ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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特級ダンジョン ウミノトモ

第471話 ダンジョン踏破と報告

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「さてと、ここで終わりたいところだが、今回の依頼はダンジョンコアの破壊だからな。残念だがやるか」

 ボスのお宝をウハウハで収納し、帰ろうかと思ったところでダンジョンコアの話になった。そういえばそういう話でしたよね。
 だけど、ダンジョンコアっていうのは何処にあるんだろうか。

「出口になっている場所とは違う入口が隠されてるんだよ。これを探すのが結構面倒なんだよね」

 イブさんの言葉に、皆で周辺を見回してみるけど、普段のロングダンジョンだと転移用の扉があるのに、ここは一階層しかないからか、その扉もない。あるのは入ってきた扉だけだ。

「扉はなさそうですよ?」
「本来ならダンジョンが護るべき場所だからな。見えるような場所にはないぞ。よくある洞窟系のボス部屋でも、後ろの壁だったり、床だったり、宝箱をどかした場所だったりと色々だったからな。ここは広いから探すのが大変だぞ」

 確かに、洞窟風のこの部屋は、後ろに扉、両サイドは岩壁があるけれど、正面は空と海が広がっている。サザエが居た場所は砂浜だし、砂の中か、海の中って事もあるのかもしれない。
 皆が其々に確認をしに行く。ドラゴン三人は空と海を確認すると飛んで行ったけど、普通の人だったら無理な場所に作るかな?

 とりあえず右の岩壁から調べようと思い、壁に手をついて探索魔法を使ってみる。そう、あの鉱石を見つける時のやつだ。
 岩に魔力を薄く延ばしていく。隠し扉だというくらいだから、反応はあると思うんだよね。一メートル四方ずつ確認して左側に移動していく。壁をコンコンしていたり、砂浜を掘り返したりしているけれど、見つからないね。
 入口の扉を越えて、左側の岩壁も探索していくけれど、どうやらこの壁に扉は隠れてなさそうだ。

「空は見えているのとは違って行き止まりになりますね」
「ダンジョンのまやかしだな。となれば海中という可能性が高いか……」

 草原エリアの果てと同じで、空は結構すぐに行き止まりだったみたい。きっと海もそんなに広くはないだろうという事で、水中を確認しに行くことに。

「私は行きたいです!」
「俺達も水中は大丈夫だから同行しよう」
「我は遠慮しておく」
「僕も残る」

 水竜人族の二人は水中行動も問題ないという事だったので、チアキさん、私、ダルスさん、ルイスさんの四人で水中に行くことにしたよ。
 私とチアキさんは、【エアウォール】で空気の膜を自分の頭部全体を覆うように装着し、海に潜る。思っていたより水温は低くなく、寒いと思わない。

「それはヴィオが結界鎧を纏っているからだぞ。普通に冷たいからな」

 そういえばそうでした。常備しているから忘れるんですよ。何なら結界鎧のマスクに空気循環を想定すれば行けるんじゃないかと思ったりするけど、ぶっつけ本番でやることではないので、またお風呂で練習しようと思います。

「パッと見は無いな」
「ルイスさん、水の【索敵】で確認できないですか?」
「ああ、確かにそうですね。やってみましょう」

 静かに目を閉じたルイスさんから、魔力の波動を感じる。うん、豪快な【索敵】ですね。

「ああ、あそこですね。あの岩場の下に反応があります」

 ルイスさんが指さすところを見てもただの岩に見えるけれど、皆で近づいてみれば、確かに何か違和感がある。ちょっと岩のゴツゴツ感が違うくらいのものだけどね。

「押してみよう」

 チアキさんが代表して岩を押せば、大して力を入れている風に見えなかったのに岩が消えて暗闇が広がっている。

「当たりだな」
「ボス部屋と同じように異空間なんだな」

 ダルスさんの言葉に頷くしかない。続き部屋かと思いきや、全く違うとはびっくりですよ。
 チアキさんに続いてダルスさん、私、ルイスさんの順で入った。

「わぁ~、海の中だったのに、ここはまた違うんですね」
「ああ、ダンジョンコアの部屋はどこも同じなのかもしれんな。今までに入った事のあるのととても似ていると思うぞ」

 ボス部屋の暗い感じとも違い、クリーム色の室内は明るく見える。丸いドーム状の室内はそんなに広くないけれど、中央に見慣れた、だけど初めて見る神様の像が立っていた。
 神様の手にはキラキラと光る石があり、チアキさん曰くこの石こそがダンジョンコアなのだという。

「これを壊したらダンジョンの崩壊が始まるからな。どれくらいで崩れるかはダンジョンによって違うが、その場で壊してすぐに壊れた時が怖いから、大概外に出てから壊すようにしているぞ」

 なるほど、確かにここで生き埋め状態は困りますね。
 他の神様の時のように説明文が書いていないので分からないけれど、この像はダンジョン様な気がするね。
 像はフードを目深にかぶっており、その表情はよく見えない。身体つきも今までの神様のようにムキムキでも、ボインボインでもなく、ローブのせいで分からない。
 男性なのか、女性なのか、大人なのか、子供なのかも分からない。でも、謎多きダンジョン様らしくて良いと思います。

 像の前に立ち、パンパンと柏手を二回叩く。いや、ここの神様のお祈りの仕方とか知らんけどね。
 何となく日本式で柏手を打ってしまった。

「ダンジョン様、いつも楽しくて美味しいダンジョンをありがとうございます。このダンジョンは川の中央にできてしまった関係で破棄致しますが、とても素敵なダンジョンでした。
 ちょっと気になることもありましたが、ドロップアイテムは最高だったので、同じ感じのダンジョンは大歓迎です。ありがとうございました」

 パンパン

 もう一度柏手を打って頭を下げる。
 見ていた三人の大人たちも、何故か同じように柏手を打ってから、お礼とお願いをしているんだけど、そのお願いの仕方で合ってるか知らんよ? 
 んで、この像がダンジョン様かどうかもわからんよ?

 一礼してからダンジョンコアをダンジョン様(仮)の手から頂いたチアキさん。
 ガッチリ固定されている訳ではなかったようです。
 マジックバッグに入れて、また空気の膜を顔に装着してから部屋を出る。

「あったか?」
「ありました。ダンジョン様っぽい像がコアを持ってたのでお礼を言って来ました」
「だからダンジョン様って誰」

 イブさんだけが納得してないけど、私たちは一路出口へ向かうことに。
 ダンジョンコアを取った後は魔獣が出ないというチアキさんとイブさん情報の通り、波もなく、岩にへばりついていた海苔も無くなっていた。
 採集しながら帰ろうと思っていたのに残念です。

 という事で、ドラ化してくれた三人に其々が乗り(白雪さんはチアキさんと二人乗り)、ピューンと飛んで帰りました。行きは五日かけて来た道も(一日延泊したので実質四日)数時間で帰れるとか、マジで反則だと思います。

「冒険者さんはいないですね」
「吸収されてなければ帰ったんじゃない?」

 さらりと毒を吐くイブさん、まあ二日連続でオークナイトとカモメから救出したと聞いていれば、そんな気持ちになるのも分からなくはないですけどね。
〔土竜の盾〕も、お兄ちゃん達も多分このダンジョンなら、あの高波さえ気を付ければ踏破できると思うんだよね。そう考えると金ランクの白級のお兄ちゃん達のレベルの高さがよく分かるよね。

 最初の砂地に到着したところで人化した三人と一緒にダンジョンを出る。
 見当たらなかったから良いとして、隠れてたらダンジョン崩壊に巻き込まれるのだろうか。中の人にお知らせとか、もの悲しい閉店の曲が流れるサービスとかはあるのだろうか。

「お知らせは無いな。そうだな、入らせないとギルマスが言ってた割に冒険者が居たことを思えば残っていてもおかしくないか……」
「自業自得だとしか言えないけど、面倒だから連絡しとく? 後になるか先になるかだけだし」

 チアキさんは何度かダンジョンコアを破棄するお手伝いをしてきたけれど、スタンピードで潜るようになった初期は知らずに中で壊して、一階に戻る転移陣が動かなくて大変な思いをしたことがあるらしい。中級ダンジョンだったからセーフだったと笑ってたけど、広い上級だと疲れ果ててる後に戻るのは辛いよね。
 そういう事でイブさんも渋々ながらギルマス宛に伝達魔法を送ることにした。

 簡易テーブルを作ってもらい、甘いケーキとお茶を飲みながら待っていれば、緑色の可愛い鳥が飛んできた。鳥はイブさんの手に乗ったところで手紙に変わる。

「二回目の救出をされて戻ったところで金ランクの不在に気付いたギルドが厳重注意したみたいだね。一昨日からは日中にギルド職員がここに立って出入り禁止令を出してたんだってさ。コアの破壊は自分達も見届けたいから、できればギルドに持ってきてほしいんだって」
「まあどこで壊しても一緒だし、どうせ戻ることになるから良いか。ヴィオはどうする? 先に戻ってても良いぞ」

 手紙の内容をイブさんが読み上げたところで、チアキさんから提案された。てっきりついて行かないといけないと思っていたけれど、行かなくていいなら行きたくないかも。

「うん、あの金ランク達面倒そうだったし、ヴィオは僕と戻ろう。勝手巻きの準備しとくからさ、チャーキ達も早く帰っておいでよね」
「あー、イブも同行しないって事な。まあいいか。
 じゃあこっちは白雪と――「私が残りましょう」――じゃあバレン頼むな」

 という事で、私とイブさんは水竜兄弟と一緒に戻ることになりました。
 食材以外のドロップアイテムは全てチアキさんとバレンさんにお渡しし、逆に二人が持っていた食材は受け取ります。

「じゃあ、夕飯で振舞いますから、早く帰ってきてくださいね」
「うむ、楽しみにしておる」

 三人に見送られて一路エルフの里へ。
 ベル君に沢山のお土産話を聞かせてあげないとね。お兄ちゃん達が入った海のダンジョンに同じ敵はいたのかも確認しないとだね。
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