ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ヒスの森ダンジョン

第429話 ヒスの森 その11

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 白雪さんに叱られ、他の面々にも謝罪をし、マヨネーズの魅力について熱く語ったのはチアキさん。
 お酢がないから諦めていた事、そのままチュッチュしても栄養が摂れると言ったところだけは修正しましたけどね。
 ただ、製造するにも衛生管理状態が悪ければ、腹を下して大変なことになるから作ることは諦めていたのだと私も援護射撃をした事で、かなり貴重な調味料だったのだと理解してもらえた。

「それにしても二人が急に踊り出したのは驚きました。あのように踊るのは特定の魔術を行使したいときや、何らかの儀式の時だと聞いておりましたので、何が起きたのかと思いましたよ」
「あれは二人で練習していたの? 途中から息がぴったりだったわ」
「俺も一緒にやりたかったのに……」

 ルイスさんが真剣に考察していますが、だから驚いていたんですね? 儀式って……。
 日本人なら盆踊りとか、キャンプファイヤーとか、マイムマイムとか、何かを中心にして周りを踊りながらグルグルするのは一般的だったからなぁ。
 ベル君は途中から参加したそうにしていたらしいんだけど、私たちが洗脳状態かもしれないから危険だと大人たちに止められていたらしい。
 タニアさんから息が合っていたと言われるけれど、盆踊り同様に、前の人に合わせて同じ動きをするというのは遺伝子に組み込まれているというか、前に倣えの精神を叩きこまれた世代だからというか……。

 とりあえず儀式でもなければ、洗脳されていた訳でもなかったというのは理解して頂けたようでホッとしました。
 その後は全員でマヨネーズを回収し、マヨの美味しさを体験してもらおうという事で、少し早いけど一番近い安全地帯に移動した。

「ソースの硬さは味噌に似ておるかの? 他はさらっとしておるから見た目としてはあまり美味しそうには見えんがなぁ」

 そんなことを言いながらもテーブル設置をしてくれる白雪さんは優しいよね。あれだけチアキさんが興奮していたから、怪しいと思っていても採集するのは止めないんだもの。
 さて、こんな疑われている皆をマヨの虜にするには何が良いだろうね。
 サラダにマヨをかけるだけでもいいとは思うけど、あれは味を知っている私達だから良いのかもしれないし、知らない人たちにはダイレクトすぎるかもしれないもんね。

「チアキさんは何が食べたいですか?」
「迷うな~、ツナマヨのおにぎりとか至高だけど、ツナがないしな。マヨ焼きとかかな」

 そういえばチアキさんは料理が出来ない男子として過ごしたって言ってたね。

「ツナは材料があれば作れますけど、マグロとかカツオに似た魚ってあの海にいるんですか?」
「なっ!? ツナって作れるのか? ちょっと待って、多分あると思う、赤い魚だったらいいんだよな?」

 赤い魚……。赤身のという意味なら良いんだけど、私もスーパーで買った事しかないからそれ以外でも出来るのかは自信がないぞ?
 チアキさんが魚を探している間に、食べやすい物ということでタルタルソースたっぷりのチキン南蛮、子供も大好きポテトサラダ、ボス戦で貰ったからチーズを使ったピーマンの肉詰マヨチーズ焼きの三種を作ることにした。

 ココッコの揚げ焼きはタニアさんも作れるのでお願いし、私はタルタルソース作り。
 バレンさんとダルスさんにはマルネギ玉ねぎと、自家製ピクルスをみじん切りにしてもらう。ベル君はゆで卵とパテトジャガイモを茹でる為にお湯を準備してくれている。

 チアキさんの家には便利家電――じゃない、便利家魔道具が結構沢山あった。米がないからパンを食べるしかないと思い、パンのために脱穀機と製粉機が魔道具で作られていた。
 魔道具だけではなく、ピーラーとか、スライサーとかもね。
 低層階で生クリームが見つかったから、野営地で私が料理を作っている間にハンドミキサー(ブレンダー?)も作ってくれたんだよね。
 料理は出来なくても、料理を作るための便利道具は直ぐ作れる男、素晴らしい勇者です。

「あった! ヴィオ、あったぞ!」

 嬉しそうにチアキさんが持ってきてくれたのは、確かに赤い魚の切り身。ただ、味はマグロに似ているというけれど、激しい水魔法を使ってくるかなり危険な魔魚だとはダルスさんが教えてくれました。
 サクの状態とまでは言えないけど、三枚おろしが必要かと思いきや、ちゃんと切り身になっていたのでほっと一安心。ツナも同時進行で作りますかね。

「チアキさんはポテトサラダなら作れますか?」
「多分大丈夫だぞ」

 成程、完全お任せは出来そうにないって事ですね。ツナは直ぐに出来るものではないので、下準備だけして夕食の時に食べられるようにしましょうとお伝えし、サラダを一緒に作ることにしました。
 カンバーキュウリとマルネギはスライサーで薄切りに、塩もみして放置、パテトの皮むきはベル君が楽しそうにピーラーでやってくれたので、剥けたものから鍋にボチャン。ハムは無いけど、彩が欲しいからジンセン人参イエローコーンとうもろこしも入れよう。
 パテトが茹で上がるまでは置いておいて、チーズ焼きを先に作っちゃおうかな。

「うぇぇ~、ヴィオ、それ使うのか?」
「ベル君、グリーンペッパーは嫌い?」
「ベル坊、まだあれを食べれないのか? 大きくなれないぞ?」

 好き嫌いをしたら大きくなれないっていうのは万国共通なんですね。でもピーマンが嫌いでも大きくなれると思います。

「苦いと思えば食べなくてもいいけど、しっかり焼くし、チーズとマヨで食べやすいと思うよ。一口挑戦してみて」
「う、うぅ、分かった」

 苦い顔をしながらも食べてみると約束してくれるベル君、可愛いかよ。
 まあこの世界のピーマンはそこまで苦くはないんだけどね。きっと小さい時のシシトウ状態のものを食べて辛い思いをしたことがあるのかもだね。
 大きなグリーンペッパーを半分にして、ハンバーグ用に作っていたタネを少し、その上に削ったチーズをたっぷり、更にその上にマヨネーズを塗って、あとは焼くだけ。じっくりゆっくり焼くことで、甘みも増してくる。パプリカがあれば彩も可愛いんだけど、私はピーマンも好きだから問題ない。


 パテトとジンセンが茹ったらお湯を切り、手の空いた男性陣で芋を潰してもらう。力が強い人たちなので、量が少なかったジンセンは気付いた時にはペーストっぽくなってたけど……、まあいいか。
 ココッコの卵もみじん切りにして、サラダとタルタルソースに半分こ。卵が大きいから良いものの、日本サイズだったら二パック分は必要だったかもしれないね。

 あっちで火加減を見て、こっちで作業の確認をして、そっちでチーズの蕩け具合を確認して、こっちに戻って塩を振りかけた魚から出てきた水気を布巾で拭き取る。キッチンペーパーなんてないけれど、布巾で大丈夫。魚臭くなる心配はいらない、だって【クリーン】があるからね。
 水気を拭きとった切り身は大きな鍋に並べ入れ、緑の油袋を二袋分入れていく。黄色の花油でも良かったかもしれないけど、緑はエライアーオリーブ油だし、私の記憶はオリーブオイルを使って作っているものだったので、こちらを使用する。

「油で揚げるのか?」
「いえいえ、油で煮るんですよ」

 興味津々で皆が鍋を覗き込んでくる。リーガニンニクベイリーフローリエブラックペッパー黒胡椒はこのダンジョンの浅い階でも採集してきた素材だ。それらを切り身の隙間に詰め込んで、上から油をたっぷりかけた。

「えぇっ!? ヴィオ様、今入れたのは魔力回復薬の素材ですよね? 料理に使うのですか?」

 ルイスさんが驚いているのは、さっき入れたローリエの事だろう。あれは中級魔力回復薬の素材のひとつになるからね。結構回復薬の素材には食材として使えるものが多い。お父さんが作っていたミックススパイスだって、体力回復薬や、薬の素材になるものがそれなりにある。
 薬の素材として有名すぎて、それを食べようと思う人が少ないだけで、お父さんみたいに植物素材は食べれるかどうかを先に考えない人は理解できないんだと思う。ペルリラ紫蘇だって魔力回復薬のひとつだからね。

 そんな事を説明しながらお鍋を火にかける。ツナはまだまだ時間がかかるけど、皆のお腹が限界っぽいからね、とりあえず昼食にしましょうか。
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