
 便器になるのが幸せなんて、まともな思考ならば異常だと感じるだろう。だがそれを正常なのだと擦り込ませる。オルドが信じれば、それが真実になる。
 結局のところ大事なのはそいつが信じるか信じないでしかない。幸福でも何でも、目に見えないモノ全ては有ると信じれば有って、信じなければ無い。それだけ。
 
「ああぁぁ~~!ちんぽっ!ちんぽがちんぽちんぽあががあぁががががあぁあ!」
 
 オルドの反応が露骨に変わり、口からでろりと舌をはみ出させた。おれのちんぽがオルドの最奥をこづいてやったからだろう。
 結腸と直腸を分かつはずの門は簡単におれを受け入れてくれた。そのままに奥をたっぷりと愛してやった。さっきのように乱暴にではなく、優しくノックするようにだ。
 
「お"っ!あ"-っ!あ゛あぁぁあぁぁ!」
「どうだ?マンコの奥気持ちいい?」
「あ"っ!はい゛いぃい!マンコマンコマンコきもぢいぃいい!」
「気持ちいいのは何で?ほら、ちゃんと答えたらもっとしてやるぞ」
「べんぎぃい!便器、便器だが、らぁ!便器だかりゃマンコきもぢいいで、お"ほぉおぉお!」
 
 ちゃんと答えられたご褒美に奥へぐりぐりとちんぽを押し付けてあげた。オルドもそれに答えるかのように手足ををおれに絡ませてきた。縋るようにおれに抱きついて、媚びるように足を纏わり付かせる。
 腰を動かす邪魔になるがそれを跳ね除けたりはしない。オルドがおれという主人を、便器になることを受け入れている証だからだ。
 オルドの獣毛全てが快感で逆立ち、顔面からはすっかり力が抜けてしまっている。人形のようだった様相とはまるで違う。ちんぽとまんこだって我慢汁と淫液をたらたらと溢れさせている。脳も心もすっかり快楽に馴染んでいる。

 ――もう、大丈夫だろう。
 脳みそも肉体も心も、便器になる幸福を噛み締めている。受け入れている。今ならば洗脳にも耐えられるはずだ。
 一滴垂らされただけでもおれの脳みそはかき回されて、ぐちゃぐちゃにされた。娼夫としてちんぽに馴染んだおれでさえも、狂ってしまいそうな淫猥でおぞましい毒。
 まともな人間なら間違いなく壊れる。でも今のオルドなら。おれのちんぽを心から愛して、肉便器となる事を歓喜しているケダモノならば耐えられるはずだ。おれが半年間かけて、ずっと変えてきたんだから。
 
「オ"-ッ!ひぎゅぃい"ぃ!まんこ、まんこ!便器マンコぉ!もっどもっどマンコお"ぉおっ!」
「ああ、今もっと気持ちよくしてあげるからな。ちょっとそのままにしててくれ」
 
 顎の下の柔らかい毛を撫でてやりながら、もう片方の手で漆黒の薬瓶を手に取る。舌が踊りながら涎を撒き散らす口へと、そっと瓶を近づける。
 
「オルド。これを飲めば……」
 
 止まる。
 「もっと気持ちよくなれる」そう言おうとしたのに、舌がうまく動いてくれない。オルドの口へと薬を垂らそうとしても手も動いてくれない。
 これを飲めば、本当に終わってしまう。オルドは消える。もしかしたらありえたかもしれない未来も消える。
 
「オルド、オルドは本当は」
 
 オルドは本当におれを愛してくれていて、猪の言っていたことは全て嘘っぱちだったら。オルドの愛情は催眠で作られた偽物なんかじゃなくて、本物なら。
 もしも最初からオルドを信じられたのならば、ここから出て、一緒に暮らして。あの約束を果たせたのかもしれない。いつか二人で星を。
 
「オルドは本当におれを愛してくれて……」
 
 おれがやった事はもう消せない、オルドをずたずたにしてしまった事実は変わらない。それでもここでやめれば、オルドもおれも救われるはずだ。
 オルドは光の当たる場所に戻って、いつしか名誉を取り戻して改悪された肉体も戻るのだろう。おれは罰せられるけれど、愛おしい人を信じられたという幸福は一生おれを満たしてくれるのだろう。
 オルドの愛を、信じさえすれば。きっと全てが変わるんだ。
 
 でも
 
「でも、無理なんだ」

 頭を振ると、オルドの顎を掴む。オルドがおれから逃げられないように。
 オルドを信じるなんておれにはできない。オルドから離れることもできない。分かっているはずなのに、無意味に躊躇ってしまった。
 おれはいつもこうだ。決めたことを迷い、諦めたと思っても未練を断ち切れない。しぶとく、ありえたかもしれない未来を願ってしまう。
 だけど、もう終わり。後戻りできないように、オルドを道連れにして深い深い所に落ちよう。
 
「う"ぅああぁああぁ~!うごい、でぇ!マンコッ!まんこぎもぢよぐじでええぇ!」
 「ああ、待たせちゃってごめんな。これ飲んで」
 
 そして瓶を傾けた瞬間に、毒が落ちる。悪意に満ちた漆黒の薬液が、迎合するように開いた口へと垂れていく。
 
「あ"っ!ん、うぅん、んっ」
 
 喚き散らしていた口に液体を流されたのだ。むせて吐き出してもおかしくはないはずだが、オルドは何の抵抗も無くそれを受け入れる。
 舌をくねらせて、雫の一滴までも味わうようにピンク色の舌を黒く染めてゆく。決して溢したりしないようにと瞳は一心に薬瓶を見つめている。オルドは何も知らないはずだ。この薬がどんなものなのかも。なのに、この薬が素晴らしいものであると理解しているかのように喉を隆起させ体内へと取り込んでいく。
 
「ん、ふうぅぅ…あ、ああアぁぁぁ?」
 
 そして瓶の全てを飲み下して、始まった。洗脳が。人の意思をドス黒く塗り潰す悪意が。オルドの終わりが。
 
「あッ! あ、あがぁぁぁアぁぁあぁあぁあ"あぁあぁあぁ!」
 
 媚びた雌の声ではなく、絶望に満ちた声。おれが幾度となく味わったあの感覚が襲っているのだろう。
 肉体を雌豚へと変えられるのでもない。脳みその枷を外される程度とは比較にならない。オルドの心という一枚の絵に、洗脳という汚泥をぶちまけられる恐怖と絶望。肉食の口は閉じることを放棄して、マンコだけがぴくぴくと収縮を繰り返している。
 
「ベンキ?便器私が、ワたシは、ちが、ウッちがう違ウちがうちんぽ好キ、あれ?わたしはあぁ」
 
 ついさっきまで従順だったのに、急な抵抗。猪から聞いていた通りの反応。これは生存本能というものらしい。
 ヒトとしての最後の砦。オルドという個が消えることを拒んでいる防衛線。消えうせてしまえば終わりだと理解し、必死にしがみつこうとしている。
 処理される寸前の家畜が足掻くのと同じだ。どれだけ調教しても決して無くすことのできない生物の根底。
 
「ヂガウ"うぅう!便器なんかじゃなイ、チンポチンポこわい"ヤだマンコ欲しイ嫌なノにいぃい"ぃいちんぽちんぽ」
 
 瞳は休むことなく動き回り、目の前にいるおれでもない何処かを見るように視線を彷徨わせる。ちんぽからは先走りがどぷどぷと噴出しておれとオルドの腹を濡らす。
 
「ちんぽちんぽぢンぽぎもぢイ"ぃぃいいい!マンコえぐっデ!ッだべぇ動くカないでエぇぇ!オカジぐなるウ"ゥウ!コワレル壊れルマンコ壊れるダメだべだめだめぇえ"えぇ!」
 
 無意味な抵抗をやめさせようと、ちんぽをほんの少しだけしゃくりあげると劇的な反応を返した。おれに抱きついたまま身体を仰け反らせて絶叫する。白目を向き鼻の穴が大きく開いて鼻水が顔面を垂れていく。
 壊れそうなのはマンコではなくオルドという個だ。快楽を得るたびに精神が書き換えられている感覚が襲っているのだろう。
 マンコがちんぽの熱と固さを感じるたびに、本能という扉が溶かされていく。それはおが望んだこと。薬に抵抗し続ければ扉ごと中にあるオルドの心までも潰れてしまう。快楽によって優しく心だけを手に入れなけれなならない。
 
「オおぉおオ"っ!わだじは負けなイ"ぃいい!消えナいぞオ"ぉお!肉便器なんカにならなっ!オ"ッ!ぉぉおおぉおおおお!ちんぽっちんぽ奥に来てるきてるぎてるウ"ぅうう!」
 
 藁にも縋るオルドをせせら笑うように、腰を思い切り叩き付けた。
 一回内部を抉っただけで、白目を向いていた瞳は踊り狂いかき回されているオルドの精神を如実に表す。
 当然一度では終わらない。オルドの弱点である結腸を攻め立てるために、でかい尻が上を向くように腰を持ち上げる。
 ひっくり返すような体勢にすると、そのままおれの体重をかけてオルドのケツマンコを押し潰す。奥をノックして、絡みつくヒダごと淫肉を引きずりだすような勢いで引きぬく。
 それを、繰り返す。何度も何度も何度も。
 
「ほら、どうだ?」
「あ"か゛あ"ァぁあぁぁああ!やべでやめでやべでやめでエぇえ"ぇぇえぇえ!」
 
 亀頭と結腸がキスをするたびに絶叫が響き渡る。瞳だけではなく瞼までもが痙攣して涙が止まらない。
 
 「ちんぽチンポ好きぃ!違ゥ!だべっ!ア"ぁあ!オカじくなル"ぅ便器なんでイヤな"のニ"いぃ!もっどモっどマンコゴンゴンしでぇえ!」
 
 湧き出るのは支離滅裂な言葉だ。薬に冒されて変質していく精神と、微かに残るオルドの人格。それがせめぎあい、混ざり合って破綻した言葉となって夜の空気を震わせる。
 口は裂けそうなほどに開ききって、口の端には泡となった涎がまとわりついている。吐息がかかるたびに消えていく泡はオルドの自我のようにはかなく弱弱しい。
 
「ふっ!ぐウ"うぅウぅうう!助けてたずげで父上イヤ嫌だははうえやめてゆるじで、おねがいだノ――イッギぃい゛いぃいいい!いぐいぐイキたクないノにイッグゥウウぅう!」
 
 不明瞭な言葉を吐きながらザーメンをぶちまけた。体勢のせいでザーメンのほとんどはオルドの顔を汚染する。
 子どもに戻ったように助けを請うその顔は異様としか表せない。涙をぼろぼろとこぼして苦しみながらも口はひくついている。悦楽に喜びがあふれ笑顔を形作ろうとするのを必死に堪えているかのようだ。快楽を得るたびに便器への抵抗は弱まり洗脳が進む。
 絶頂をすればどれだけ精神を塗り潰されただろうか。本来ならばこれで終わりのはずだ。抵抗を諦めちんぽを強請る豚になることを受け入れるはず。
 
「オ、お"ぉぉオぉお"ぉお!まげない"ぃいいい!わたしはァ"あぁ!ちんぽなんがに"いぃいいい!」
 
 それでもオルドは屈しない。おれはほんの少し薬を仕込まれただけで簡単に雌豚になったのに。
 マンコは勝手に動いておれのちんぽにすがり付いている。引き抜くたびに離れないでくれとおねだりしている。腕はおれに愛おしそうに巻きついている。ぶっとい足はピンと伸ばされて無様な姿を晒している。それでも洗脳を拒み続けている。
 オルドの姿にどうしようもない敬愛の念が湧く。そして同時に悲しみが。どれだけ抵抗を続けても無意味なんだ。オルドはもう終わっているんだよ。
 本能がどれだけ拒もうと、身体も脳も心も、もうとっくにおれのちんぽに負けているんだ。
 
「ふっう"-っ!お"っお"ぉオ!ぉ!まげな"ぃい!ぜっだいに"っ!わたしは、わだしは」
「オルド、二本目行くからな。いいな?」
「あ゛っ!だべっ!やめでちんぽ来て欲しイ駄目だめ壊れる本当に壊レ、あ"―――――」
 
 オルドの返事を待たずにもう一本のちんぽを突き刺した。二本目のちんぽがごちゅごちゅと性感を潰しながら埋没していく。既におれのちんぽの形になっているケツマンコだ。何の遠慮もいらない。
 雄膣も何の障害も無くちんぽを歓迎して、媚びてくる。おれでしか満足できないのだと言いたげにうねって奥へと導く。その感触がたまらなく気持ちがよく、腰の動きが速くなってしまう。痴肉全てをカリで抉りながら、最奥へ。
 
「あ――― アぉ―――――」
 
 そして二つの亀頭両方が結腸を押し広げた。おれのちんぽすべてがオルドのマンコを突き刺したのだ。
 おれからすればほんの一瞬のこと。もう一本のちんぽを突き刺しただけの簡単なこと。それでも、それはオルドにとってはどれだけ長く圧倒的に感じられたのだろう。舌と両脚をぴんと伸ばし、きつくきつくおれを抱きしめる。ちんぽと身体をぴったりと寄せつける。そうしないと自分が無くなりそうだからだろう。
 おれもそれに答える。これが最後だから。オルドと抱きしめあえるのはこれで終わり。二本のちんぽで与えられる魔悦は、オルドの最後の境界を打ち壊してしまった。
 
 
「オ゛ッオ"ォオオオオゴォオォオオオ❤❤❤❤❤」
 
 白濁がちんぽから漏れる。いや、漏れるなんてものではない。ちんぽからザーメンが吹き上がる。オルドの上半身を、顔面を、山吹色の豪奢な毛皮全てを真っ白に染めていく。
 快楽を得るたびに、便器への忌避感が弱まるたびにオルドの精神は書き換えられる。ならばこれほどの白濁を噴出せば。
 
「あ……あぁぁあ。いや、いやだ……ふへっへへぇ、ご主人様❤うぁ…イヤだ、ちがう。ちんぽ、ちんぽが」
 
 絶頂が治まり、荒い息が収まると、変わる。
 目に光がともる。理性と知性の光だ。しかしそれは美しく清らかであったそれとは違う、鈍い光。
 歪。オルドの顔を構成する部品は何も変わっていないはずなのに、違うのだ。瞳も、にたりと裂ける笑顔も力なく垂れる舌も。
 
「い、やだ。いやだイヤだいやだこんなの、…ご、ごしゅじんしゃま。あっ!違う違う違、あ゛っ❤❤❤あ"がぁぁああああ❤❤ちんぽちんぽごしゅじんさまのおちんぽきてるうぅううう❤❤❤」
 
 腰を動かすのを再開すると、媚び媚びなメスの声をあげた。
 否定しようとする。後戻りできない段階まで変質してしまった自分を。
 勇猛果敢であった精神に相応しかった相貌。それを恐怖に歪め、首を振り否定する。自分が変わったと認めようとしない。
 
 だがそれも、おれが腰を動かせば消えてしまう儚いものだ。
 
「イグッ❤❤❤あ~~~~っ❤❤いぐいぐいぐイグの止まんにゃい"いぃいいい❤❤❤❤駄目なのに"いぃいい❤❤❤ごしゅじんしゃまのおちんぽしゅきしゅきしゅきぃ❤❤」
 
 奥に叩き付けたちんぽをぐりぐり押し付けるとまた絶頂した。必死に堪えようとしたはずなのに、ちんぽを拒もうとしていたはずなのに。
 今では顔を緩ませてちんぽをおねだりしている。飴玉も粉末の効力はとっくに切れている。肉体は平常であり脳みそから理性が取り外されたわけでもない。にも関わらずちんぽを歓迎してしまった。オルドを守っていた最後の鎧、本能までもが。すべてがおれに屈服したのだ。
 
「ぎ、ぎぃい"いぃぃぃ❤❤❤ザーメンっ❤❤無駄ザーメン❤ケツマンコごんごんされでメスイキとまんな"いっ❤イぐとのーみしょおがじぐなりゅぅううう❤❤❤」
 
 射精するたびに洗脳が進む。白が流れれば黒い悪意が脳を埋める。境界が決壊してオルドの大事なものが、ザーメンと一緒に流れ出す。ぽっかりと空いてしまった部分にお前は便器だと書きなぐっていく。
 
「ごわれる゛っ❤❤のーみそおがざれでるぅう❤❤❤お"ほぉ❤イグッ❤❤あたま❤ふへへぇ❤❤あたまぐじゃぐじゃぁああがががががぁ❤❤❤❤」
 
 思考を、人格の根底を犯されるのを肯定する。オルドという存在が殺されていくのを歓喜する。
 何故嫌悪していたのか。何故拒んでいたかも曖昧になっているのだろう。二本のちんぽが結腸を真っ直ぐにされると頭が真っ白になるほど気持ちが良い。それも薬のおかげだとオルドは理解している。射精するたびに自分の思考が変質して、どんどんちんぽの快感が増す事も。精神を弄繰り回されるのが気持ちいい事も。
 こんな素晴らしい物、拒否するなんて愚かしい。もっと自分を作り変えて欲しい。ご主人様の肉便器へとして欲しい。そう思うように、変わってしまった。
 
「いっぐぅううううう❤❤❤便器っ❤❤便器野郎になるうぅう❤❤のーみしょおがざれるのしゅんごいいぃい❤❤❤❤いぎぃひっ❤いひひぃぃひぃぃぃ❤❤❤」」
 
 オルドの精神が塗り潰される。誰よりも強く、優しく、愚かだったオルドという絵が改悪されていく。騎士団長であり父親でおれの恋人だった虎。その精神が肉便器へと書き換えられる。
 ちんぽからも犯されるけつまんからも汚液を撒き散らし、毛皮が汚されるごとに精神も汚される。
 オルドはそれに感謝する。心から、おれに。尻尾をおれの尻尾へと絡めあって、必死にキスをねだりながら。おれを愛しいご主人様だと思い込んで、媚びる。
 
「あ"あぁぁぁ~~~~~~❤❤❤ぐるっ❤❤雄臭ザーメンくるぅうううう❤❤❤❤ごしゅじんしゃまに脳みそちんぽにざれでっ❤❤ザーメンきちゃうぅうううううう❤❤❤❤」
 
 洗脳に感謝し、おれをご主人様として受け入れたオルドは快楽だけを貪る。マンコ肉はちんぽへと必死に媚びて、浮かせたままのでかい尻はゆさゆさと揺れてちんぽが突き刺さる角度が変わるように馬鹿な姿を晒す。
 そして、マンコはちんぽをぎちぎちに絞めあげる。無様にちんぽに蹂躙されるだけの雌肉がケダモノとなってちんぽに喰らいつく。
 
「うぉおぉおおおおお❤❤❤ザーメンくるうぅぅううぅう❤❤ごしゅじんさまのデカマラで変態肉便器ちんぽからザーメンぶっ放しちゃうぅぅう❤❤❤❤」
 
 オルドの役立たずとなった筋肉もマンコと連動して隆起する。胸から、腹か、尻までもがびくびくと。絶頂に向かって肉便器となった全身で突き進む。人生の最後に、最高の射精をしようと。
 
「いぐいぐいぐいぐいぐイグ❤❤イッ――――――――」
 
 ちんぽがぶるりと震えた。来る。尿道から役立たずの子種が噴き上がる。
 
「ぐうぅううぅうううううぅうぅうううぅぅうぅううううぅうぅううう❤❤❤❤❤」
 
 そしてザーメンがぶちまけられる。淫液まみれであったオルドを更に真っ白に汚していく。絶叫するオルドの口にも大量に入っていくが、当然のように忌避はしない。恍惚として舌を突き出し、自らのザーメンを少しでも口にしようとしている。
 
「お"ぉほっおぉおおおおぉ❤❤❤❤❤のうみそしゅんごいのぐるうぅうぅうぅう❤❤❤❤❤❤」
 
 ヒトとしての最後の射精は止まらない。最後に残された残滓を吐き出しているかのように雄臭い子種をぶちまけ続ける。
 そして、白く雄臭い子種の代わりにドス黒い悪意がオルドを埋め尽くす。もう止まらない。止められるものはない。オルドは自分が消えることを受け入れてしまったのだから。精神の死よりも快楽を選び、その全てを投げ出した。
 
「ふう"ぅぅっ❤❤ふひゅっ❤❤ザーメンっ❤❤❤ザーメン止ま、んな"いぃいい❤❤」
 
 讃えるかのようにザーメンはオルドを汚す。腰をへこへこと動かしておれのちんぽを感じようとして、ザーメンが少しでも多く撒き散らされるようにと滑稽に。
 その姿はどんな娼夫よりも醜悪で無様だ。でもオルドは今の自分が誇らしいのだろう。脳みそを新たな価値観で支配されるのは、過去のどんな栄誉や幸福よりもずっとオルドを満たしてくれる。
 
「へっ❤あ"へぇ❤❤へっ❤へっひひひぃひ❤❤」
「……オルド、気分はどうだ?」
 
 分かりきっていることを聞く。栓が抜けたようにびゅくびゅくとザーメンを吐き出すちんぽも、痙攣しながらちんぽに絡みつくマンコも、穴という穴から体液を垂れ流す顔面も。
 全てはオルドが終わってしまったことを示している。
 
「はぁーっ❤❤ああぁ❤はは、はははははは❤❤❤へへへえぇぇ❤❤」
 
 射精と荒い息遣いがようやくおさまると、陶酔とした顔で笑い始めた。口角を吊り上げて、その瞳に狂気と淫靡な光のみを宿して。
 理性はある。記憶は失われていない。壊れたのでもなく、歪んだのだ。人格が。根源が。
 この笑顔を見れば、誰もが理解するだろう。高潔で慈愛に満ちたあの微笑みとは違う、狂った笑顔を見れば誰もが思い知らされるだろう。
 
 ――オルディア・グランツは完全なる終わりを迎えたのだと。
 
「へへへへへへ❤❤❤さいっこうでずよぉ❤❤ザーメンおいしぃいい❤❤んうぅん❤❤くっせぇ❤のーみそもザーメンでいっぱいだぁ❤❤❤」
 
 笑い声を響かせながらザーメンを全身で味わい始めた。
 毛皮にかかったザーメンを片手ですくいとって口へと運ぶ。もう片方の手ではザーメンを毛皮へと塗りこめる。時折口をもごもごと動かしているのは、ザーメンを舌で転がしているのだろう。
 しばらくの間そうしてザーメンを堪能していたが、やがて毛皮の上にへばりつくザーメンが消えうせるとおれの方をぎょろりと見つめた。その瞳はもう、前とは違う。おれを見てくれたときのあの優しい光が無い。
 
「ふへぇー❤❤ごしゅじんしゃまぁ❤❤❤とーってもきもちよがったですぅ❤❤のーみしょぐちゃぐちゃになっでぇ❤ザーメンこんなにぃ❤ああぁぁぁ❤❤❤」
 
 さかんに舌で口の周りを舐めとる。マンコもきゅぅきゅぅとまた蠢きだす。射精の幸福感が収まって、寂しくてたまらないのだろう。肉便器として完成したオルドでは、一発ザーメンをぶちまけた程度では満足できるはずもない。
 愛おしいご主人様に、おれにもっとちんぽをおねだりしようと巻きつけた手足をこすりつけてくる。
 
「ごっご主人様ぁ……もっとぉ❤❤もっどオマンコごんごんしてくだしゃいぃい❤❤❤」
 
 媚びるには不向きな体躯で、それでも懸命に甘えてくる。所作も甘ったるい声も、その全てに偽りは無く、おれを求めているのだと分かる。
 ちんぽをはめられているだけでは我慢できない。激しく腰を叩きつけて、便器らしく扱って欲しいのだとおねだりをしている。

「ああ、いいよ。いっぱい可愛がってやるからな」
 
 おれが返すのは微笑み。腰を降ろしたオルドの上にぴったりと抱きつくと、とがった顔を近づける。何も言わなくてもオルドは答える。口周りをぺろぺろと舐めてきたあと、薄っぺらい舌をおれの口内へ。
 
「んっ❤❤んうぅぅ❤❤んん~~~~❤❤❤」
 
 雌の喘ぎ声がおれの口内で暴れ周り、むっちりと張った大胸筋をおれの雄胸に押し付けられる。もう使うことは無いであろうちんぽも、おれの腹へと擦り付けてくる。速くちんぽを動かして欲しい、たっぷりと雄マンコに種付けして欲しい。そんな言葉が聞こえるようだ。
 オルドは躊躇わない。怯えない。我慢もしない。肉便器らしくただおれのちんぽを求めるだけ。もう戻れない。戻る必要も無い。オルドもおれも、これを望んでいるのだから。
 
「ぷ、はぁ…よし、動かすぞ。孕むまで犯してやるからな」
「ひゃいぃ❤❤❤いっぱい種付けしてくだしゃい❤いっしょーごしゅじんしゃまのおちんぽにお仕えします❤❤だかりゃ、ずーっと使ってくださいね❤」
 
 ちんぽの熱で蕩けた声を吐き出して、おれの鼻先へとキスをする。おれももう一度だけ、キスを返す。舌は絡め合わせない。
 胸をくっつけあって、心臓の鼓動を確かめ合って。ぎゅっとお互いの背に手を回して、筋肉だらけのごつい背中を撫で回す。
 
「ごしゅじんしゃまぁ……❤❤❤愛しております❤❤」
 
 おれの腹に押し付けられるかたいそれ。嬉しさでひくひくと痙攣する顔。どちらも隠すように覆いかぶさる。
 腰を動かせば嬌声が響く。何度もご主人様と叫んで、おれを愛していると緩んだ笑みを向けてくれる。
 
「おれも愛してるよ、オルド」
 
 オルドに在るのは愛ではなくもっとおぞましいものだ。
 性欲と獣欲に酔っているだけ。薬によっておれを主人と認識しているだけだ。ちんぽをくれるから、気持ちよくしてくれるから媚びているだけ。ちんぽに依存しているだけ。愛情なんてものではなない。
 おれがオルドに向けているのも、愛なんて美しいものではないのだろう。依存しているだけだ。オルドの優しさに、匂い全てから離れられなくなっただけ。愛を囁きあってもそこに愛は無い。
 でも、それが正しい。おれとオルドの間にはもとから愛情なんて無いのだから。互いが互いに依存して、縛り付ける関係で良い。
 オルドがどれだけ愛してくれていても、おれは信じられないから。
 信じられなければ、何も無いから。
 目に見えない、信じられない愛情なんかよりも、確かにおれとオルドを繋いでくれる淫らな鎖があれば、それで良い。
 
「オルド、オルド……愛してる」
 
 夏の空気で満ちているはずなのに、少しも熱く感じない。性の匂いも、甘ったるく毒々しい匂いも何も嗅ぎ取れない。おれが感じるのはオルドのぬくもりと匂いだけ。
 何かから逃げるように視線を彷徨わせれば、窓の外に星が見える。いつもオルドと見ていた星。
 煌く星に照らされるオルドは前とは何もかもが違う。毛皮は穢されて、笑顔はおれが求めたものとは違う。
 それでもおれは幸せだ。オルドに愛してると、こんなに素直に囁けるんだから。
 
 オルドはおれのせいで何もかも失ってしまったけど、おれをずっと憎むだろうけど。おれはあなたがいないと生きていけない。
 
 だから、お願いです。おれとずっと一緒に――
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